ナタリー PowerPush - ニューロティカ

アツシ×宮藤官九郎 白塗りピエロの30年

ちゃんと好きな人が集まる

──それにしても昔のメンバーに宮藤さんなどなど、ニューロティカのもとにはいろいろな人が集まりますよね。

左から宮藤官九郎、アツシ。

宮藤 芸人さんも多いですよね。彼らって実はバンドやってた人とか憧れてる人もいるんですよね。そこにきてあっちゃんは……どっちもやってる感じがある(笑)。面白いことをバンドとしてやってて、かつピエロで。

アツシ ダイノジの大地洋輔くんは「夏・ナンシー・16才」の冒頭のコントでボケとツッコミを覚えたって言ってましたね。大谷ノブ彦くんも上京するときにウォークマンにボブ・ディランとニューロティカを入れてたって。

宮藤 いい話ですねえ。

アツシ それ聞いて俺すぐボブ・ディラン買いに行った。

宮藤 知らないんですか!(笑) いやでもトリビュートアルバムとか見ても毎回本当に幅広い人が集まりますよね。ビジネスの臭いがしないというか「ああ、ちゃんとニューロティカ好きな人が集まってるんだな」って思う。

──アナーキー、蒼井そら、ソウル・フラワー・ユニオン、PUFFY、LUNKHEADなどなど、世代もジャンルもえらいことになってますしね(笑)。

アツシ アナーキーは復活までしてくれましたしね。お願いしたら「いいよー」って。

宮藤 すごいですよねえ! こんなことあっちゃんの前で言うのもアレですけど、ニューロティカのファンだと言ってもそんなに得はないじゃないですか(笑)。だからこそ本物なんだなって。愛されてる。

アツシ でもバンドマンがニューロティカ褒めるのは30過ぎてからですよ。ほかのバンドのインタビューで「ルーツはなんですか?」って聞かれててだいたいみんな「THE BLUE HEARTS」とか言う。その中でドラマーとかが「……実はニューロティカなんですよね」って言うとその次に「(一同爆笑)」って書いてあるんですよ!

宮藤 まあ普通は言わないですもんね(笑)。

アツシ で、自分を確立してきたあたりでようやくしれっと「けっこうニューロティカも好きだったよ」なんて打ち明ける(笑)。

“正しい違和感”を感じてほしい

アツシ まあでもこんなバンドがいてもいいんじゃないかって自分で思うんですよ。こういうなんでもやるバンドってのが。

宮藤官九郎

宮藤 真面目な話ですけど、今回のベストアルバムの監修を引き受けたのは「広がってほしい」っていう気持ちがあったんです。ニューロティカのライブを頭からケツまで見ると、どの曲もなんか無駄にカッコいいじゃないですか(笑)。そういう曲がいっぱいあるのをもっと多くの人に先入観なく聴いてもらいたいっていうのが一番の動機だったんですよね。

アツシ ありがとうございます。

宮藤 フェス、出演決まるといいですね。絶対何%か新しいファン生まれますからね。「ロックバンドってだいたいこんな感じね」って自分の中で線引きしちゃう人こそニューロティカやグループ魂を観て「こんなとこまで!?」って思ってもらいたいんですよ。俺が高校生のときにニューロティカ観て「これダメなんじゃないか」っていう“正しい違和感”みたいなことを感じるというか。これからもニューロティカにはやり続けてほしい。それを観て自分たちも、誰にも頼まれてないけど音楽業界に切り込んでいこうって気持ちになるんです。

アツシ うん。僕らはずっと楽しいことやってるんで、これからもそれを皆さんと共有していきたいって思う。「こんな大人がいるから君は大丈夫だよ」って伝えるメッセンジャーになって、いつか次の世代にバトンタッチ。それで体が動かなくなったら終わりです。

宮藤 いや、あと20年やってればストーンズになれるじゃないですか。

アツシ そっか。じゃあ「これからも乞うご期待!」だ(笑)。

左からアツシ、宮藤官九郎。
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ライブ情報
30周年記念ワンマン「8人だよ! 全員集合!」
  • 2014年5月10日(土)福岡県 DRUM SON
  • 2014年5月17日(土)宮城県 enn 2nd
  • 2014年5月24日(土)北海道 COLONY
  • 2014年5月31日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年6月1日(日)大阪府 umeda AKASO
  • 2014年6月7日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • <メンバー>
    アツシ(Vo) / 修豚(Vo, G) / カタル(B) / ション(B) / リョウ(G) / ジャッキー(G) / ナボ(Dr) / アキオ(Dr)
ニューロティカ

1984年にアツシ(Vo)と修豚(G)によって結成されたパンクバンド。結成と同時に設立したネオファミリーレコードからオムニバス盤やシングルを発表し、1989年5月には初のフルアルバム「ハーレム野郎」をリリース。翌1990年6月に日本コロムビア TRAID レーベルより、シングル「ア・イ・キ・タ」でメジャーデビューを果たした。ピエロメイクと派手なコスチュームで誰もが口ずさみやすいパンクサウンドを提示し続け、特にライブを重視した活動により現在までの総ライブ回数は1600回を超える。また野村沙知代や小向美奈子との共演や奇抜なライブ企画などユニークな活動でたびたび話題となる。この姿勢をリスペクトし、これまでリリースされているトリビュート盤には氣志團、PUFFY、カジヒデキ、LUNKHEAD、MERRYなど多彩なアーティストが参加する。

宮藤官九郎(くどうかんくろう)

1970年宮城県生まれ。1991年より大人計画に参加し、多くの作品の脚本、演出などを手がける。1995年からはパンクコントバンド・グループ魂を結成し「暴動」名義でギタリストとして活躍するほか作詞作曲も担当。俳優としてさまざまな作品に出演するほか、ドラマや映画の脚本・監督も数多く手がけており、近作には国民的ヒット作のドラマ「あまちゃん」(脚本)のほか、映画「中学生円山」(監督・脚本)、「謝罪の王様」(脚本)、「土竜の唄」(脚本)がある。2014年は「宮藤官九郎のオールナイトニッポンGOLD」のパーソナリティや涼 the graduaterの配信限定シングル「ドラゴン気取りのティーンネイジ・ブルース」のプロデュースなどなど多彩な活動を展開し、今作「ベスト・オブ・ニューロティカ」の監修を行った。7月からは舞台・大人の新感線「ラストフラワーズ」に出演。