音楽ナタリー Power Push - 小倉唯
10代最後に高らかに歌う“はにかみ”マニフェスト
光に寄り添うのとも茜に寄り添うのとも違う歌い方
──先ほど小倉さんは「Honey♥Come!!」について「城下町のダンデライオン」の内容にリンクさせつつ、ご自身の思いを届ける曲にもなっている、という言い方をしていました。
そうですね。
──これってひっくり返せますよね。「この曲は小倉唯の宣言でありつつ、アニメのエンディングテーマでもある」とも言える。小倉さんはこの曲を通じて思いを伝えるだけでなく、アニメの紹介もしなければならないし、しかも小倉さんはアニメに櫻田光役として出演もしている。実は小倉さんと「Honey♥Come!!」の関係はかなり複雑なことになっているというか……。
ふふふふふ(笑)。アニメのテーマソングを歌わせていただくときはたいていそうなんですけど、作品の世界や物語を俯瞰するようにしてます。
──それはなぜ?
皆さん、それぞれいろんな目当てでアニメを観ていると思うので。原作のマンガが好きだから観ている人もいるだろうし、好きな声優さんが出ているから観ている人もいるでしょうし、もしかしたら私が出ているから、私の曲が流れるから観てくださる人もいるかもしれないですし。確かに私はアニメに光役で出てはいるんですけど、だからって光の気持ちに寄り添って歌うとアニメ全体のテーマソングではなくなってしまうし、小倉唯の曲でもなくなってしまうと思うんです。あとアニメのキャラクターの中で、「Honey♥Come!!」で歌っていることに一番近いのは主人公の(櫻田)茜ちゃんだとは思うんですけど、私が光役である以上、彼女にべったり寄り添ってしまうのもなんか違いますし。
──確かに。
だから恥ずかしがり屋なんだけど、それでも誰かのためになりたいと願っている茜ちゃんを中心に動いているアニメの世界のことを思いながら、私がこれまでの音楽活動の中で学んできたテクニックを盛り込むのが正解なんじゃないかな、って思ってるんです。アニメ全体を俯瞰しつつ、「こう歌ったら気持ちよく聞こえるんじゃないか」みたいなテクニカルな判断を自分の意思でしていけば、ちゃんとアニメのテーマソングであり、小倉唯のものでもあるっていう曲になるのかな、って。
私、こんなに大変なことしてたっけ!?
──お話を聞くだに「スゲー複雑なことを考えながら歌ってるんだなあ」って感じですね(笑)。
私も今、口にしてみて「私、こんなに大変なことしてたっけ!?」ってビックリしました(笑)。
──あれっ? 次の質問は「その思考術はどこで身に付けたんでしょう?」だったんですけど……。
すみません(笑)。デモと歌詞をいただいた瞬間「茜を中心に俯瞰すればいいのかな」「こういう曲調で、サビでは同じフレーズが続くからこう歌ったら面白いんじゃないかな」という感じで、パパパパって頭に浮かんだことを反射的にやっていました。頭の中では「こうしたい!」「でもそうするためにはああしなきゃ、こうしなきゃ」っていう道筋が必然的に決まっていた感じだったので。今、改めて整理してみてビックリしちゃいました(笑)。
──以前「何かテーマを与えられたほうが、そこから着想を得てクリエイティビティを発揮しやすい」って言ってましたけど、その感覚に近い?(参照:小倉唯「Strawberry JAM」インタビュー)
そうですね。「『城下町のダンデライオン』のエンディングテーマです」「でも小倉唯の宣言でもあります」というテーマをいただいたからやりたいことがすぐに浮かんできた感じです。それは音楽にせよお芝居にせよ、いつもそうで。いざ「好きなことを歌ってください」って言われても、自分で自分のことをテーマで縛るところから始めちゃうと思います。
──ちょっとイヤな聞き方になるんですけど、音楽にせよお芝居にせよ、ぜひとも取り組みたいとはおよそ思えないテーマを振られた経験は?
そこまで私からかけ離れたお話をいただいたことはないですけど、「あれっ!? このテーマはどういうふうにすれば私らしくなるんだろう?」って悩んだことはありますし、結局私らしさを発揮できなくて悔しい思いをしたことは正直何度もあります。で、そういうときってだいたい自分の考え方を途中で変えちゃってるんですよね。
──「考え方を途中で変えちゃってる」?
「あれっ!?」っていう状態ってすごく不安なので、いろんな人に意見を求めてどうにか打ち消そうとするんですけど、そうするとだいたい失敗しちゃってたんです。それでいろんな人の声に耳を傾けつつ、でも自分でも「あれっ!?」ときちんと向き合って、納得できる「これ、いい!」を見つけなきゃいけないんだって気付いて。それからは自分の第一印象を大事にするようにしてるんです。「Honey♥Come!!」の場合なら、その第一印象が「これ、いい!」だったから、歌い方がパパパパって見つかったんだろうなっていう気がしますし。
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- ニューシングル「Honey♥Come!!」 / 2015年8月12日発売 / KING RECORDS
- 期間生産限定盤 [CD+DVD] 1944円 / KICM-91607
- 通常盤 [CD] 1296円 / KICM-1608
期間生産限定盤CD収録曲
- Honey♥Come!!
[作詞:大森祥子 / 作曲:俊龍 / 編曲:大久保薫] - ガーリッシュエイジ
[作詞:こだまさおり / 作曲:神谷礼 / 編曲:河合英嗣] - Honey♥Come!!(off vocal ver.)
- ガーリッシュエイジ(off vocal ver.)
期間生産限定盤DVD収録内容
- 「Honey♥Come!!」MUSIC VIDEO
- 「Honey♥Come!!」MAKING
通常盤CD収録曲
- Honey♥Come!!
- ガーリッシュエイジ
- Honey♥Come!!(TV size)
- Honey♥Come!!(off vocal ver.)
- ガーリッシュエイジ(off vocal ver.)
小倉唯(オグラユイ)
1995年群馬県生まれの声優、アーティスト。2009年に14歳で声優デビューし、2011年「神様のメモ帳」のアリス役、「ロウきゅーぶ!」の袴田ひなた役で大きな注目を集め、以来、毎シーズン放映のアニメの主要キャラを演じるように。また2010年に石原夏織と結成したユニット・ゆいかおりでメジャーデビューを果たし、2011年には「ロウきゅーぶ!」の出演声優ユニット・RO-KYU-BU!で歌った楽曲の数々がスマッシュヒットを記録するなど、声優業と並行して積極的に音楽活動も展開している。2012年にはシングル「Raise」でソロデビュー。以降アニメ「変態王子と笑わない猫。」のエンディングテーマ「Baby Sweet Berry Love」や、「最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。」のエンディングテーマ「Charming Do!」など、話題のアニメのテーマソングを発表している。2015年3月にはソロデビュー3年目にして初のフルアルバム「Strawberry JAM」をリリースし、7月には神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで初のワンマンライブを開催。そして8月には自身も出演するアニメ「城下町のダンデライオン」のエンディングテーマ「Honey♥Come!!」を発表する。