ナタリー PowerPush - NoGoD

異端のV系バンドが描く“四季彩”

夏の曲でタオル回したら負けだと思ったんですよ

Shinno(六弦団員)

──本作中、唯一の新曲である「千夜を越えて花束を」ですが、これって2年前に団長さんのソロライブで披露されたことがあったそうですね。

団長 やりましたね。曲ができた段階で、「今じゃなくない?」っていう理由で流されたんで、このままじゃ一生お披露目できないと思ったんですよ。だから慌てて1人でやったっていう。NoGoDとしてではなく濱守康太郎個人として。これをNoGoDとしてやるときがくるかどうかはいろんな大人次第です、と。

──じゃ今回、無事音源になったのは相当うれしかったんじゃないですか。

団長 ほんとによかったですよ! これはもともとアコギで作った曲で、俺のイメージではもうちょっとポップなサウンドになる予定だったんです。ただ、「あの日の空は極彩で」がよりポップなサウンドだったので、それと並ぶのを考えた上でアレンジのイメージをちょっと離したんですよね。それもまた名アレンジャーの意見なんですけど。

kyrie あとは歌詞がアレンジに大きく影響した部分もあったんですよ。本来NoGoDは曲先なんですけど、この曲はデモの段階で歌詞が付いてたんです。だからそのイメージが植え付けられてしまったというか。

団長 「植え付けられて」なんて言うなよ。俺がバイキンみたいな言い方じゃないか! 聞き捨てならないね!

kyrie (無視しつつ)別れをテーマにした内容なので、ちょっと晩夏なイメージがあったんです。でも歌詞の中では花火が鳴ってもいるので、秋ほど優しい風は吹いてない。さらに「夜空に咲いた無数の花束」っていうフレーズからはスケール感の大きい景色も見えてくる。っていうところからちょっとソリッドなアレンジの方向になったんですよね。

──ちょっと落としたテンポ感も含め、かなり切なげな雰囲気ですよね。

団長 夏の曲でタオル回したら負けだと思ったんですよ。それはもうね、埼玉じゃ神奈川には絶対的にかなわないんで。

kyrie 湘南と岩槻じゃずいぶん違うからね。

団長 そうそう。岩槻は盆地だしね。そこに住んでる俺がタオル回してもなっていう。でも、その代わり埼玉には川が多いんで河川敷での花火大会が盛んなんですよ。だからこの曲は元荒川の花火大会なんです。埼玉の夏が存分に詰まってる曲なんです。

──そういった歌詞がメロディと一緒に降りてきたんですか?

団長 そうですそうです。寝ようとしてたときに「千夜を越えて~」のところが降ってきたんで、仕方なく起き出して家族に怒られないレベルの音量でデモを録ったんです。

kyrie ベッドから起き上がる間によく忘れなかったね。

団長 いやかなり危なかった。ちょっと歩いてる間にAメロとBメロが変わっちゃったもん。サビはなんとか覚えてたけど。俺、ほんとに物忘れ激しいんですよ。強風とか吹くと忘れちゃう。寝たら十中八九忘れてますからね。

言っても俺は埼玉県民ですし

──歌詞に関しては団長さんが書くことが多いんですか?

kyrie ほぼ団長ですね。たまに僕が書くこともありますけど、そういうときも団長にチェックはしてもらってます。

団長 kyrieさんはね、インテリぶって難しい漢字をたくさん使ってくるんですよ。自分の語彙力をこれみよがしにひけらかしてくる。だからそれを減らしてもらうようにしてますね。読めないから。

kyrie いやいや、難しい言葉を使う場合はそういうテーマの曲なんですけどね(笑)。

華凛(五弦団員)

──でもNoGoDの歌詞には独特の美しさがありますよね。今回の作品タイトル「四季彩」という言葉もそうですけど、すごく日本語にこだわられているなあと。

団長 英語は極端に少ないですよね。言っても俺は埼玉県民ですし、日本人である以上は日本語で伝えなきゃ意味ないかなと。日本語は世界的に見ても特殊な言葉だと思うし、いろんなニュアンスを表現できるのがすごく素敵じゃないですか。それを大事にしたいんです。

kyrie とかなんとか言いながら、「千夜を越えて花束を」の“越えて”を最初は“超えて”って書いてましたからね。

団長 あのね、誤字脱字がすごいんですよ、俺。自分で何回も読み直して校正しても、叩けばどんどんホコリが出てくるっていう。

kyrie 俺とディレクターでチェックしてみると、「これ違くね?」っていうのがジャンジャン出てきて。

団長 要はバンドって1人で作ってるものじゃないんですよ。皆さんと一緒に作り上げるっていう感覚なんですよね。だから間違ってるところはぜひ見つけてほしい。むしろほかのメンバーたちを試してる部分もあります。おまえら見つけてみろ、と。まあでも“超えて”に関しては、今回のレコーディングでkyrieに言われるまで本気で知らなかったです。しょうがないっすね、もう(笑)。

ずっとバンドとしての軸はブレてない

──今回収録される4曲はすべてが別れをテーマにしたラブソングになっていますが、それはどうしてだったんですか?

団長 いろんな季節の中でいろんな情景の別れを描くっていうのがテーマとしてあったんですよ。全部を男性目線にするっていう部分も統一しました。自分の場合、顔面弱者なんで恋愛が終わりやすいんですよね。あんまりモテた経験もないので。

kyrie 終わりやすいのは中身の問題でしょ。恋愛が始まったら顔は関係ないから。

団長 いやいや、そうでもないよ。「結局……」ってとこあるよ。中身が大事ってみんな言うけど、そこにも越えられない壁はあるんだよ。噛めば噛むほど味が出るのかなって思ったらパッサパサだったってことがあるからね。

──そういう経験が歌詞には込められてると。

団長 昔は恋愛の歌詞のほうがカッコいいと思ってましたしね。「櫻」は18歳のときに書いたんですけど、中二病真っ盛りだったんで、愛とか涙とか刹那とかそういうのにドキドキしちゃってて。不徳の致す限りなんで今聴くとかなり恥ずかしいんですけど、こういう形で昔の曲をやれるのはすごくラッキーだとは思いますね。

──ラッキーというのは?

団長 バンドによってはメッセージがまるっと変わっちゃって、過去の曲を封印しなきゃいけないこともあると思うんですよ。でもNoGoDの場合、最近は恋愛の曲が少なくなってきてはいるけど人間のことを描くという部分では変わっていないし、音楽性も如実に変化したわけではないから、こういう作品を出せるっていう。そういう意味では、昔からずっとバンドとしての軸はブレてないんだなって思うんですよね。

kyrie 恥ずかしい恥ずかしいと言いながら、団長はまんざらでもないですしね。

団長 女性大好きですからね。いつだって恋愛はしていたいです! 恋愛をあきらめたわけではないです!

ミニアルバム「四季彩」 / 2014年3月5日発売 / キングレコード
[visions] [CD+DVD] / 2810円 / KIZC-245~6
[sounds] [CD2枚組] / 2810円 / KICS-3027~8
[visions] CD収録曲
  1. 千夜を越えて花束を
  2. あの日の空は極彩で
  3. 彩白
[visions] DVD収録内容
2013年12月2日【神髄】ツアー・ファイナル@赤坂BLITZ公演よりライブ映像
  1. FRONTIER
  2. 慰みの空
  3. Carnival
  4. Ring-a Ring-o
Music Video
[sounds] DISC 1収録曲
  1. 千夜を越えて花束を
  2. あの日の空は極彩で
  3. 彩白
  4. FRONTIER(live version)
  5. 慰みの空(live version)
  6. Carnival(live version)
  7. Ring-a Ring-o(live version)
[sounds] DISC 2収録曲
  1. 櫻(acoustic version)
  2. 千夜を越えて花束を(acoustic version)
  3. あの日の空は極彩で(acoustic version)
  4. 彩白(acoustic version)
NoGoD(のーごっど)
NoGoD

2005年に「新興宗教樂團NoGoD」として結成。2007年より団長(ボーカル)、Kyrie(七弦団員)、Shinno(六弦団員)、華凛(五弦団員)、K(太鼓団員)の現メンバー構成となり、2010年6月にシングル「カクセイ」でメジャーデビューを果たす。2010年8月には通算3枚目のフルアルバムとなるメジャー第1弾アルバム「欠片」、2011年8月には4thアルバム「現実」を発表。2013年2月6日に5thアルバム「V(ファイヴ)」をリリース。ヴィジュアル系の枠に収まらない個性的なスタイルと確かな演奏力で人気を集めている。2014年3月、四季をテーマにした楽曲を集めたコンセプトミニアルバム「四季彩」をリリース。