ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

ライブを通して完成した新名盤 “人間”を歌った4thアルバム「HUMANIA」

「HUMANIA」は「人格のサラダボウル」

──前作「PASSENGER」は自分たちを突き詰めていったという感じでしたが、「HUMANIA」はリスナーから受けたエネルギーを元に、外に向けて作ったという印象を受けました。

光村 そういう部分はあります。俺の中で「PASSENGER」は独り言なんですよ。1曲目の「ロデオ」が荒野の音から始まって、ラストの「Passenger」も荒野の音で終わる流れにして孤独を表現したんです。でも「HUMANIA」は人との会話なんです。家族のことを歌った「Heim」から始まって、最後は人間だから鳴らせる音をモチーフにした「手をたたけ」で締めてる。人間が作る社会をアルバムにパッケージしたいという気持ちがあったから。だから「PASSENGER」と「HUMANIA」はそれぞれ質が違いますね。

──その変化は音にも表れていて、今回のアルバムは「PASSENGER」を上回る、NICO史上最もバラエティに富んだ内容になっていると感じました。

光村 今までの発展形だと自分たちでは思ってるんですが、より振り切った、彩り豊かな作品になりましたね。でもNICOっぽくない曲はどれひとつないと思ってます。ただ試聴会の様子を見てる限りだと良かったのかどうかわからなくて……。ぶっちゃけ手応えがない! 今すぐ一人ひとりに感想を訊いて回りたいくらい。

──(笑)。収録曲のセレクト基準はどんなものだったんですか?

光村 「HUMANIA」っていうタイトルとテーマが決まっていたので、人間の側面がたくさん入ったほうが面白いだろうってことは考えましたね。例えばニューヨークっていろんな人種の人が住んでいるから「人種のサラダボウル」と言われますけど、「HUMANIA」は「人格のサラダボウル」を目指したというか。できるだけ曲調が被らないように、似たジャンルの曲は入れないようにして。この曲では怒りを、この曲では愛を、この曲は皮肉をといった感じで異なる感情を当てはめていって。最終的にいろんな人格を音楽で120%表現できるようにしました。

「今のフルくんの生き様を出すんだ!」

──いろんな人格を音で表現しなくてはいけない分、演奏する上でこれまでにない挑戦があったと思うのですが?

坂倉 ええ。俺は、楽曲の雰囲気を出すために「Heim」でフットレスのベースを弾いたり、「バイシクル」ではアコースティックベースを使ってみたり、機材をいろいろ変えましたね。あと曲のジャンルが多岐にわたってたんで、いろんなアーティストの曲を聴いてものすごく勉強して。具体的にこの曲はこれを参考にしたっていうのはないんですけど、"なんちゃって感"みたいな部分もあって(笑)。そのおかげで自分のプレイスタイルが変わった実感があります。

光村 そういえばフルくん(古村の愛称)はギターソロで苦労してたね。

古村大介(G)

古村 全曲にギターソロがあるんで、大変でしたよ。全部同じような感覚で弾いてたら、曲に合わないし。得意なタイプの曲もあれば、当然苦手なのもあって。丸1日考えても、どう弾けばいいか結論が出なくてダメなときもあったし。だけど、アルバムのテーマが「HUMANIA」なので、自分の感情にこだわりぬいて。ちょっとミストーンが入ってる曲もあるんだけど、自分が一番伝えたい感情が出てるテイクを選んでいきました。

──最も表現に苦心した曲は?

古村 9曲目の「demon (is there?)」ですね。

光村 僕が自分の人生を表現してほしい、「今のフルくんの生き様を出すんだ!」みたいな注文をして。自分の山あり谷ありの人生をギターで表現するまでかなり時間がかかってましたね。

古村 生き様かあ、って泣きそうになりながら悩んで(笑)。で、トイレ行ったりごはん食べたりして、気分転換を挟んで何度か繰り返していくうちに、曲と波長が合う音が出せる瞬間がでてくるんですよね。考えすぎちゃうとダメなんだけど、自然と「あ、今いけるぞ」っていうときもあって。最終的に自分でも満足いく音が録れたと思います。どんな生き様かは、実際の音を聴いてもらえばわかるかな(笑)。

──対馬さんはどうですか?

対馬 うーん、一番挑戦したなと思うのは「恋をしよう」。あそこまでスイートな曲調のドラムって難しいんですよ。打楽器なのでどうしても強くなりがちだし、合うように一生懸命気を配って。今自分ができる全てを音にしたつもりではあるんですけど、叩いていく中でもっともっとうまくなりたいって思いましたね。

光村 今めちゃくちゃ対馬くんを鍛えてるんですよ。スティックの持ち方から全部俺が後ろから見て。スタッフはそこに時間を使ってほしくないと思うんですけど、勝手に鍛え上げてます。今年のキーマンは対馬くんだと思ってるんで。

対馬 もうすぐ今年終わっちゃいますけどね(笑)。2012年に向けて特訓中ってことで。

ニューアルバム「HUMANIA」 / 2011年12月7日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 3200円(税込) / KSCL-1884/5 / Amazon.co.jp
  • 通常盤 [CD] 2800円(税込) / KSCL-1886 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Heim
  2. 衝突
  3. バイシクル
  4. カルーセル
  5. 極東ID
  6. 恋をしよう
  7. Endless roll
  8. 業々
  9. demon (is there?)
  10. 手をたたけ
  11. 手をたたけ (NICO edition) ※ボーナストラック
DVD収録内容
  • 手をたたけ アコースティック
  • THE BUNGY アコースティック
  • Lonesome ghost アコースティック
NICO Touches the Walls(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表。その後「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの夏フェスやライブイベントへの出演を経て、2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催し成功を収める。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」を、7月にシングル「手をたたけ」を発表し、それぞれの作品でバンドの新境地を提示する。12月に4thアルバム「HUMANIA」をリリース。