ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls
オーディエンスとともに作った新曲 ニューシングル「Diver」制作秘話
メロディアスな楽曲、バンドのダイナミズムを叩きつけるようなサウンド、そしてもがきながらも何かをつかもうとしている言葉。NICO Touches the Wallsのニューシングル「Diver」は、バンドの激しさが凝縮された会心のロックナンバーである。
今回はメンバー4人に、ライブで練り上げながら発展させてきた「Diver」の背景と、同時リリースとなるライブDVD「TOUR 2010 ミチナキミチ」に集約されたツアーの思い出を語ってもらった。ツアー自体はすでに半年以上前のことでありながら、その楽しさを笑顔で振り返る彼らからは、そうして得た経験を現在のバンドの血肉としている充実感が伝わってきた。
取材・文/青木優
スタジアムでシンガロングできる曲を
──「Diver」は去年の初夏のツアー「ミチナキミチ」の頃から演奏されていたんですけど、曲自体もその頃にできたものだったんでしょうか。
光村龍哉(Vo, G) 大元のアイデア自体はもう1年ぐらい前……その前のツアー中(「& Auroras」)にあった記憶があります。だから、結構長い間向き合ってるなぁという印象ですね。これは狙いがすごくはっきりしていた曲なんですよ。うちのバンドにはライブの1曲目で演る「スタジアムでシンガロング感」みたいな、4人で「せーの!」で初めの一歩が踏めるような曲がない、と。そういう曲が1曲でもあると、ライブを組み立てるのがもっと面白くなるなって話をしてて。だから、スタートダッシュみたいな、どっしり仁王立ちしてる曲を作ろうということで、イントロから生まれたのがこの曲だったんですけど。
対馬祥太郎(Dr) みっちゃんのそういうアイデアを聞いて「いいねいいね」と。それで例えばKINGS OF LEONみたいに、のっけから盛り上がれて、かつ、どっしりした曲で、デッカい場所でもドカン!と盛り上がれるようなイメージの曲を「よし、作ってみよう!」と。
光村 そういう点ではKINGS OF LEONには、けっこうハマってましたね。2008年に出た「Only by the Night」ってアルバムがすごい良かったんですよ。
坂倉心悟(B) そのイメージがあって、最初は「ひたすら力強くいければいい」っていう曲だったのを、ライブで演るための形にしていきましたね。さっきスタジアムって言ってましたけど、ほんとにそういう感じで、「サビで思いっきり叩きつけてやろう!」みたいな。
古村大介(G) イントロからできて、そこでみんなでイメージを共有してから作っていった曲ですね。1年間でどんどん変わっていったんですけど、イントロの入りの風景は最初の頃に近いものがあります。
──かなり変わったみたいですね。11月のライブのときに光村さんは「ゆったりめのドンドンした曲だったのが、テンポを上げて歌詞も書き直した」と言ってたらしいですが。
光村 そうですね。ライブで即効性の高い曲として仕上げたいという思いはずっとあったんですけど、最初の頃のゆったりしたテンポでは、そこらへんがつかめそうでつかめない、そういうポイントがいっぱいあったんですよね。「ミチナキミチ」で披露したときも、反省会で「2番の歌詞は書き直したほうがいいね」とか「アレンジ的にももう少し力強いものにしていったほうがいいんじゃないか」っていう話になって、サウンド的にはギターの歪みをどんどんアメリカンな方向に持ってったりとか……。もともとライブの反応を見て、自分たちが感じるものがあったらアップデートすればいいと思ってたんです。その前の年のアルバム(「オーロラ」)が、リリースされるまで一切ライブでも演奏しないっていうやり方だったんで、その反動で、インディーズ時代みたいにライブで披露していきながら、その場の実感で曲を完成させていくやり方に戻ってみたくなったとこもあって。
レコーディング中に音がデカすぎて怒られた
──じゃあこの曲は、お客さんの反応とともに変わっていったわけですか。
光村 ええ、そうですね。さっき話した2番の歌詞も、「Diver」だけあってダイビング用語が並んでいたりして、風景描写も多かったんです。ただ、そういう回りくどい比喩って、ライブで演ってみると中だるみしてしまうというか……。そこで言葉のスピード感とか、耳で感じる言葉っていうのを重要視するようになったんですよね。それが大事なんだなと思えたんです。
対馬 リズムやアレンジは思考錯誤しましたしね。
光村 最初のを今聴くと、ミディアムバラードみたいな感じだよね。つんのめってしょうがないっていう(笑)。それはお客さんも半ば感じていたのかもしれない。
対馬 「もっと来いよ!」みたいなそういう感じはあったかもね(笑)。
光村 アンプの設定にしても最初は普通にやってみたんですけど、やっぱり足りんなぁと。だから昔のバンドかと思うぐらい「マーシャルフルテン」と呼ばれる状態でやってみましたね。そしたらレコーディングスタジオで怒られてしまったという(笑)。
古村 怒られたんですよ、「うるさい!」って。度が過ぎたんですよね。音が漏れて(笑)。
レコード会社担当 最初のバージョン聴いてみます? これはこれで良かったんですよ。
光村 え!? けっこう恥ずかしいですね……。
(「Diver」の最初のアレンジ版が取材ルーム内に流される。確かにどっしりとしていて、じわじわと盛り上がっていく出来。ただ、ロックというよりミディアムバラード的なアレンジである)
光村 ……遅い!(苦笑)
対馬 遅いねえ!
光村 でも最初の狙いはこういう感じでしたね。いやぁ……ちょっともう……息が止まりそうになりますね(笑)。
CD収録曲(初回限定盤)
- Diver
- 友情讃歌
- Broken Youth Live Ver.
- Diver Live Ver.
CD収録曲(通常盤)
- Diver
- 友情讃歌
- Diver Instrumental
DVD収録曲
- N極とN極
- 夏の雪
- エトランジェ
- 錆びてきた
- 風人
- サドンデスゲーム
- そのTAXI,160km/h
NICO Touches the Walls(にこたっちずざうぉーるず)
2004年4月に光村龍哉(Vo,G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。同年ヤマハのバンドコンテストに出場し、優勝に準ずる賞を獲得。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表。その後「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」などの夏フェスやライブイベントへの出演を経て、2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催し成功を収める。メンバー全員が1985年生まれと若手ながら、楽曲のクオリティの高さと演奏力に定評がある。また、エネルギッシュなライブパフォーマンスも多くのロックファンを魅了している。