小倉唯|私からみんなへ、今届けたい初めてのクリスマスソング

小倉唯が初の配信シングル「Very Merry Happy Christmas」を12月9日にリリースした。

「Very Merry Happy Christmas」は小倉にとって初のクリスマスソング。大切な人と過ごすクリスマスのワクワク感が、キャッチーなメロディや弾むようなリズムに乗せて歌われている。また新曲配信と同時に、小倉がソロアーティストとして8年間発表してきた全楽曲の配信が各サブスクリプションサービスでスタートした。

音楽ナタリーでは小倉にインタビューを行い、2020年をどのような思いで過ごしてきたのか、そして「Very Merry Happy Christmas」に込めた思いについて話を聞いた。またサブスクリプションサービス解禁を記念して、特集の後半ではこれまでリリースした3枚のアルバムを振り返っている。

取材・文 / 中川麻梨花 撮影 / 塚原孝顕

原点回帰の大きな意味

──1年ぶりに取材させていただくので、まずは今年の小倉さんの活動について話を聞かせてください。去年「Destiny」のインタビューの最後に「ひさしぶりにラブリーな曲を歌って、原点回帰してみるのもいいな」とおっしゃっていましたが、今年の2月に発表された11thシングル曲「I・LOVE・YOU‼」はまさにラブリーなポップチューンでした。小倉さんにとって“王道”とも言える曲をひさびさにシングルで発表してみていかがでしたか?

小倉唯

いろんな楽曲を歌ってきましたが、やはりポップでラブリーな曲が自分の中では一番歌いやすいんだなあと改めて感じました。だけど、ただかわいく歌うんじゃなくて、自分だからこそできる表現を突き詰めたつもり。聴いているうちにどんどん癖になるような歌を目指したので、そういうふうに私の歌が皆さんの中に響いてくれていたらうれしいですね。

──特に近年は“かわいさ”の中でも明るく元気いっぱいの曲があれば艶っぽい曲もあったり、どんどん表現の幅が広がってきている印象があります。特に「ホップ・ステップ・アップル」(2019年2月発売の最新アルバム)で幅広い表現に挑戦したことは、小倉さんのキャリアの中でも大きな経験だったのでは?

大きかったと思います。私自身、ここ数年間で自分の表現の幅が少し広がったのかなと感じていて。長年のアーティスト活動や声優活動で培ってきたものもありますし、年齢を重ねたことでより自分を客観的に見られるようになったことも大きいのかな。そんな中、「I・LOVE・YOU‼」で原点に戻ってラブリーな曲を歌ったのは、自分の中でも大きな意味があったような気がしています。“かわいい楽曲”により自信を持って臨めるようになったんじゃないかな。

──しかも「I・LOVE・YOU‼」はご自身で企画プロデュースから作詞まで行った作品なんですよね。ここ最近の小倉さんを見ていると、「こういうことをやっていきたい!」というアーティストとしての創作意欲がどんどん膨らんできているように思えます。

はい。自分の提案で形にしていったものに対して、いつもファンの皆さんがいい反応をくださるので、自信を持って自分から発信していけるようになりました。

悔しさをバネに今できることを

──その後、6月に12thシングル「ハピネス*センセーション」がリリースされました。「I・LOVE・YOU‼」も「ハピネス*センセーション」もコロナ禍の前に作っていた曲かと思うのですが、結果、2020年のこういった世の中で小倉さんはみんなを明るい気持ちにさせるような曲を発表されていますね。

シングルを制作していた当時は、こんな未来になるなんて思ってもいなくて。特に「ハピネス*センセーション」は「今は先が見えないけど、自分の“好き”やがんばりたいという気持ちを貫いた先にきっと明るい未来が待っているよ」というメッセージを込めた楽曲なんです。今の世の中に通ずるような曲になったのが奇跡のように感じます。自分にとってもとても大切で、思い入れのある曲になりました。この楽曲が少しでも皆さんの支えになってくれていたらうれしいです。

──小倉さん自身も5、6月に開催予定だったツアーが全公演中止になってしまったり、コロナウイルスの影響を受けていたかと思いますが、そんな中でもTwitter公式アカウントを開設したり、1年で3作品をリリースしたり、アクティブに活動されていますね。

コロナ禍で落ち込むというよりは、できたはずのことができなくなってしまって悔しい、という気持ちのほうが大きかったです。だけど、その悔しさをバネにしてせっかくだから今できることをやろうという、そういう方向に気持ちをシフトしていきました。逆に何かしらのスイッチが入ったような気がします。

──ファンの方になかなか会えない状況でも、ブログ、Instagram、Twitter、TikTokと、SNSを積極的に活用されている印象です。

時代はSNSだな、というふうに感じています。同じ内容をTwitter、ブログ、インスタで投稿しても伝わり方が違うので面白いんです。書き方1つで受け取り側の心情も変わると思いますし。今は「これを載せるならインスタかな? Twitterかな?」って、内容によって精査しながら、どういうふうにSNSを使い分けていくかを模索しています。

十人十色のクリスマスソングの中で

──そして2020年の最後に配信シングルという形で新曲「Very Merry Happy Christmas」がリリースされます。小倉さんがクリスマスソングを発表するのは初めてですよね?

そうなんです!

──大切な人と幸せなクリスマスを過ごす、ポップで温かみのある曲になりました。

クリスマスソングって十人十色というか、いろんな曲がありますよね。なので、ジャンルをあらかじめ決めないほうがいいのかなと思って。今回のコンペでは“クリスマスソング”ということだけをお伝えして、ジャンルを問わずに、いろんな楽曲を聴かせていただきました。どちらかと言うと自分にはポップなテイストのクリスマスソングが合うのかなと思っていたんですけど、あえてのバラード曲でも素敵だなあと思ったり。

──いろんなクリスマスソングの中で、この曲になった決め手はなんだったんでしょう?

「Very Merry Happy Christmas」は、すごく明るいわけでも落ち着いているわけでもなく、ちょうど中間地点の絶妙な温度感の曲だと思ったんですよね。こういった曲を作ろうと思ったら、なかなか狙って作れるような曲ではないなと。あと、クリスマスや年明けってワクワクドキドキする時期だと思うんですが、そういった心情を弾むようなリズムでうまく表現している楽曲だなって。クリスマスやお正月に向けて慌ただしく準備しているときとか、楽しい時間に聴いてもらえたら、年末年始への期待感が一層高まるんじゃないかなと思いました。

小倉唯

──コンペの時点ですでに歌詞もついていたんですか?

そうですね。この曲の歌詞には「Very Merry Christmas with lots of love and Happy New Year♪」って、「Christmas」だけではなくて「Happy New Year」というフレーズが入っているんですよ。スタッフさんとの打ち合わせでも、クリスマスだけでなく来年のことを考えながら聴けるのがすごくいいよねという話になって。歌詞も含めて世界観が素敵だなと思い、この曲に決めました。