ナタリー PowerPush - ニホンジン
仙台発!現在最注目ユニットの横顔を追う
チーム作りというよりも街作りの話
──FC琉球の新垣さんって実際にどんな方でした?
佐々木 まだ何かが具体的に動き出しているわけではない。その準備段階で奮闘されている方だったので……。
佐久間 メッチャ大変そうだな!って。
佐々木 まずそう思ったんですけど、お話を続けていくうちにすごい熱意のある方であることもわかって。取材をしているときから、その熱意を音と言葉にしたいなとは思っていました。
佐久間 単に女子チームを作ることだけを考えている人ではないんですよね。女子チームが誕生したことで沖縄がどう変わるのかっていうビジョンをすごく具体的に持ってるんですよ。だからチーム作りというよりも街作りの話を聞いた感じがしました。
今井 「選手を集めよう」「お金を集めよう」っていう話よりもチームの外側の話をたくさんしてくださって。だから歌詞の中に街の風景がたくさん出てくるんです。
視点をズラして共感を呼ぶ
──「あの時 この島でなでしこ達の風切る姿」「家族みたいな愛情がこの島にはある」って歌ってますもんね。ただこの曲の詞が面白いのが、新垣さん視点じゃないですよね?
佐々木 ああ、そうですね。
──1コーラス目のAメロにいきなり「チームを立ち上げる“という”」「途方も無い“ような”夢を掲げて」って伝聞が2つ入っているわけですから。
佐々木 そこは詞と曲を書くときから狙ってました。取材をしているときから「新垣さんの曲ではなくて、新垣さんのいるFC琉球の応援歌を作ろう」って思ってましたから。新垣さんが曲の中心にはいるんだけど、もっと広くいろんな人たちが歌える曲にしたかったんです。
佐久間 ペンションをホメるわけじゃないんですけど(笑)、そこがこの詞の面白いところだなとは思いました。これまでオレたちが作ってきた“職業ソング”と地続きなんだけど、ちょっと違う表現ができたなって。
佐々木 厳密な意味では職業を応援してないですからね(笑)。でも、女子チームができて街が盛り上がってっていう、新垣さんの思い描く将来像を応援しているという意味ではやっぱり“職業ソング”なんですよね。
佐久間 “職業ソング”ってその人が言っていたことをそのまんま歌詞にしちゃいけないんですよ。その職業の人しか感情移入できなくなっちゃうから。話を聞いた感動を再現しつつ、しかも多くの人に共感してもらえるかっていうところを考えなきゃいけなくて。そのためには視点をズラすことって意外と大事なんです。取材相手であり曲の主人公であるその人には見えていないんだけど、取材している第三者である僕たちは知っている風景を歌ってみると多くの人に聴いてもらえたりするので。例えば「料理人」っていう曲の主人公は僕がバイトしていた居酒屋の料理長なんですけど、その歌詞では厨房にいる料理長には見えない客席の様子も歌ってるんです。そうするとより曲を聴く人の間口が広くなる。みんな居酒屋の店長をやったことはないけど、居酒屋のお客さんであったことはあるわけだから。
──そして今回はサッカー選手やサッカーチームのマネージャーからちょっと視点をズラして応援歌にしてみた、と。
佐々木 はい。みんなサッカー選手だったことはないだろうけど、地元のスポーツチームを応援したことはあるだろうから。
ニホンジン+イセイジン=ニホンジン
──一方アレンジなんですけど、Aメロ、Bメロは明るくてヌケのいいギターロックなんだけど、サビになったら一転。ドラムパターンがマーチングドラムになってブラスが入る、けっこう大胆な展開になっています。なぜこういう構成に?
佐々木 これは僕らの活動の根幹の話でもあるんですけど、ニホンジンって僕ら3人というよりも、エンジニアも含めたチームっていう感じなんです。だからアレンジは基本的にそのエンジニアの2人……イセイジンっていうんですけど、彼らの担当なんです。
──ただ、そのイセイジンの上げてきたアレンジを常に唯々諾々と飲んでいるわけではないんですよね?
佐々木 そうですね。原型というか、ラフな展開は伝えてますね。サビはみんなで歌えるようにマーチにしてほしいみたいなことは伝えるし、上がってきたものに対して「こうじゃないんだよな」っていう話をさせてもらうこともあります。
佐久間 ただこの3人は、イセイジンの2人のアレンジをかなり信頼してはいますね。
佐々木 逆に「歌詞がこういう感じだったから、こういうアレンジにしてみたよ」っていうアイデアをくれることもたくさんありますから。
佐久間 だからやっぱりチームなんですよね。なんなら5人組で活動しているような気分なんです。今ペンションが言った通り、アレンジも完全にお任せではないですし。上がってきたものを5人で聴いて「こここうしてみようか」って話し合えば絶対にいいものを作ってくれるっていう信頼があるからお願いしているって感じなんです。
今井 僕らの曲の渡し方もまちまちですしね。僕はバックの楽器までけっこうしっかり打ち込んだデモを渡すんだけど……。
佐々木 僕はピアノのバッキングとメロディを録音した音源と歌詞とコードを渡すくらいですからね。自分で考えられるアレンジのアイデアの幅ってけっこう限界がある気がするので。
佐久間 でもリュックサックのデモも、ペンションのデモも、オレのデモも、ちゃんとニホンジンの音にしてくれるんですよね。
佐々木 うん。今回もすごくいい曲に仕上がったと思ってます。
次のページ » キミハツキャンペーンとは?
大塚製薬「オロナミンC」ブランドが2014年2月にスタートしたキャンペーン。オロナミンCのキャッチコピー「元気ハツラツ!」になぞらえた「未来をハツラツにできるか。」をテーマにイマドキの働く若者を応援する。公式サイトでは動画、写真、ロングインタビューを通じて、現代のさまざまな職業事情や、ワーキングスタイルをレポートし、また働く先輩からの提言、ライフハック術なども紹介する。6月からはこのキャンペーンの一環として、宮城・仙台を拠点に活動する音楽ユニット、ニホンジンとコラボレーション。ニホンジンの3人が働く若者を直接取材し、その言葉をもとに制作した楽曲の数々を無料配信するサービスを行っている。
収録曲
- 知事
- DIVE!
- 男子たるもの恋すべし
ニホンジン
東北大学在学中にエムサイズ佐久間(Vo)、リュックサック今井(G)、ペンション佐々木(B)が結成した宮城・仙台在住の3人組。さまざまな職業の“想い”を歌にする「職業ソングプロジェクト」を立ち上げ、「知事」「お笑い芸人」「教師」「新聞記者」「タクシー運転手」「美容師」など多数の楽曲を発表中。これらの楽曲を収録したCDは仙台市内のみで手売りするという販売形態をとりながら、その販売枚数は2014年6月現在、累計8000枚を突破。2014年7月、宮城・日立システムズホール仙台で初のホールワンマンライブ「547人限定 夏のニホンジン」を成功裏に収め、2カ月後の9月には宮城・電力ホールで2度目のホールワンマンを実施するなど、仙台で大きな人気を誇るバンドとなっている。また学生ながら嵐やSexyZoneに楽曲を提供し、YouTubeには毎日【今日のニホンジン】という動画をアップするなど多彩な才能も発揮する。