ナタリー PowerPush - NIKIIE
大型新人シンガーソングライター デビューシングル「春夏秋冬」
現在放送中のドラマ「モリのアサガオ」のオープニングテーマ「幻想フォルム」が大きな話題を呼んでいるシンガーソングライター、NIKIIE(ニキー)。
彼女の生み出す曲たちは、みずみずしい透明感をたたえながらもきれいごとだけではない棘を持っている。彼女からあふれる歌声は、心地良く耳に響くがさらりと聴き流せるほど軽くはない。そこには揺らぐことのない彼女自身のリアルな人間性が満ちみちているように思う。
ナタリー初登場となる今回は、現在に至るまでの生い立ちと、デビューを飾るシングル「春夏秋冬」について話を訊いた。ここから始まる輝かしいストーリーのプロローグとも言える第一声。言葉の端々に散らばる芯の強さと熱い思いを感じてほしい。
取材・文/もりひでゆき
表に出せない感情をピアノにぶつけていた
──NIKIIEさんの音楽的ルーツは4歳で始めたピアノ?
そうですね。3歳のときに初めてピアノという存在を知って、両親にお願いして4歳から始めました。発表会用にクラシックを弾くことはあったけど、ほとんどはポップス寄りの曲を弾いてましたね。学校では合唱曲を頼まれて弾いたりとかもしていました。
──ピアノを弾くのは楽しかったですか。
楽しいっていうのもあったんですけど、小学校の頃からはあまり表には出せない内面を発散するために、感情をピアノにぶつけていたんです。そういうところからピアノが特別な存在になっていったんですよね。
──表に出せない感情っていうのは?
私って、いつも明るくて、お姉ちゃん的な存在みたいに言われることが多かったんですよ。でも、だんだん自分はそうじゃないっていうことに気づき始めたというか。実はいい子ちゃんを演じてたんだなって。で、中学時代が一番混沌としてたんですけど、だんだん友達ともうまくいかなくなって、引きこもり気味になっちゃったんですよね。
──それをピアノが救ってくれたと。曲作りをするようになったのも、そういうことがきっかけなんですか?
曲作りを始めたのは16歳のときだったんですけど、きっかけは友達がギターで自分の曲を歌っているのを見たことでした。そういうことをできる人が身近にいるっていうことに衝撃を受けて。私にはピアノがあったので、じゃあ私にもできるんじゃないか、心の中に抱えてるモヤモヤしたものを表現できるんじゃないかなって思ったんです。
──なるほど。ピアノという存在と同様に、曲作りもまた本当の自分を発散する大切なものになっていったわけですね。
はい。本当の自分を出したいっていう気持ちは、最初から強かったですね。曲を通してそれが出せることで、すごくラクになっていった部分もありましたし。
──そのスタンスは現在も変わらず? お話していると、今は混沌とした様子は微塵も感じられないですよね。
そうですね(笑)。でも例えば、友達と「じゃーね」って別れた瞬間にふっと素に戻る瞬間ってあるじゃないですか。上げてたテンションが落ちて暗黒が現われる(笑)。
──あははは。暗黒って(笑)。まあでも友達とは言え、完璧に本当の自分として接しているかっていうと微妙ですもんね。偽りではないにせよ。
そうそうそう。だから、そういう部分のバランスは、今も音楽で取れてるような気はしますね。
──歌うことに関しても小さいころから好きだったんですか?
好きでしたね。それを強く自覚したのは小学校の3年生ぐらい。SPEEDの「STEADY」をラジオで聴いて、こんな職業があるんだなって改めて思ったというか。歳が近かっただけに、すごく実感がわいたんです。で、私も歌手になりたいって思うようになって、友達とか両親にずっと言ってました。ヘタでしたけど(笑)。声がコンプレックスだったんですよ。すごくハスキーで、ガラガラ声だったから。張ってしゃべらないと声が出なかったんです。
──え、今とは全然違いますよね。
そう、全然違うんですよ。たぶん18歳ぐらいのときに変声期があったと思うんですけど。そこで変わったんですよね。今の声は昔に比べると好きですね。
人間ぽくて、ウソがない感じのアーティストが好き
──その後、高校卒業を経て茨城県から上京してきたそうですね。
はい。上京してからベン・フォールズのライブDVDを観て、衝撃を受けたんですよ。ピアノ1本でここまでやれるんだなって。で、私も努力すればそこに近付けるんじゃないかなって気持ちが芽生えて、そこからものすごく練習するようになったんです。自分の未熟さと向き合いながら(笑)。例えば、ピアノでリフを弾きながら歌うのがなかなか難しかったので、それをずっと練習してみたりとか、メトロノームを聴きながら歩いてみたりとか。
──メトロノームを聴きながらっていうのは、テンポ感をカラダに覚えこませるため?
そうです。ライブしてると、気持ちによってすごくテンポが上がっちゃうことがあったんで。あとは裏(拍)を感じたほうがいいよって言われたことがあったので、それを知るためにクリックの間で歩くようにしてたんです。その頃はバンドのライブを観に行っても、みんながノッてる隙間でリズムを取ったりもしてましたね(笑)。
──あははは。1人だけ、裏でノッてるんだ(笑)。
そうそう。でも、そういうことをやり続けていると、突然わかるようになる瞬間があるんですよね。なるほど、と。それが面白くて。
──今、ベン・フォールズの名前が出ましたけど、他にはキャロル・キングやヴァネッサ・カールトン、P!NK、ミシェル・ブランチなどがお好きだそうですね。
洋楽中心ですね。中学生のときに、自分が言葉にできないことを代弁してくれるものが洋楽だったんです。日本語だと直接的すぎて、気恥かしい感じがあったから。今思うと、洋楽には邦楽にはない抜け感みたいなものがあって、それが好きだったんだろうなと。当時は感覚的に聴いていたんですけどね。
──好きなアーティストに何か傾向ってあったりします?
人間ぽくて、ウソがない感じのアーティストが多いですね。ブリトニー・スピアーズもそうだし(笑)。そうじゃない人は、パッと聴いてかっこいいって思っても自分の中で長続きしないっていうか。そこまで聴き込まずに終わっちゃうことが多いですね。
──その判断基準は、やっぱり声によるところが大きい?
そうですね。声が一番かもしれないですね。私の場合、キレイすぎたり、技術で歌われたりすると逆に響かなかったりして、たまにインディーズのバンドのライブなんかを観に行くと、荒削りだけど人間くさかったりする人たちがいて、すごくいい刺激をもらうことも多いですしね。生命力がわいてくるのを感じます(笑)。
──ご自身の歌に関しても、やっぱりそこを一番大事にしたいですか?
そうですね。気づいたらそうやって歌ってると思う。頭で考えるのではなく。私の歌からもそういう人間味のある生身のものを感じてもらえたらうれしいですね。
──あとNIKIIEさんの歌は、ものすごく言葉が伝わってくるなっていう印象があるんですけど、そこも大事にしてます?
それは意識してますね。日本語って特殊だなって思うんですけど、響き方ひとつで全然とらえ方も変わってくると思うんですよ。なので発声の仕方っていうのは、すごく気をつけます。
──となると、歌詞を書く段階でも言葉選びはかなり気を使うんじゃないですか。
そうですね。言葉ってすごく繊細なものなので、注意して選ぶようにはしてますね。思春期の頃に言葉で傷つくことが多かったんです。言葉は言い回しひとつでナイフにもなるし、、逆に優しく包み込むこともできると思う。あとメッセージに関しては、相手に投げかける前に、果たして自分はそれができてるのかって問いかけてしまうタイプなんですよ。なので、キレイごとだけじゃない表現をするようにいつも考えてますね。
NIKIIE(にきー)
1987年茨城県生まれの女性シンガーソングライター。4歳からピアノを始め、16歳の夏から作詞作曲を始める。高校でのバンド活動を経て、17歳よりピアノ弾き語りでソロ活動を本格的に開始し、上京。精力的なライブ活動が現在のレーベルの目に留まり、2010年12月にシングル「春夏秋冬」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。