never young beach「STORY」 PR

never young beach|4thアルバムでネバヤンが到達したバンドとしての新境地

never young beachが5月8日にニューアルバム「STORY」をリリースする。

4枚目のアルバムとなる今作で、彼らはこれまでのネバヤンサウンドを彩ってきたリバーブを排し、また音数を徹底的に絞るなど、空間を生かした新たなサウンドアプローチを試みている。より俯瞰的な視点でつづられた安部勇磨(Vo, G)による歌詞も今作を語るうえで大きなトピックと言えるだろう。音楽ナタリーでは、さまざまなトライ&エラーを経て充実のニューアルバムを作り上げた4人に話を聞いた。また特集の後半では、今作のタイトルになぞらえ、メンバーに「『STORY』を感じるレコード」を紹介してもらっている。

取材・文 / 渡辺裕也 撮影 / 吉場正和

これまでのアルバムとは確実に意識が違った

──録音のアプローチから歌詞の視点、それぞれの楽曲の曲調やアルバム全体のムードに至るまで、「STORY」は明らかに過去3作と一線を画しているアルバムですね。おそらく今までとはまったく違った意識で制作に臨んだのでは?

never young beach

安部勇磨(Vo, G) ああ、そう感じてもらえてうれしいです。シングルの「うつらない/歩いてみたら」を作っている段階で「これまでとはまったく違うものを作るぞ」という思いが僕らの中にはあったし、今回のアルバムではそこをさらに突き詰めていったので、これまでとは確実に意識が違いましたね。

──その意識の変化をもたらしたものはなんだったのでしょう?

安部 個人的には、Bahamasの「Earthtones」というアルバムの影響が大きかったです。彼もこのアルバムで以前とはまったく違うところに行った感じがしたし、とにかくいろんなトライをしているところがすごくて。それでこのアルバムをみんなにもシェアして、今回はこういうイメージでやりたいと伝えました。

──「Earthtones」のどんなところを参照したのか、もう少し詳しく教えてもらえますか?

安部 それまでのBahamasの作品は録音環境なんかもDIYな感じだったと思うんですけど、「Earthtones」はとても洗練されてるんです。音数は減っているのに、サウンドに厚みを感じるし、この世界観はホントにすごいなと。

阿南智史(G)

──確かに「STORY」も音数が少ないですよね。ただ、鳴っている音色はすごくバラエティに富んでいる。いろんな楽器が使われているし、女声コーラスもすごく効果的だなと。密室感のある録り音も印象的でした。

安部 今までの僕らは「せーの!」でレコーディングすることが多かったんですけど、今回は阿南(智史)の家で1人ずつ録音して、みんなで話し合いを繰り返したんです。こういう録音のやり方は今回が初めてだったし、それに伴って音も変化していきましたね。

──ギターアンサンブルについてはいかがですか? これまでの3作はボーカル&ギターの安部さんを含むトリプルギターだったけど、ギタリスト松島皓さんの脱退を受けて、おのずと発想も変わったんじゃないかと思うのですが。

阿南智史(G) 以前は一方のギタリストが何かフレーズを思い付いたら、もう片方がそれに合わせていく感じだったんですけど、今回は僕がギターアンサンブルを考えています。曲に寄り添うというか、ほかの楽器としっかり絡み合うようにしようという意識は強かったと思う。

「リバーブなんてもういらねえ!」

──リズム隊も音数が削ぎ落とされてますよね。ドラムの金物もほとんど鳴らないし、非常にストイックというか。

鈴木健人(Dr) 確かに今回は金物をあまり入れてないですね。以前は手癖でシンバルを叩くところもあったんですけど、今回は勇磨がBahamasやVulfpeckの音源をシェアしてくれたおかげで、事前にイメージを共有できていたので、自然とミニマルな演奏を心がけるようになりました。特に今回はコーラスとかで曲全体のダイナミクスを出していくようなアプローチだったので、リズムに関してはなるべくシンプルなものを探りたいなと。

巽啓伍(B)

巽啓伍(B) 求められるスキルがこれまでの作品とはまったく違いましたね。ただ具体的なリファレンスがあったので、すごくスムーズに取り組むことができました。

──とにかく今作の音像は緻密ですよね。ライブ録音的な臨場感とは対極のアプローチだなと。

安部 まさにライブとはまったく別の考え方でレコーディングに臨みました。なので、ライブでどういうふうに演奏するのかは、これからさらに試行錯誤しなきゃいけないんです。ただ、今までのレコーディングにはない作業ばかりだったので、とにかく楽しかったんですよね。リバーブを使わなかったのも大きかったな。今回、リバーブ禁止だったんです。だよね?

阿南 そうだね。「リバーブなんてもういらねえ!」って。今回はとにかくストイックに、裸一貫のフルチンでいくぞと。

安部 そう、リバーブに頼るなんて男じゃねえぞと。

鈴木健人(Dr)

──今まで普通に使ってたじゃないですか(笑)。

安部 いや、そうなんですけどね(笑)。リバーブなしの音楽にも惹かれ始めて。リバーブは素晴らしいものなんですけど、今回はなるべくエフェクトなしでいこうと思って。例えば健ちゃんだったら「今回は(ドラム)3点だけでやってみよう」みたいな、そういう気概だったんです。

──つまり、今回のレコーディングはそれでもイケるという自信があったということ?

安部 そうですね。ライブやレコーディングの経験を積み重ねてきた中で、僕はみんなのスキルが上がっているのを肌で感じていたし、今ならもっとシンプルにできるんじゃないかなって。国内でこういうことをやってる人は今あんまりいないと思うし、チャレンジしたくなったんです。

──そこで満を持してのリバーブ禁止令だと。

安部 そう、これまで散々使っておきながら(笑)。

今までで一番時代のことを考えたかもしれない

──作詞についてはいかがでしょう? これまでの作品は安部くんの半径数メートル以内で起きていることが歌詞のモチーフだったと思うんですけど、今作はどことなく情景を俯瞰しているような言葉使いが印象的でした。実際どのようなことを意識されましたか?

安部勇磨(Vo, G)

安部 確かに以前の歌詞は、四畳半的というか、自分の周りで起きていることをモチーフにして書いていたんですけど、それだけでは届かない人もいるのかなと思ったり、自分の中での言葉の鮮度だったり。今回はそれとは違った言葉で書きたいなと。そうすることによって、今までの作品では出会えなかった人にも、僕らの作った音楽を聴いてもらえるんじゃないかなと思ったんです。あとは片方に加担するような言い方はなるべくしないようにしようとか、感情論にならないようにしようとか、そういうことを意識しました。今回サウンドのイメージとしては「一聴すると冷たいのか、あったかいのかわからないんだけど、その根幹ではあったかい音が鳴ってる」みたいな雰囲気を目指していて、その感覚を歌詞でも表現したかったんです。言葉の持つパワーについて、ものすごく考えました。

──今作には現代社会に向けられた視点もうかがえます。

安部 そうですね。もしかすると、今までで一番時代のことを考えたかもしれない。それこそ1stアルバムを作ってるときなんか、ただただ楽しくてしょうがないって感じだったし、2枚目もそれと同じようなテンションでやれてたんですけど、3枚目を作るタイミングで、このままじゃいけないなと思ったんです。世の中に対して疑問に思うこともあったし、せっかくならそれを音楽で伝えられないかなって。なので、もしかすると「今までの安部ちゃんと違うじゃん!」みたいに思われるかもしれない。