計算ができない時期の曲

——アルバム収録曲には古いものもありますけど、曲を並べたときに自分の成長を感じたりしましたか？

歌詞ではあまり感じないですね。好きなものはあんまり変わらないですからね、うん。

——歌については？

歌はもう全然成長を感じます。最初の頃のは声も若いし。

——この中では「HEAVEN ON EARTH」が一番初期の曲ですね。

これをやれたことでだいぶ変わりましたよね、私の音楽人生が。

——それはどのように？

なんかこういう、今言うとKATEっぽいというか、なんて言うんだろうな。ちょっと尖った、普通のJ-POPじゃない曲っていうか。そういうものをこの曲のおかげでできるようになったんじゃないかな。

——紅白歌合戦では歌わないような曲。

そうですね、うん。

——じゃあ「HEAVEN ON EARTH」のときに「こういう自分もありなんだ」って気づいた部分はあります？

そうですね。このときは何もわかんないし、知らない時期だから。でもだからこそ雑念がまったくなくて。単純に好きで、この曲を歌いたいっていう気持ちだけでこの曲を選んだんだと思う。

——自分に合うかどうかもわからないし、できるかどうかもわからないまま。

うん、わかんない。計算ができない時期だったんです。

——そういう意味で言えば、例えば「Love Addict」も当時の中島さんの新しい一面を見せた曲だったと思うんですが、これもKATEの曲ですもんね。

そうですね。KATEにそういうきっかけをもらうことは多いです。「FAKE」とかもそうですけど。

——「FAKE」はどのあたりが？

なんか、ここまでゆったりしたジャズっていうのはやっぱり珍しいですよね。でもKATEのスタッフさんはこの曲をすごく喜んでくれたんです。だから、うん、楽しかったですね。

——でももしかしたらこういう尖った部分を集めたアルバムは、テレビでバラードを歌う中島美嘉が好きな人にとっては意外に感じるかもしれませんね。

はい。

——そのあたりはどう思われてもいいやっていう感じ？

はい。

——そういう人もこのアルバムを好きになってくれますかね。

どうでしょうかねえ。まあ人それぞれ好き嫌いありますからね。

——あ、それでいいんですね（笑）。

うん。

簡単な生活を歌詞にしたい

——作詞についてもう少し伺いたいんですが、普段自由なテーマで詞を書くときに、今の中島さんが書きたいこと、興味のあるものって何ですか？

うーん、今はね、簡単なことが書きたいです。みんなが経験したことがあるような、簡単な生活みたいな。

——例えば？

恋愛でも好きな人から電話が来なくてもやもやする、みたいな。そういうの「知らねーよ」って思ってたんだけど（笑）、でもそういうことを思う人が多いんなら書いてみようかな、とか。なんかみんなが1回は経験したことあるような、そういう普通のことを書きたいのかもしれない。

——なるほど。自分で書いた歌詞と他の人が書いた歌詞では、歌うときの気持ちは違いますか？

あんまり変わらないですね。

——他人が書いた歌詞でも、自分と重ね合わせられる部分があるということでしょうか？

うん、きっとどこか見つけますね。そういうとこ。

——逆に言うと共感できる部分がないと歌えなかったり？

そんなこともないです。あの、私はたぶん、いちいち納得するんだと思います。それがどんな歌詞でも「こういう人もいるんだ」って思えるから。

くだらないことを真剣にやるのが好き

——KATEのCMは毎回凝った映像が楽しみなんですが、中島さん自身、演技をしてるという感覚なんでしょうか？

演技っていうのではないですね。

——じゃあモデル的な？

うん。モデルとかマネキンっていう感覚が一番近いです。

——プロモーションビデオもモデル的な意識でやっているんですか？

そうですね。でもPVは音楽を表現するための1つの手段なので、純粋にモデルっていうのとも違うんですけど。

——PVの内容には、中島さんの好みも反映されてるんでしょうか？

はい。今回の「GAME」はけっこう全体的に言いましたね。テーマとかも。なんかね、くだらないことを真剣にやっているのが好きなんですよ。あれは結局リアルシューティングゲームみたいな話なので、あれを普通にピストルにしちゃったり、剣にしちゃうと全然面白くないんです。あの銃にコードが付いてるから面白いわけで。（※PVでは2人の中島美嘉が未来的なデザインの銃で撃ち合いをする場面がある）

——なるほど（笑）。

だからそれを真剣にやってる大人っていうのがいいんですって、スタッフに伝えて。手に持ってるものはとにかく真剣なものじゃないものにしてくださいってお話はしました。

——面白いですね。今回のPVはいきなり中島さんが2人になって戦う、という設定ですがそこに何の説明もないですし。理屈は全然わからないけど、なんだかかっこいいんですよね。

そうかも（笑）。ありがとうございます。