ナオト・インティライミ、勢い止まりません! 2023年は配信シングル連続リリースで幕開け (2/2)

この闇感、陰ティライミって感じ

──2月に配信された「Secret」は、特定の友人に秘密を打ち明けていたと思いきや、誰にでも秘密を話してしまう人を「悲劇のヒロイン」と称してシニカルに歌った曲です。「ナオトさんどうしちゃったの……」と思ってしまうぐらい暗いですね。

この闇感(笑)。陰ティライミって感じよね。これも「暗い曲を作ろう」とは一切考えていなくて、つらつらと歌詞を書いていたらこうなっていたんだよ。「信頼してるから、絶対に誰にも言わないでね?」と言いつつ、いろんな人に同じ内緒話をしている人っているよね? みんな「そういう人とはあまりつるみたくない」と思うけど、老若男女問わずそういう部分はある、ということを歌いたかった。「悲劇のヒロイン」とは言っているけど、男だってそういう人はいるし、歳を取ってもそういう感情は生まれてくる。もしかしたら縄文時代の人も同じことを考えていたかもしれないしね。誰でも自分が生きている存在価値を、大切な人に認めてもらいたいよね? 僕らはそういう人に出会う旅を一生続けているし、もし身近にいたら「すごく尊いことだよな」「大切にしないといけないな」ということを表現したかったんだよ。

──ネガティブな言葉をちりばめているけど、逆説的に話を聞いてくれる人の大事さを歌っていると。

そうだね。唯一「おてんと逃げずに頑張れます」のひと言だけがポジティブだから、憂いが9割、救いが1割という比率かな。

──それから演奏には緑黄色社会のベーシスト、穴見真吾さんが参加しています(参照:ナオト・インティライミが新曲「Secret」発表、リョクシャカ穴見真吾が参加)。かなりブリンブリンなベースを弾いていて、ナオトさんのルーツの1つであるファンクの要素を強めていました。

この曲が完成したとき、真吾のベースの音が絶対に合うと直感したんだよ。緑黄色社会とは何度も同じフェスに出演したり、一緒にごはんに行ったり、ずっと交友関係が続いていたから、レーベルのスタッフを通さずにお願いしちゃった(笑)。緑黄色社会は去年大ブレイクして、年末はとにかく忙しかったと思うんだけど、真吾は紅白初出場の2日前くらいにレコーディングしてくれてね。「年明けで構わないよ」と相談したにもかかわらず、もうバシっと決めてくれて。彼は引き出しが多いし、素晴らしいメロディメイカーでもあるから、ちゃんとメロディに寄り添ったベースを弾いてくれました。20代ならではの勢いがありつつ、まるで50代のベテランスタジオミュージシャンのような味わいもあって、すごいベーシストだよ。

ナオト・インティライミ
ナオト・インティライミ

「EQ」=イコライザー=心の知能指数

──3月に配信された「EQ」はRin音さんがフィーチャリングゲストとして参加しています。ある女性に魅了される様子をハイウェイの景色と重ね合わせた歌詞が特徴的でしたが、ナオトさんはどちらかというと冷静な歌い方をしていて、不思議なギャップを感じたんです。

なるほどな……言われてみて、確かにそう思った。何がそうさせてるのかな?

──Rin音さんの歌い方にも近いですし。彼の歌声に混ざるよう、意識的に合わせたりしたんでしょうか?

別々に録音したから、歌い方を合わせたわけではないんだよね。この曲は「今会いに行かなかったら終わってしまって、一生後悔する恋」を描いていて。だから深夜に家を飛び出して、衝動的に車を走らせているんだよね。で、現場に着いたら声を荒げて気持ちを伝えようとするんだけど、移動している間はいろんな考えが頭の中をグルグル巡っている。独り言を口にしているのと近い状況だから、歌い方もそんな感じになったのかもしれない。それともう1つ、この曲のオケは意識的にレイヤーを重ねないようにしていて。サビの頭もチャーリー・プースの曲みたいに、ベースとボーカルだけになっているんだよ。

──以前ナオトさんはTikTokで、Rin音さんの「snow jam」をアカペラでカバーしていました。これがコラボ実現のきっかけになったと思うのですが、Rin音さんとは直接お会いしましたか?

実はRin音くんとはまだ会っていないのよ。「EQ」を作っていたとき、若手のラッパーに歌ってもらいたいと思っていろいろ聴いていたら、Rin音くんの声にキャッチーなものを感じたんだよね。ダメ元でオファーしたらすぐにボーカルトラックを用意してくれたんだけど、それがもう、よすぎて。「もっと聴きたいんだけど!」という話になって、予定よりも倍の尺を使っちゃった(笑)。大変なことをお願いしちゃったけど、聴き直してみても、やっぱり増やしてよかった。曲の世界観が一気に広がって何回も聴きたくなったよ。ティライミの声だけだと飽きちゃう(笑)。

──いえいえ(笑)。全体の構成を見てみると、ナオトさんのパートとRin音さんのパートがはっきりと分かれていて、フィーチャリングゲストがいる曲ならではの聴き応えがありました。

そう言ってもらえるとうれしいね。もともとはRin音くんのボーカルだけだったけど、ティライミの声を重ねて強調した部分もあるし、そのおかげで違和感なく馴染んだと思う。フィーチャリングものってうまく混ざらないと、分離して聞こえちゃうよね? それじゃダメだから、自然に馴染むよう気を付けたよ。

──楽曲のタイトル「EQ」は音質を補正するイコライザーを指しますが、歌詞にはその意味を含むワードは入っていませんでした。このタイトルの由来はなんでしょう?

まさに「EQ」はイコライザーという意味だけど、他人の感情を感じ取ったり、自分の気持ちをコントロールする心の知能指数のことも「EQ」と言うんだよ。なぜ「今会いに行かないといけない」という状況になったのか考えると、おそらくこの主人公は恋人といろんなすれ違いがあったわけで。つまり恋人の思いを感じ取れていなかったことを後悔している。イコライザーに例えると、自分のEQと相手のEQ、どちらも心地いい状態になっていないと、きれいな音は奏でられない。それをもっと調整できればよかった……という曲になるね。

ナオト・インティライミ
ナオト・インティライミ

夏ツアーの頃には、ものすごい脂が乗ってるかもね

──1月から3月にかけて配信された曲には、いずれもゲストが参加しています。今後発表される曲ではどんなサプライズがあるのか楽しみです。

1カ月に1曲と言ってるけど、3週間に1曲のペースになりそうなんだよ(笑)。

──もっと間隔が短くなる(笑)。ナオトさんは過去のインタビューでも「曲のアイデアがどんどん湧いちゃう」とお話していたので、配信になるとどれぐらいのペースになるのか気になっていたんです。

配信だと完成した曲をすぐリリースできるのはありがたいね。1月から3月までにリリースした曲はある程度トーンをそろえたけど、次の曲からは全然違うものになると思う。ただ、料理に例えると「和食、洋食、あとイタリアンもあります」と言ってるけど、どの曲もティライミらしさは残してる。いろんなジャンルを行き来しつつ、自分のアイデンティティはしっかり盛り込んでいきます。連続配信リリースでは、そのあたりを存分に楽しんでいただけるんじゃないかな。

ナオト・インティライミ
ナオト・インティライミ

──夏からは全国ツアーも始まりますが、どんな内容になりそうですか?

そういえば夏にツアーをやったことがなかったんだよね。夏は“オマットゥリ”をするには最高のシーズンだし、ツアーが始まる頃にはおそらくお客さんも声出しができるようになると思うから、3年間我慢した鬱憤がようやく晴らせるんじゃないかな。それから今年は、海外での活動も本格的に再開する。そんな中で新曲もリリースしているんだから、夏のツアーが始まる頃にはものすごい脂が乗ってるかもね。

──ある程度コロナが落ち着いてきたら、世界旅行も再開できそうですし。

実は年明けからひさしぶりにバックパッカーとして旅に出ていたんだよ。タイ、ラオス、カンボジア、ネパールに行ったんだけど、ゲストハウスのドミトリーに入ったり、ほかの旅人と一緒に寝泊まりするのもひさびさだった。旅人としての感覚もよみがえってきたから、あとはアンコールワットを訪れて、現地の音楽に触れることができたら完璧だね。感性をフレッシュにして、新たなスタートが切れそうだよ。

ナオト・インティライミ

ライブ情報

ナオト・インティライミ LIVE TOUR 2023 SUMMER

  • 2023年7月22日(土)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
  • 2023年7月28日(金)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2023年7月29日(土)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2023年8月5日(土)新潟県 新潟テルサ
  • 2023年8月10日(木)大阪府 オリックス劇場
  • 2023年8月11日(金・祝)岡山県 倉敷市民会館
  • 2023年8月13日(日)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2023年8月18日(金)千葉県 野田ガスホール(野田市文化会館)
  • 2023年8月19日(土)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
  • 2023年8月26日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
  • 2023年8月27日(日)神奈川県 神奈川県民ホール 大ホール
  • 2023年9月1日(金)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

ナオト・インティライミ

三重県生まれ、千葉県育ち。これまでに世界70カ国を1人で渡り歩き、各地でライブや楽曲制作を実施するなど、世界の音楽と文化を体感しながら活動を行っている。2009年にサポートメンバーとしてMr.Childrenのツアーに同行したのち、2010年4月にナオト・インティライミ名義でのメジャーデビューシングル「カーニバる?」をリリース。同年7月には1stアルバム「Shall we travel??」を発表し、12月には東京・日本武道館公演を開催した。その後、「NHK紅白歌合戦」出演を果たし、大阪・京セラドーム大阪でのライブ、全国アリーナツアーを実現させるが、2017年1月に自分の原点に立ち返るため、世界を回る旅に出ることを宣言。約半年間の旅を経て7月10日開催の「ナオトの日」ライブで日本での活動を再開させた。2019年9月にはジョーイ・モンタナとのコラボ曲「El Japonés」で世界デビュー。2022年11月には8枚目のオリジナルアルバム「虹色∞オクターブ」を発表し、2023年1月からは毎月配信シングルをリリースしている。