ナタリー PowerPush - ニューロティカ

アツシ×宮藤官九郎 白塗りピエロの30年

ボーカルはあっちゃんがやっててほしい

宮藤 ところでメジャーからそうじゃなくなるときってどういう心境だったのかなってことを今回聞きたかったんです。そういうのってメンバーがいるところで発表されるんですか。

アツシ

アツシ そうだね。ただメジャー最後の2枚はアルバム1枚ごとの契約だったし、ライブの動員も徐々に落ちてたからみんなうすうすは感じていて。コロムビアの人たちも会社員だし、彼らはすごくお金かけてくれたから「しょうがないな」って。でもそれからオリジナルメンバーのアキオ、修豚、ション、しばらくしてジャッキーも辞めた。まあ俺はそういうときに「メンバーが辞めるライブやれば客が増えるな」って考えちゃういやらしいタイプだけど(笑)。解散ビジネス、脱退ビジネスっていうか。

宮藤 脱退ビジネス(笑)。

アツシ とはいえドーンとテンションが落ちた時期もあった。そのときはいろいろなバンド観に行って、打ち上げで馬鹿やって対バンを申し込んでましたね。メンバーに「じゃあ対バン取ってくるから」って言って、中野の家から下北沢や渋谷のライブハウスに自転車で行くっていうのを2年くらい。

宮藤 宣言してくるんですか? えー!

アツシ すべてメンバー4人で営業とかやってるし、やらなきゃ生きていけないっていうのもあるけど、ニューロティカを維持したいっていう気持ちからだね。ジャッキーが辞めた当時のファンクラブ会報にも「またやっていこう。もし俺が死んだら違うボーカルとニューロティカを維持してください」って書いてたよ。

宮藤官九郎

宮藤 2代目、3代目って? でもニューロティカにあっちゃんがいることはデカいじゃないですか。Van Halenみたいにボーカルコロコロ変わって、違う人がピエロやっても違和感あると思うんすよね。

──30年の中でパンクにもメロコア、青春パンクなど新しい流れがいくつも生まれました。アツシさんはどう対峙してきたんですか?

アツシ 対バン申し込みました。まあシーンなんて止めらんないですから。でも対バンしたあとにその周辺が落ち込んで「ニューロティカがつぶした!」って言われたことはあったけど。

宮藤 (笑)。でもどこに入っていっても対バンできるのって、バンドに揺るぎないものがあるからなんでしょうね。勝ち負けじゃないっていうか、負けない。勝ちか無効試合っていう。自分たちもそうなんですけど、音楽以上の個性があるから何やってもいいじゃんって思ってます。今回聴いて思いましたけど、ニューロティカってバンドにはいろいろな要素が入ってる。技術やユーモアっていう多岐にわたる特徴があって、こういうのはコンセプトが特殊だからできるんだろうなあ。

30周年にしかできないことをしたい

──今回リリースされる宮藤さん監修の「ベスト・オブ・ニューロティカ」リリースもそうですが、今年のニューロティカは今まで以上にいろいろなことをしますよね。

宮藤 こないだの29周年もけっこうハデにやってましたけどね(笑)。(バンドの年表を見ながら)……っていうか「26周年記念」とかあるんだったらもう何年でもいいんじゃねえか!ってなるんですけど。

アツシ うん、毎年やってる(笑)。周年ビジネスも大好きです。

──直近だと5月に30周年ワンマンツアー実施とオリジナルアルバムのリリースがあります。辞めたメンバーが再集結して現メンバーと合体っていうのはたまらないですよね。

アツシ ですね。でも今のメンバーもすごいなって思うんです。当時のメンバーが辞めてから2~3年はけっこう「前のメンバーが観たかったのに」って言われたけど、結果的に現メンバーは前のメンバーが10年かけてやってきたものを5年で覆しましたからね。

左から宮藤官九郎、アツシ。

宮藤 そうなんですね。

アツシ 前のメンバーは別でバンドやってますけど、僕らは対バンを一度もしなかったんです。人から「やれば」って言われたけど、それだけは絶対に譲れない。で、東名阪CLUB QUATTROツアーが満員になってからゲストとして呼んで、昔の曲を一切演らずサッと撤収。あれは気持ちよかった(笑)。

宮藤 ……そういうところで粋なんですよね!(笑) なんだろう……カッコいいなあって思いますよほんと。

アツシ それから時間も経って、結成30周年の今年は集まろうと思うんだよね。今いる俺とカタル、ナボちゃんの3人とジャッキーがいたときの歌も2~30曲あるんでそれもアルバムにしたい。あとドキュメンタリー映画とか本も考えてて。

宮藤 へー、そんなにあるんだ。あっちゃんの30年を振り返る本とか読みたいですね。ARB・石橋凌さんの「渾身」みたいなやつ。

アツシ そう。自伝をって思ってたけど「自伝は自分で書くんだよ?」って言われたんで最近は「タレント本」ってことにして誰かに書いてもらおうかなって(笑)。あと僕は今年50歳になるんで、東名阪と神戸で地元バンドとライブをやるってのも考えてます。ただ実は7~9月、フェスのシーズンがヒマで……。「どっかペンションのバイトでも行こうか」なんて話してる(笑)。

宮藤 わー、夏ヒマなの痛いですねえ。

アツシ 新宿ロフトの店長に言われたんですけどフェスってのは自分から「出たい」って言ったらダメらしいんです。「そんなにガツガツしちゃダメだぞ。待ってれば来る」って(笑)。フェスに出るか、軽井沢か……。

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ライブ情報
30周年記念ワンマン「8人だよ! 全員集合!」
  • 2014年5月10日(土)福岡県 DRUM SON
  • 2014年5月17日(土)宮城県 enn 2nd
  • 2014年5月24日(土)北海道 COLONY
  • 2014年5月31日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年6月1日(日)大阪府 umeda AKASO
  • 2014年6月7日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • <メンバー>
    アツシ(Vo) / 修豚(Vo, G) / カタル(B) / ション(B) / リョウ(G) / ジャッキー(G) / ナボ(Dr) / アキオ(Dr)
ニューロティカ

1984年にアツシ(Vo)と修豚(G)によって結成されたパンクバンド。結成と同時に設立したネオファミリーレコードからオムニバス盤やシングルを発表し、1989年5月には初のフルアルバム「ハーレム野郎」をリリース。翌1990年6月に日本コロムビア TRAID レーベルより、シングル「ア・イ・キ・タ」でメジャーデビューを果たした。ピエロメイクと派手なコスチュームで誰もが口ずさみやすいパンクサウンドを提示し続け、特にライブを重視した活動により現在までの総ライブ回数は1600回を超える。また野村沙知代や小向美奈子との共演や奇抜なライブ企画などユニークな活動でたびたび話題となる。この姿勢をリスペクトし、これまでリリースされているトリビュート盤には氣志團、PUFFY、カジヒデキ、LUNKHEAD、MERRYなど多彩なアーティストが参加する。

宮藤官九郎(くどうかんくろう)

1970年宮城県生まれ。1991年より大人計画に参加し、多くの作品の脚本、演出などを手がける。1995年からはパンクコントバンド・グループ魂を結成し「暴動」名義でギタリストとして活躍するほか作詞作曲も担当。俳優としてさまざまな作品に出演するほか、ドラマや映画の脚本・監督も数多く手がけており、近作には国民的ヒット作のドラマ「あまちゃん」(脚本)のほか、映画「中学生円山」(監督・脚本)、「謝罪の王様」(脚本)、「土竜の唄」(脚本)がある。2014年は「宮藤官九郎のオールナイトニッポンGOLD」のパーソナリティや涼 the graduaterの配信限定シングル「ドラゴン気取りのティーンネイジ・ブルース」のプロデュースなどなど多彩な活動を展開し、今作「ベスト・オブ・ニューロティカ」の監修を行った。7月からは舞台・大人の新感線「ラストフラワーズ」に出演。