ナタリー PowerPush - ニューロティカ

アツシ×宮藤官九郎 白塗りピエロの30年

もっと早く反面教師にすればよかった

宮藤 今回楽曲を聴きながら「ああそうか」って思ったのは、初期からずっと楽曲に小芝居が入ってるんですよね。無意識に(グループ魂も)同じことやっている。まあ「これコントだいたい40秒くらいだな」ってだんだんそこ飛ばすようになるんですけど(笑)。

左から宮藤官九郎、アツシ。

アツシ これまでに出たアルバムの中にはコントを飛ばせない仕掛けにしてるのもあるよ(笑)。これ曲とくっつけちゃおうぜって。そういうのも試行錯誤しながらやってる。

宮藤 そういう部分にもけっこうこだわってたんだなって、歴史を追って聴いててわかりました。

アツシ 「俺たちはパンクだからラブソングは歌っちゃいけない」っていう照れ隠しで入れたのが最初だったかな。あとメンバー内で盛り上がった話を「こんなに面白い話だからもっと伝えていかなきゃ!」って思ってやっちゃうんだよね。

宮藤 1回目は面白いですけどだんだん「なんで歌聴かせてくんねえんだ」ってイラッとくるんですよ!(笑) そこはもっと早く反面教師にすればよかったなって思う。メンバーが変わってから2枚組のベスト(「Yes! NEW ROTE’KA」)出しましたよね。あれ演奏し直してるのにコントまた入ってんだもん!(笑)

アツシ すいません! っていけね、謝っちゃった。ここで謝ったら負けだよねえ(笑)。

宮藤 いやいや(笑)。でもずっとやってるんですから本当に一貫してますよ。

「メロコアの元祖」って言われても

──今回リリースされるベストアルバムの楽曲は宮藤さんの選曲によるさまざまなニューロティカの曲が入っていますよね。定番曲は当然押さえつつ、マニア向けの曲も入ってる。オリジナルメンバーの修豚さんとピンクの電話の都子さんのデュエット曲「新宿ロフト恋の物語」とか。

宮藤 みんな「修豚哀歌」入れるでしょってところを「これにしか入ってないぐらいのものがないとよくないだろ」ってあえてこれにしたんですが。入ってるのはもうすでにあるから(笑)、そっちを買えばいいんだ!と。

アツシ そう、修豚でふっと思いつくのは「修豚哀歌」なんですよ。これ買いだよね!(笑)

宮藤 あと今回聴いてみて発見したことって多くて。例えば僕が今回初めて聴いた「L.O.E」なんかは「後のメロコアを先取りしてたんじゃ……?」って思いましたし。

アツシ よく「メロコアの元祖だ」って言われたりするけど、理解してなかった(笑)。ちなみに「L.O.E」の意味わかります? これは当時「ラスト・オブ・モヒカン」って映画が流行っていて、メンバーから曲をもらったときに「英語の詞を乗せてくれ」って言われたけど英語なんて無理じゃないですか。だから「ラスト・オブ・イングリッシュ」って(笑)。そういうのけっこうある。

宮藤 歌詞にもけっこう毒がありますよね。ピエロのビジュアルで生々しさ、人間くささのない存在だと思ってて気付かなかったんですけど、 わりとすぐ「やらせろ」とか言う(笑)。

アツシ まあ僕らは反体制から入ってきてるから(笑)。修豚と始めたときも「ウェエエエ!!」って叫ぶようなハードコアやりたかったんですよ。僕の声ではできなかったからこうなったんですけど。

──ハードコアはともかく、激しいものやユーモアがあるものなど、実際聴いてみていろいろな曲が入ってると感じました。曲にまつわるエピソードでは何かありますか。

左から宮藤官九郎、アツシ。

アツシ 「夏・ナンシー・16才」っていう曲あるじゃないですか。これ実は「リンダリンダ」に対抗していて。

宮藤 何!?(笑) リンダ対ナンシーって?

アツシ で、作るときに「『リンダリンダ』よりたくさんナンシーって歌おうぜ」って。

宮藤 だからあんな「ナンシーナンシーナンシー!」っていっぱい言うんだ。

アツシ ヒロトさんには了解を得てます。「NO NO NO」のときの手の振りも「ください!」って引き継いでるし。21曲の中にいろいろなドラマがあるんですよ。

ある意味もはや重鎮

宮藤 ニューロティカは「ロックバンドはこうでなくてはいけない!」ってのをいち早くなくしましたよね。こないだも実家のお菓子屋の若旦那として「出没!アド街ック天国」出たし。ああいうの普通断るじゃないですか。

アツシ なんでもできるのがニューロティカですから。

宮藤 そういえば今日はお店どうしてるんですか?

アツシ

アツシ 今日は朝だけ。そうそう、アド街の話出たけどあのあと地元のおばさんたち涙ぐんで「あっちゃんよかったねえ! 報われたねえ!」って言われたよ。テレビの力すごい。「お兄さんけっこう大物なんですってね! わざと売れないようにインディーズでねえ!」。おばさんがインディーズって言葉知ってた。

宮藤 わざと売れないってすごいですねえ(笑)。でもこうやって活動は続けているわけだし、もはや重鎮ですよね。

──テレビ出演もそうですけど、この30年における活動の幅広さに驚きます。1600本以上におよぶライブの間にテレビ出演や芸能人コラボなどなど本当に多彩で。

アツシ 昔、野村沙知代と共演したときは、彼女が「ステージに立ちたい」って言っててロフトグループの代表(平野悠)から「アツシどうかな」って聞かれたんで「いいすよ!」て即答したんだよね。あと小向美奈子ちゃんも僕らが真っ先に手を差し伸べてCDを出した。

宮藤 それでいてちゃんとLAUGHIN' NOSEとかゴリゴリの方ともやっていけるってのがすごいです。

アツシ でもラフィンとツアーしたとき美奈子ちゃんの後輩のAV女優からお願いされて競演したら、ラフィンのファンに「一緒に演らないでください!」って怒られちゃったけど(笑)。断るの苦手なんだよね。呑みに誘われてもイヤって言えない(笑)。今年結成30周年でワンマンをするタイミングでもほかのイベント出演とかに誘われたら「出ようか」ってなる。……同じ30周年でもニューロティカは怒髪天になれません(笑)。

宮藤 いやいやいや(笑)。

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ライブ情報
30周年記念ワンマン「8人だよ! 全員集合!」
  • 2014年5月10日(土)福岡県 DRUM SON
  • 2014年5月17日(土)宮城県 enn 2nd
  • 2014年5月24日(土)北海道 COLONY
  • 2014年5月31日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年6月1日(日)大阪府 umeda AKASO
  • 2014年6月7日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • <メンバー>
    アツシ(Vo) / 修豚(Vo, G) / カタル(B) / ション(B) / リョウ(G) / ジャッキー(G) / ナボ(Dr) / アキオ(Dr)
ニューロティカ

1984年にアツシ(Vo)と修豚(G)によって結成されたパンクバンド。結成と同時に設立したネオファミリーレコードからオムニバス盤やシングルを発表し、1989年5月には初のフルアルバム「ハーレム野郎」をリリース。翌1990年6月に日本コロムビア TRAID レーベルより、シングル「ア・イ・キ・タ」でメジャーデビューを果たした。ピエロメイクと派手なコスチュームで誰もが口ずさみやすいパンクサウンドを提示し続け、特にライブを重視した活動により現在までの総ライブ回数は1600回を超える。また野村沙知代や小向美奈子との共演や奇抜なライブ企画などユニークな活動でたびたび話題となる。この姿勢をリスペクトし、これまでリリースされているトリビュート盤には氣志團、PUFFY、カジヒデキ、LUNKHEAD、MERRYなど多彩なアーティストが参加する。

宮藤官九郎(くどうかんくろう)

1970年宮城県生まれ。1991年より大人計画に参加し、多くの作品の脚本、演出などを手がける。1995年からはパンクコントバンド・グループ魂を結成し「暴動」名義でギタリストとして活躍するほか作詞作曲も担当。俳優としてさまざまな作品に出演するほか、ドラマや映画の脚本・監督も数多く手がけており、近作には国民的ヒット作のドラマ「あまちゃん」(脚本)のほか、映画「中学生円山」(監督・脚本)、「謝罪の王様」(脚本)、「土竜の唄」(脚本)がある。2014年は「宮藤官九郎のオールナイトニッポンGOLD」のパーソナリティや涼 the graduaterの配信限定シングル「ドラゴン気取りのティーンネイジ・ブルース」のプロデュースなどなど多彩な活動を展開し、今作「ベスト・オブ・ニューロティカ」の監修を行った。7月からは舞台・大人の新感線「ラストフラワーズ」に出演。