ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

手をたたけ! 体を張れ!? NICO流サマーアンセムの舞台裏

NICO Touches the Wallsのニューシングル「手をたたけ」がリリースされた。今作のタイトル曲は、現在au「LISMO!」のCMソングとしてテレビを賑わせているキャッチーなポップチューン。初めて取り入れたというブラスとストリングスの音も痛快な、夏に似合うサウンドに仕上がっている。

今回ナタリーは、バンドの新境地を感じさせる「手をたたけ」の制作秘話と、メンバーがワイヤーアクションに挑戦したユニークなPVの舞台裏に接近。悲喜こもごものエピソードをたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 中野明子

最初は新しい音を入れることに不安があった

「手をたたけ」PVのワンシーン。

──新曲「手をたたけ」はau「LISMO!」のCMソングとして現在テレビでたくさんオンエアされてますね。

光村龍哉(Vo, G) 友達から連絡もらったりするんですけど、僕ら今レコーディングで忙しくて全然観れてないんですよ。

対馬祥太郎(Dr) 今のところ全員1回くらいしか観てないんだよね。でもテレビで流れた瞬間は「おお! やっときたか!」ってうれしくなりましたね。渋谷のビジョンに映ったときは、さすがにギクッてなりましたけど(笑)。

光村 ずっとCMソングに憧れてたから、素直にうれしいですね。学生時代はCMで流れた曲がクラスで流行ったりしてたし。15秒のフレーズだけで印象に残る曲って、名曲だと思うんですよ。例えば山下達郎さんの「クリスマス・イブ」も、曲のイントロが流れるだけでイメージが沸いたり、ワクワクしたりするじゃないですか。そういうインパクトのある曲を、僕らも作りたいなと思ってたんで。

──実際にCMの短い尺で聴いても、強い印象を残すポップチューンに仕上がりましたね。何度も聴いていくうちにクセになっていく感じですし。

光村 それはうれしいです。

──6月にZepp Tokyoで披露したときはバンドサウンドでしたけど、CDではブラスやストリングスの音が加わって、よりゴージャスでポップな感じが出ています。

光村 そうですね。今回初めてブラスとストリングスを入れたんですけど、その威力には驚きましたね。「こんなに豪華な音になるんだ!」って。でも2回目に聴いたときは、驚きよりも曲に似合ってるって感じて。元々「手をたたけ」はブラスバンドで演奏できるようなナンバーにしたかったんですよ。アメフトの試合のハーフタイムショーだったり、野球の試合の7回裏のクライマックスに挟み込まれる楽曲をイメージしていて。ただ、実際自分たちの音にそういう要素を取り入れたらどうなるのかは不安で。

対馬 これまでバンドサウンドを重視してたから、新しい音を取り入れることで違和感があったら嫌だなっていう気持ちは全員共通してたんですよね。でもやってみたら曲にすごく合ってるし。「PASSENGER」を作ってから「何をやっても俺らの音になる」っていう自信ができたから、新しいことに挑戦できたのかなと思ってます。

キャッチコピーは「NICO史上一番ピュア」

「手をたたけ」PVのワンシーン。

──4月にリリースされたアルバム「PASSENGER」やアルバムのツアーでは、「4人が作るロックサウンド」を再現することを重視していましたよね。それが今回は大胆なブラスやストリングスが加わっていて、ポップな印象も強くて。これには驚いたリスナーが少なからずいると思います。

光村 そういう声も確かに聞きますね。でも自分たちとしては、従来のスタイルを覆すとか、イメージを変えたいとか、そういうつもりで作ったわけじゃないんです。曲を作っている中で、自然にブラスが欲しい、ストリングスを加えたいっていう意見が全員から出てきて。「PASSENGER」ツアーは4人だけでアルバムを再現したいっていう思いがあったから、極力シンプルにしていただけなんですよ。だから「自分たちのやりたいようにやる」という姿勢は、この「手をたたけ」でも変わってない。4人の思いが一致していて、楽曲に合うスタイルなら何をやってもOKっていう。

──曲の仕上がりには全員が満足していると。

光村 想像以上のものがありましたね。これはリスナーを巻き込んでいける曲だぞっていう。

──というと?

光村 「PASSENGER」ツアーって、自分たちの中から出てきた音楽をリスナーに届けるっていうのが目的だったんですよ。「NICO Touches the Wallsってこういうバンドなんですよ。こんな思いと情熱をもって音楽を作ってるんですよ」って決意表明をするためだったんですけど、反面、リスナーに一方的に提示したような一面があったんですよね。だから次は、自分たちの思いをいかに多くの人と共有できるか、人をどれだけ巻き込んでいけるかというのが課題になって。そういう課題を抱えてるときに作った「手をたたけ」をメンバーに聴かせたら、フル君が「これはもうライブが見える。ライブの即戦力だね」って一言目に言ったんです。つまり、オーディエンスとひとつになれる曲だって。「PASSENGER」ツアーって確かにバンドとオーディエンスの垣根がなくなるようないいツアーだったけど、それだけを続けていくわけにはいかない。もう一歩踏み込まないと、バンドとして新しい世界に進めないと思ってたから。

──リスナーに訴求するパワーはサウンドからにじみ出てると思います。そんな新しい挑戦が詰まった曲ですが、この曲にキャッチコピーをつけるとしたらどんなものになりますか?

光村 「NICO史上一番ピュア」ですかね。音も歌詞も遠回りしてないんですよ。歌詞もストレートに「うまくいくことばかりじゃない」って言い切ってるし。今までだったら、表現をこねくり回していたんですよね。でも自分の欲求を素直に出す気持ち良さをこの1年で知ったら、歯止めが利かなくなって(笑)。

対馬 俺もコピーをつけるとしたら「ピュア」かなあ。NICOとしてこういう曲をやりたかったんだろうなっていうふうにも思っていて。「PASSENGER」を作って以降、4人がどんどん素直になってて(笑)。自分たちを素の部分に出そうと思った結果が、この曲なんだと思ってます。

坂倉心悟(B) 俺は「自然体」ですね。特別ポップにしたいとか、振り切る感じを出したいとは思ってないんですよ。音源としては一番いいアレンジを施しただけで、自分たちにとっては自然な流れだし。ライブやフェスで演奏してる風景がすぐ想像できるし、「友情讃歌」と同じようにお客さんと一緒に歌っていける曲だなと思ってます。

古村大介(G) うーん……あえて言うなら「等身大」かな。「PASSENGER」も等身大の作品だったと思うんですけど、「手をたたけ」は今の自分たちが思ってる「もっとお客さんを巻き込みたい」っていう気持ちが出ているというか。「PASSENGER」からさらに進化した、NICO Touches the Wallsの等身大が詰まった曲だと思う。

ニューシングル「手をたたけ」 / 2011年8月17日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] / 1470円 / KSCL-1836/7
  • 通常盤 [CD] / 1223円 / KSCL-1838
CD収録曲
  1. 手をたたけ
  2. 速度
  3. 手をたたけ(instrumental)

<Bonus tracks>

  1. マトリョーシカ(Live)
  2. ホログラム(Live)
  3. 雨のブルース(Live)
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表。その後「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの夏フェスやライブイベントへの出演を経て、2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催し成功を収める。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」を発表し、ロックバンドとしての新境地を提示。エネルギッシュなライブパフォーマンスに定評があり、多くのリスナーを魅了している。