小林幸子×中川翔子「風といっしょに」対談|「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」公開から21年、歌い継がれる名曲

小林幸子と中川翔子のコラボシングル「風といっしょに」が7月10日にリリースされる。表題曲は、1998年に公開されたポケモン映画第1作目「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」でも主題歌だった小林の名曲が、亀田誠治のプロデュースで新たに生まれ変わったものだ。「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」を全編3DCGで蘇らせた7月12日公開の新作映画「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」では、この楽曲が主題歌として流される。多くの子どもたちにとって、再びこの歌が“原体験”として刷り込まれていくことになるだろう。

2015年にしょこたん♥さっちゃん名義でリリースしたシングル「無限∞ブランノワール」以来、約4年ぶり2作目のコラボとなる小林と中川。小林はポケモンファンの中で“神曲中の神曲”として愛され続ける特別な楽曲にどのような思いを抱いているのか? また、オリジナルシンガーである小林とのタッグで歌うことになった“ポケモンガチ勢”の中川は、いかにしてそのプレッシャーを乗り越え、優雅で力強いボーカルトラックを残すことができたのか? 音楽ナタリーでは2人の対談をセッティングし、思いの丈を語り合ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 星野耕作

“ポケモンファースト世代”なんです

──お二人で「風といっしょに」を歌うことになった経緯から聞かせてください。

小林 今、ポケモンを語ると言ったら中川翔子でしょう、ということでね。しょこたんとは以前もコラボさせていただいたことがありますし、ひさしぶりにご一緒できてうれしかったですよ。

中川 本当に今も信じられなくて! これまでの人生でうれしかったり落ち込んだりしたときに、この曲を聴いていたんです。

左から中川翔子、小林幸子。

小林 しょこたんはずっとその話をしてくれてね。

中川 何かと別格であり、特別な曲と映画なので。幸子様と「無限∞ブランノワール」という楽曲でコラボさせていただいたときもすごくうれしくて、一生分の幸せを蓄えたと思っていたら、さらに先にこんな夢があるとは……映画の公開初日まで信じられないままなんだろうなと思っています。まだ信じられていない(笑)。

──同じようにこの曲を大切に思っているファンの方も多いと思います。そんな特別な曲を、小林さんが再び歌うのはともかく、ほかに歌うことを許されるのは中川さんくらいではないかと。

小林 そう思う。これがまったく違う歌い手さんだったり、アニソン歌手の方だったりしたら全然違うと思いますよ。

中川 いやいやいや……なんて言ったらいいか、言葉が見つからない(笑)。私は最初のゲームが発売されてテレビアニメが始まって、というのをリアルタイムで見てきた“ポケモンファースト世代”なんです。21年前、子供の頃に「ミュウツーの逆襲」を観に行ったこの世代が、今や自分の子供を連れて映画に行くような年代になってきた。そこでまさかこんなことになるなんて、子供の頃の自分に教えてあげたいですね。

21年経っても古くならない

──小林さんにとっても、21年前の楽曲を幼少期に聴いていた人が歌手として一緒に歌うという、なかなか得がたい経験になりましたね。

小林幸子

小林 そうですね。21年前に主題歌のお話をいただいたとき、正直言ってポケモンには詳しくなかったんです。でも、いろんな形で挑戦することが好きだったから歌わせていただいたんですね。それが21年の間にどんどん曲そのものの存在感が大きくなっていって、私の知らないところでもいろんな人たちを励ましていった。しかも古くならないんです、何年経っても。私のコンサートでは、明らかに演歌のファンではなさそうな子たちが、この曲を歌うと急にペンライトを振り始めたりするんですよ。

中川 えーっ、すごい!

小林 この間しょこたんと一緒にイベントで歌ったときもね、大の大人が号泣してるんです。時代を超えて感動がつながってるんだな、歌や映画の力ってすごいなと思いました。いきなり号泣ですよ?

「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」より。©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©2019 ピカチュウプロジェクト

「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」より。©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©2019 ピカチュウプロジェクト

中川 客席で一緒に歌いながら泣いているんです。それを見て私も泣いちゃって。泣いたら歌えないってわかってるのに、あれはもう耐えられなかった(笑)。

小林 プロデューサーの亀田さんも、小さかったお子さんを連れて「ミュウツーの逆襲」を観に行ったとおっしゃっていましたね。

中川 そうなんです。亀田さんはお忙しい方だし、当時すでにもう大人だったから、ポケモンにはそんなに触れてこなかったんじゃないかなと勝手に思っていたら、大間違いで。「息子を連れて行った記憶が蘇ってきて、アレンジに父性を加えたよ」とおっしゃっていました。

悩んでいたときの、亀田さんの言葉

──オリジナルとの違いだったり、「ここを聴いてほしい」というポイントなどはありますか。

小林 一番の違いは、もちろんしょこたんの声が入っているところ。今回の私は、中川翔子さんという人を母親のように包み込む役割だと思うんですよ。ポイントはそこかな。

中川 アニメソングって、絶対に歌う意味がないといけないと思うんです。しかも思い入れの強い曲なので、どうやって歌うか最初はめちゃくちゃ悩みました。でも、亀田さんが「考えすぎなくても、ポケモンと一緒に歩いてきた時間の中にたくさんのものがちゃんと宿っているはず。そう思って歌ってね」と言ってくださって。最終的には素直に歌った感じですね。オリジナルとの違いで言えば、終盤の「ラーラーラーラー♪」のところで幸子様を追いかけるように歌っています。そこに「ポケモンキッズ2019」(この曲のために一般公募で選ばれた6~10歳の小学生7名)のみんなの声も入ってくるので、もはや3世代ですね。

──「ポケモンキッズ」のみんなとはもうお会いになりました?

「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」より。©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©2019 ピカチュウプロジェクト

「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」より。©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©2019 ピカチュウプロジェクト

小林 まだですね。今度「ポケんち」(テレビ東京系ポケモン情報バラエティ番組「ポケモンの家あつまる?」)で会うんだよね?

中川 「ポケんち」に幸子様が降臨なさることも大事件ですよ! 番組が始まった当初からの大きな野望でもあり、ちょっと無謀だなとも思っていたのが、今回満を持して実現します。

──その回は完全に保存版ですね。

中川 永久保存版です。不思議なんですけど、「ポケんち」に来る子供たちやゲストの方って、「何年生のときにポケモンに出会って、最初に選んだポケモンはゼニガメで」とか、ポケモンとの出会いを絶対に覚えているんです。世の中にいろんな娯楽があふれてる中でそれを覚えているのって、すごいことですよね。