ナタリー PowerPush - NIKIIE

「Equal」で引き合う光と影

自らの中から放たれるまぶしいほどの光を詰め込んだ「hachimitsu e.p.」と、自らの中に渦巻く暗い影を落とし込んだ「CHROMATOGRAPHY」という対照的な2枚のミニアルバムを昨年リリースしたNIKIIE。それらを作り上げる過程で彼女は、自身の中には光と影の両方が共存、混在していることを明確に感じ取り、それを大きなテーマとして次なる作品へと昇華させた——。それが2ndフルアルバム「Equal」だ。

これまで以上にリアルな言葉たちと、自由度の高いサウンド、そして表現力を増したボーカリゼーション。アーティストとしての大きな成長も感じさせる本作に込めた思いを訊いた。

取材・文 / もりひでゆき

呼吸するみたいに曲を作れるようになった

昨年11月に行われた「NIKIIE LIVE TOUR 2012 "CHROMATOGRAPHY"」ツアーファイナルの模様。

──まずは昨年の秋に行われた「NIKIIE LIVE TOUR 2012“CHROMATOGRAPHY”」の感想から聞かせてもらえますか。

ものすごく楽しかったです。初めてのスタンディングライブは、自分から挑戦しておきながらも最初は無謀だったかなってちょっと不安だったんですよ。でも始まってみれば、お客さんとの距離が近い分、自分が伝えたいことやバンドの呼吸感みたいなものがダイレクトに伝わっているのがよくわかって。お客さんたちからもらうものもたくさんありましたし、会場を回るごとに自信が付いてくるツアーだったなって思いますね。

──ツアーが終わった瞬間、何か見えました?

ここからまたスタートできるなっていう気持ちが浮かんできましたね。やっと自分にとっての基礎ができたというか。だからこそ、ここからもっともっと自由に、いろんな表現をしていきたいなって思えて。ものすごく清々しい気持ちでした。14本のツアーでしたけど、終わった瞬間に「ここからまた14本やりたい!」みたいな感じで(笑)。

──ツアーでは音源化前の新曲も披露されていましたが、昨年は制作もコンスタントに続けていたようですね。

ずっと並行してやっていました。それが自分にとってはすごく良かったんですよ。ツアー期間中にレコーディングすることもあったんですけど、ライブで受け取る生の声がすごく大きく作用していたような気がしていて。

──ライブでの反応が制作にもいい形でフィードバックしていくと。

ライブで受け取ったものから、こういう音にしてみたいなっていう気持ちが生まれてきますし、いろんな刺激を作品ごとに吐き出せていたなってすごく思うんですよね。で、そうやってできたものをいち早くライブでやることに関しても、わりとナチュラルに「こんなのもできたんだよ。どう?」っていう感じで織り交ぜられるようにもなって。

──言葉やメロディは常にどんどんあふれてくる感じでした?

はい。ツアー中、リハーサルでバンドメンバーがサウンドチェックしてる脇でギターを弾きながら曲を書いたりもしてたんですよ。そういう部分では音楽がより日常になってきた感じがありましたね。音楽がより密接になってきた。今までは曲作りのために時間を作ってたこともあったんですけど、今はもういつでも、どんな場所でも作れるというか。わりと呼吸するみたいな感じですね。もちろん、もう自分からは何も出てこないんじゃないかっていう恐怖は常にあるんですよ。でも、例えば誰かと会話してて自分のイントネーションがおかしくなったときに、「あ、これ音符にしたら面白いかも」とか、そういうふうに考えられるように変化してきたところもあって(笑)。

──日常の中にも音楽にまつわるヒントは転がっているわけですね。

そうそう。もちろん曲にするときはガッツリ向き合いますけど、そういうヒントを拾う場所が変わってきたところはあると思いますね。

“光=影”、“光+影=私”

──そういった制作活動を経て、昨年は「hachimitsu e.p.」と「CHROMATOGRAPHY」というミニアルバムがリリースされました。それぞれNIKIIEさんのサニーサイドとダークサイドを切り取って表現した2作でしたが、それが今回の2ndフルアルバム「Equal」へのいい流れを作ってくれた気がしていて。NIKIIEさんのアーティスト像がここでより明確になった印象があるんですよね。

そうですね、うん。1stアルバム「*(NOTES)」では、自分がどういう人間なのか知ってもらいたくて、もがきや葛藤の中で答えを出していく自分の姿勢を描いたんですけど、それを持ってツアーに出たときに、自分自身を自分自身が受け止めきれていなかったことに気付いたんです。すごく明るくて、胸を張って答えを歌ってる自分がいる一方で、ものすごく暗くて光が見出せない自分もいる。その光と影の部分が分離している気がしたんですよね。なので、その後ミニアルバムをリリースすることになったときに、そことしっかり向き合うことに決めたんです。

──結果、そこで見えた答えが……。

光も影も、どっちも自分なんだっていうこと。光を歌っているつもりでも、その中にはネガティブな感情がにじみ出ているものもあるし、逆に影を歌っていてもそこには光を見出そうとしているパワーがあったりもする。お互いに引き合うものなんだなって改めて思ったんです。

──うん。そういう思いへ至ったからこそ、今回のアルバムにはNIKIIEさんのリアルが前作以上に鮮烈に詰まっている気がします。

そういう思いは元々、自分の中にあったものではあるけど、2枚のミニアルバムを通してそれをナチュラルに受け止められるようになったんですよね。だから今回のアルバムは光と影を混在させた“Equal(=)”をテーマに作ろうと思ったんです。

──なるほど。光と影をつなぐ“=”なんですね。

はい。“光=影”、あとは“光+影=私”っていう2つの意味を込めて。

ニューアルバム「Equal」 / 2013年1月30日発売 日本コロムビア
「Equal」初回限定盤[CD+DVD] 3360円 / COZP-747~748
「Equal」通常盤[CD] 2940円 / COCP-37789
CD収録曲
  1. Introduction
  2. Morning in the dark
  3. Darlin'
  4. Un Deux Trois!
  5. カナリア
  6. LIGHT
  7. Mother's cry
  8. Duty Friend
  9. mannequin
  10. Hero:
  11. 涙星
  12. Everytime
  13. From me to you
初回限定盤DVD収録内容
  1. カナリア(PV)
  2. 涙星(PV)
  3. Duty Friend(PV)
  4. Everytime(PV)
  5. Morning in the dark(PV)
LIVE INFORMATION
NIKIIE ACOUSTIC TOUR 2013 "Equal"
  • 2013年3月9日(土)北海道 札幌Revolver
    OPEN 17:00 / START 17:30
  • 2013年3月10日(日)宮城県 仙台KOFFEE CO.
    OPEN 17:00 / START 17:30
  • 2013年3月19日(火)福岡県 福岡ROOMS
    OPEN 18:30 / START 19:00
NIKIIE LIVE TOUR 2013 "Equal"
  • 2013年3月29日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
    OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2013年3月30日(土)愛知県 名古屋Electric Lady Land
    OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2013年4月7日(日)東京都 代官山UNIT
    OPEN 16:30 / START 17:00
NIKIIE(にきー)

1987年茨城県生まれの女性シンガーソングライター。4歳からピアノを弾き、16歳の夏から作詞作曲を始める。高校時代のバンド活動を経て、17歳よりピアノ弾き語りでソロ活動を開始。高校卒業後に上京し、本格的にライブ活動を始める。精力的なライブ活動が現在のレーベルの目に留まり、2010年12月にシングル「春夏秋冬」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。3rdシングル「紫陽花」は、東日本大震災の発生を受けフリーダウンロードと無料CD配布の形でリリースされた。2011年7月、1stフルアルバム「*(NOTES)」を発表し、これに伴う初の全国ツアーを大成功に収める。2012年には「hachimitsu e.p.」と「CHROMATOGRAPHY」の2枚のミニアルバムを発表し、収録曲はアニメ「LUPIN the Third -峰不二子という女-」エンディングテーマやドラマ「科捜研の女」主題歌などに起用され話題を集めた。2013年1月には2ndフルアルバム「Equal」をリリース。