シンガーソングライターの西岡秀記がニューシングル「Soul of Turf」を7月1日にリリースした。
表題曲「Soul of Turf」は西岡が好きな競馬をモチーフに、音楽活動を続ける中で出会った憧れの騎手・藤田伸二に向けて書いた胸が熱くなるようなロックナンバー。カップリングには社会や権力への反抗をテーマにした「真夏の悪夢」が収められている。会社経営者という地位や肩書を捨てて、音楽の道を進み続ける西岡が聴き手に伝えたいこととはなんなのか? 本人に話を聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 清水純一
憧れのジョッキーへ書いた「Soul of Turf」
──今回のシングル「Soul of Turf」はニューミュージックを彷彿とさせる楽曲ですね。
シンガーソングライターとして自分の個性を出したかったんですよ。俺が好きなのは浜田省吾さんや尾崎豊さん。子供の頃、浜省のライブビデオを観てたら尾崎のこと話してて。それで気になって聴いたら、生き様がものすごく音楽に刻み込まれていて、すぐにファンになった。今世の中で流行ってるようなキラキラした音楽ももちろんいいんだけど、俺が表現したいのはそういう音楽じゃない。今どきの感じじゃないけど、生き様が音楽に滲み出てるカッコよさ。そういう男臭いのがやりたかった。
──西岡さんが歌詞を通じて伝えたいことはなんですか?
世の中、やりたいことがあるのに私情を持ち込んで言い訳ばかりして、結局動かない人が多いと思うんですよ。夢を叶えるために人生駆け抜けないなんてもったいない。熱くまっすぐ生きられる人だらけになる世の中になってほしいという思いを叫びたくて、聴いた人に勇気を受け取ってもらうために、この「Soul of Turf」を書いたんです。
──「Soul of Turf」の「Turf」は芝生ですよね。これはなんのモチーフですか?
前回のインタビューのときにも話したんですけど、俺、競馬が大好きなんですよ。賭け事としてではなく、競馬そのものが好き。子供の頃はジョッキーになりたかった。俺が子供の頃に活躍してた藤田伸二という騎手がいて、その方は史上2番目の若さで日本ダービーを制覇した競馬会のレジェンドなんです。一方的に憧れていた存在なんですが、去年、思いもよらぬきっかけでその藤田さんと知り合うことができて。「アニキって呼べ!」と言われてるから、「アニキ」と呼んでます(笑)。
──その藤田さんがきっかけで「Soul of Turf」という楽曲が生まれたんですか?
「Soul of Turf」は、去年の秋に初めて藤田のアニキに出会って、その男気あふれるハートの熱さに感化されて書き上げた曲なんです。アニキは酔っ払うと口がメチャクチャ悪くなるけど、後輩思いの気さくな人で、俺の音楽活動を本気で応援してくれてるんです。「今後、何かできることが出てくるかもしれないから」という理由でTUBEの前田亘輝さんを紹介してくれたり、アニキがDJをやってるラジオ番組に出演させてくれたり。そもそもアニキを紹介してくれた友達も俺の音楽を気に入ってくれている人で、音楽をやってなかったらアニキと知り合うこともなかったわけなんですよね。
──西岡さんはシンガーソングライターになるという夢を叶えた結果、憧れの人と出会えたわけですよね。
そう。しかも業界にいたから出会えたとかではないんです。音楽って純粋に人と人とをつないでくれるから本当に素晴らしいと改めて感じました。音楽は奏でる側も聴く側も純粋になれるものだと思うんです。もう音楽がなきゃ俺は生きていけないですね。
金以外のもののために音楽の道へ
──現実では西岡さんのように夢を叶えるために駆け抜けられる人はごく少数だと思います。
俺も34歳で「ソングライターになる」と言ってプロデビューを目指し始めた頃はさんざん言われましたよ。「今からじゃ遅い」とか「そんなんではメシを食っていけない」とか「収入はどうするの?」とか。
──でも西岡さんはご自身の夢を叶えました。
そうです。年齢なんて関係ないし、やると決めたら人間なんでもできる。俺が歌で伝えたいことをまず自分が体現しないといけないと思ったのと、周りに何を言われようとやると決めたら結果が出るまでやり通す性格なのもあって、幸いなことに1年で夢を叶えられました。ただ、デビューしたらしたで「生活できてるの?」「収入はあるの?」とか、金の話をしてくる人たちが多くて。もともと俺は社長だったから、ソングライターになってから「お金があるから音楽やれてるんでしょ?」みたいに言われるのもすごく嫌ですね。
──ただ西岡さんが事業経営である程度の成功をしてきたのは事実ですよね?
そういう過去はあるけど、赤字続きで事業に失敗したうえに、投資詐欺にも遭い、同じ時期に離婚も重なって、金も人も離れていってしまったあとにシンガーソングライターとして生きていこうと決めたんです。金があるからシンガーソングライターをやってるわけじゃなくて、金以外のもののために音楽の道に進んだんです。なのに、なかなかその意図が伝わらない。もともと社長をしていたという肩書が災いして、どうしてもお金にまつわる話ばかりされてしまうんです。それはすごくストレスですね。
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ソングライターとして後世に名を残したい