ナタリー PowerPush - ニコナタ(音楽) 小林幸子
“ラスボス”が教えるネットと世界の面白がり方
「ラスボス幸子、いいね! いいね!」
──「あの動画の何が面白かったのか」っていう疑問の答えはけっこうシンプルな気がします。その動画中のコメントや動画に付けられたタグにありましたけど、まさに「ラスボス」。ニコ動界隈の子たちにしてみたら、小林さんの歌唱力と存在感にビックリしたのと同時に圧倒されたんだろうな、って。
そうだとうれしいですよね。去年の10月にニコ生に出演させてもらった少し前から「ラスボス」って言われてるらしいって話をウチのスタッフから聞いて。「ラスボスって知ってます?」って。で「知らない」「なんで私がラストのボスなの?」って聞いたら、今おっしゃっていただいたようなことを説明してくれたんですよ。それで「いいじゃん! ラスボス小林幸子」「ラスボス幸子、いいね! いいね!」ってなっちゃったんです。周りは「怒んないんですか?」っていう感じだったんだけど、そんなことじゃ怒んないですよ。面白いんだから(笑)。
──しかも映像のクオリティがハンパないじゃないですか。三味線や琴や尺八の奏者は登場するし、野外ロケやスタジオシューティングもあるし、最後には衣装というかセットというか……。
セットじゃありません! 衣装ですっ!(笑)
──すみません(笑)。その小林さんの代名詞の1つでもある豪華衣装まで登場して。正直な話、小林幸子という人が出てきてマイク1本であの歌を歌う映像を作れば、それでインパクトは十分。話題になったと思うんですよ。
なのに、あんなのになっちゃったんですよね(笑)。なんか、ああなっちゃった。
やるとなったら真剣に面白がる
──小林さんがニコニコであのクオリティの映像を見せてくれた、っていういい意味で過剰な感じ、ゴージャスな感じも「ぼくとわたしとニコニコ動画」がウケた理由の1つなんだと思います。だってすごく面白いから。
でも撮ってるときは本当に大変だった(笑)。ロケの日が真夏日みたいな日で。滝の前の岩に立っているシーンがありますけど、あれも合成じゃないんですよ。着物を着てあそこまで歩いて行って。そうするとリュックを背負って山登りをしている人と普通にすれ違うんですよね。で、みんな「あれっ!? 小林幸子?」「なんで着物!?」って顔をしてるんですよ。あれは恥ずかしかった(笑)。でも、紅白の衣装とかも全部そうなんですけど、面白がってるだけだもんね。面白いからやっちゃう。お金もかかるけどね(笑)。
──あはははは(笑)。
私の場合、衣装だけでなく11トントラックやクレーンなんかも買わなくちゃいけないから(笑)。でもね、やるとなったらいい加減じゃなく、真剣に面白がる。真剣に面白がらないと相手は絶対に観てくれませんから。確かにお金のかかることかもしれないけど、そっちのほうがうれしいんですよね。私と一緒になって喜んでくださる人の顔を見られることほどうれしいことってないですから。
下品じゃないけど下世話で最強の見世物
──あっ、今日の公演を観ていて、その「喜んでくださる」にも通じる小林さんの口ぶりがすごく気になったんです。曲紹介のMCの最後は必ず「お付き合いいただけるとうれしいです」「聴いていただけるとうれしいです」っていう言い方なんですよね。「楽しんでいってください」とは言わない。小林さんが楽しませる側には絶対に立ってなかったんです。
あらっ、そんなところをチェックされてました?(笑) 本人は何も考えないでしゃべってたんだけど。ただ、確かに「楽しんでください」っていうのは違うんですよ。上からでもなければ下からでもない。皆さんと一緒なんです。いかりや長介さんから「さっちゃん、いっぺんアフリカに行ったほうがいいよ」ってずーっと言われていて。いかりやさんが亡くなってからになっちゃったんですけど、このあいだ行ってみたんです、アフリカに。それでライオンやヌーの群れとかを観てきたんですけど、改めて動物に教えてもらいましたもんね。私がライオンを観てるときって、ライオンも私のほうを観てるんですよ。それは水の中でもそうで。私、ダイビングをやるんですけど、私が魚を観てると、魚もこっちを観てる。そのとき気付いたんですよね。あっ! 私と動物、私と魚、どっちも今ここにいるだけ。それだけの話なんだって。それはお客さんも同じ。私が上でもなければお客さんが上でもなくて、みんな今この会場にいる人なんです。
──「スター小林幸子」と「そのお客さん」ではないんだ、と。
だって私たちなんてステージに立ったら、その瞬間から見世物になるだけなんですよ。「感動させる」なんて存在じゃない。「見ていただく」存在なんです。見世物っていうとちょっとヘンな意味に聞こえちゃうかもしれないけど、けっして下品ではない。私、下品は嫌いだけど下世話は大好きなので、その瞬間は最強に下世話な見世物になるんです(笑)。
──いいですね、「下品じゃないけど下世話」って(笑)。
いいでしょ? 下世話なものほど面白いものなんてないですから。だから最強の下世話になるんです。花火みたいなものですよ。上がって消えるからいいんです。あれ、一生ずーっと上がってたら誰も見ませんよ(笑)。パッと消えちゃう。でもその打ち上がった瞬間はすごく面白い。そんな感じかな、ニコ動も衣装も。観ていただいている瞬間、お客さんも私も一緒に楽しめたら面白いな、って。そのための見世物になりたいんです。
- ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE ~オープニングアクト:ダイオウグソクムシ~
- ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE ~オープニングアクト:ダイオウグソクムシ~
収録曲
- 茨の木(プレミアバージョン)
- 道(花いちもんめ)
- お母さんへ
- 幸せ
and more
収録曲
- 茨の木
- おもいで酒
- とまり木
- ふたたびの
- もしかして
- ひと晩泊めてね
- 夫婦しぐれ
- 雪椿
- 約束(ロングバージョン)
- 越後情話
- イチマディン~永遠に・・・
- やんちゃ酒(セリフ入り)
- Ribbon
- 大江戸喧嘩花
- 恋桜
- ウソツキ鴎(ボーナストラック)
収録曲
- 蛍前線
- おかあさんへ
- 蛍前線(オリジナル・カラオケ)
- おかあさんへ(オリジナル・カラオケ)
小林幸子(こばやしさちこ)
1953年生まれの女性ボーカリスト。1963年、9歳で作曲家古賀政男に師事し、1964年シングル「ウソツキ鴎」でデビュー。同曲が20万枚の大ヒットを記録する。1979年1月リリースの「おもいで酒」が200万枚を超えるセールスを記録し、同年末「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。以来「もしかして」「雪椿」「越後情話」などヒット曲の数々を引っさげ、現在までに同番組に33回出演し、1980年代末頃からはステージ演出にも注力。NHKホールのステージをフル活用した舞台装置と衣装が年末の風物詩のひとつと目されるようになる。他方、コメディやバラエティ番組、テレビドラマなどにも出演。また映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル」に主題歌を提供するほか声優として登場するなど、その多岐にわたる活動を通じて幅広い年齢層の人気を獲得する。さらに2012年、ニコニコ生放送「小林幸子降臨!『茨の木』夢は捨てずに生放送」「ニコニコ大忘年会2012 in nicofarre」に登場。2013年には歌ってみた動画「ぼくとわたしとニコニコ動画を夏感満載で歌ってみた」を投稿し、イベント「ニコニコ町会議 in 名古屋」「ニコニコ年越し!小林幸子カウントダウンLIVE ~オープニングアクト:ダイオウグソクムシ~」に出演するなど、ニコニコ動画を積極的に活用。ネットユーザーの多大な人気を集めている。