ナタリー PowerPush - ニホンジン

仙台発!現在最注目ユニットの横顔を追う

ライブハウスに出たらプロダクションから連絡が

──ここまでのお話を総合すると3人ともバンドマンとしての実質的なデビューは大学入学後。しかもそのきっかけは脱退したドラマーに集められたから。正直、熱心に音楽活動をしてます!っていうタイプではなさそうですよね。

佐久間 そうなりますね。

ペンション佐々木

──でも最初に触れた通り、今となっては仙台の音楽シーンを語る上でまず名前の挙がる人たちになっている。結成後ってどんな活動を?

佐々木 最初はコピーバンドでしたね。その辞めちゃったドラマーに最初に声をかけられたのが僕だったので、当時は2人の意見が中心。2人ともメロコアが好きだったので、ずっとHAWAIIAN 6をコピーしてました。で、2010年頃から、オリジナルを作り始めてライブハウスに出始めたら今のプロダクションに声をかけられたって感じですね。ちょっと端折っちゃってますけど。

──逆に端折ったということは実はプロダクションに声をかけられるまで特に苦労話やトピックはなかった? たくさんプロダクションやレーベルに売り込みをかけたとか。

佐々木 なかったですね。「音楽でメシを食いたいな」っていう気持ちだけは共有してたんですけど、あくまで「食えたらいいね」っていう感じ。その頃「いや、オレそういうつもりはないから」ってドラマーが抜けちゃったんですけど、それでもぼんやりと「プロになれたらなあ」と思っていただけといえばそれだけですから。

今井 ちょうど「インディーバンドらしいがんばり方をしてみようか」って腰を上げたばっかりの頃だったんですよ。「ライブハウスにたくさん出よう」「mixiとかSNSのコミュニティを作ってみよう」って話をしてみたりとか、WORDでフライヤーを作って配ってみたりとか(笑)。そういうことを泥臭くやろうとしていた時期にプロダクションから連絡があったんですよね。

スカウトの理由はメロディ

──当時やっていたのもメロコアですか?

ニホンジン

佐々木 メロコアの要素を残しつつも、だいぶJ-POP寄りにはなってましたね。ギター2本とベースとドラムっていうベーシックな編成なんだけど、メロディや歌詞はキャッチーっていう。

──なぜメロコアから転向を?

佐々木 (今井と佐久間を指さし)もともとこの2人がメロコアの大ファンではなかったので(笑)。

佐久間 もちろん「メロコアっていいな」って思いながらやってたけどね。

今井 でも作る曲のテンポがだんだん落ちていったのは事実なんですよね(笑)。

──そのメロコアとJ-POPのハイブリッドはなんでプロダクションの目に留まったんだと思います?

佐久間 それ、実際に聞いてみたんですよ(笑)。「なんで声かけたんスか?」って。そしたら「曲がいい」って言ってくれまして。

──当時のメインソングライターは?

佐々木 今は曲によってはオレも書いてますけど、当時はエムサイズ(佐久間)中心でしたね。で、リュックサック(今井)は……。

今井 年に1曲だけ書く。年中行事ですから(笑)。

──じゃあ佐久間さんに伺いたいんですけど、プロダクションも評価していたメロディメイクのセンスの源泉って?

佐久間 どこにあるんだろう……。もともと“ええ曲”系、キャッチーなものがすごく好きだからっていうのがあるのかもしれないですね。どういうメロディを書いたら聴いている人が「おおっそうくるか!」ってなりながらも「でもキレイだよね」って納得してくれるかってことは当時から考えてましたから。

何かインパクトのある歌詞の書き方はないか?

ニホンジン

──プロダクション所属直後ってどんな活動を?

佐々木 まず曲を作ることでした。丸々1年間くらい制作期間だったんじゃないかなあ。

今井 40~50曲くらい作ってたよね。

佐々木 うん。プロデューサーのOKが出るまでとにかく作れ!っていう感じで(笑)。

今井 当時はまだエムサイズ(佐久間)だけが曲を書いてたんですけど、そのメロディとコードに楽器を乗せてデモ音源にしてプロダクションに送るっていうことを繰り返してました。……正直しんどかった(笑)。

佐久間 でも作るたびになんとなく正解がわかってくるというか、正解をつかむための感覚はわかってきたんですよ。ちょっとずつよくなってるなって思えてましたし。

──そして1年間の制作期間ののちには?

今井 ライブですね。とにかくライブハウスの対バンイベントに出てました。2012年の10月1日に制作期間終了のお知らせとともに「10月5日からライブに出てください」って言われて「はあ」って生返事をして(笑)。で、10~12月のうちに15本くらい……。

佐久間 修行ライブを続けてました。

──皆さん、何がスゴいって、その修行ライブ時代ってたった1年半前の話なんですよね。なのにまだ、まったくもって今のニホンジンになれそうな兆しが見えていない(笑)。

佐々木 実際ライブのお客さん2人だったこともありましたしね(笑)。

佐久間 無料ライブだったのにね(笑)。

──となると、この1年半の間に大きな飛躍がありましたよね?

佐々木 今回、大塚製薬さんの「キミハツ」で曲を書かせていただくきっかけにもなった「職業ソングプロジェクト」と、もう1つの「受験生応援ソングプロジェクト」を立ち上げたのが一番の要因なんだと思います。去年の3~4月くらいだっけ?

今井 「やろう!」ってなったのは一昨年の12月かな。僕らのオリジナル曲ってよくも悪くもストレートというか、歌詞にせよメロディにせよ、みんながあっと驚く、すごく独特な世界観を持っているっていうものではないんですよね。わりと等身大というか。でも何かインパクトのある歌詞の書き方ってないか?ってなって。「ほかの人の話をそのまま歌詞にするってスタイルって新しいんじゃないか」って話になったんです。

オロナミンC “キミハツ”キャンペーン

「オロナミンC」“キミハツ”キャンペーン

大塚製薬「オロナミンC」ブランドが2014年2月にスタートしたキャンペーン。オロナミンCのキャッチコピー「元気ハツラツ!」になぞらえた「未来をハツラツにできるか。」をテーマにイマドキの働く若者を応援する。公式サイトでは動画、写真、ロングインタビューを通じて、現代のさまざまな職業事情や、ワーキングスタイルをレポートし、また働く先輩からの提言、ライフハック術なども紹介する。6月からはこのキャンペーンの一環として、宮城・仙台を拠点に活動する音楽ユニット、ニホンジンとコラボレーション。ニホンジンの3人が働く若者を直接取材し、その言葉をもとに制作した楽曲の数々を無料配信するサービスを行っている。

ニホンジン

ニホンジン

東北大学在学中にエムサイズ佐久間(Vo)、リュックサック今井(G)、ペンション佐々木(B)が結成した宮城・仙台在住の3人組。さまざまな職業の“想い”を歌にする「職業ソングプロジェクト」を立ち上げ、「知事」「お笑い芸人」「教師」「新聞記者」「タクシー運転手」「美容師」など多数の楽曲を発表中。これらの楽曲を収録したCDは仙台市内のみで手売りするという販売形態をとりながら、その販売枚数は2014年6月現在、累計8000枚を突破。2014年7月、宮城・日立システムズホール仙台で初のホールワンマンライブ「547人限定 夏のニホンジン」を成功裏に収め、2カ月後の9月には宮城・電力ホールで2度目のホールワンマンを実施するなど、仙台で大きな人気を誇るバンドとなっている。また学生ながら嵐やSexyZoneに楽曲を提供し、YouTubeには毎日【今日のニホンジン】という動画をアップするなど多彩な才能も発揮する。