中島美嘉アルバム「STAGE -THE MUSICAL IN MY HEAD-」インタビュー|マチネとソワレで描く2つの世界

中島美嘉がニューアルバム「STAGE -THE MUSICAL IN MY HEAD-」をリリースした。

前作「I」から約3年半ぶりのフルアルバムとなる本作は、タイトル通り“ミュージカル”がコンセプト。「Matinee(マチネ)盤」と「Soiree(ソワレ)盤」と銘打たれたCD2枚組の仕様で、既発曲を中心とした表舞台と、新曲を軸に据えた裏舞台という対照的な世界観が表現されている。音楽ナタリーはアルバムのリリースにあわせて中島にインタビュー。近年精力的に行っている海外公演でのエピソードや、新曲を多数収めた「ソワレ盤」の制作秘話を中心に話を聞いた。

取材・文 / 森朋之撮影 / 笹原清明

自然と変わってきた“ライブへの向き合い方”

──3年半ぶりのフルアルバム「STAGE -THE MUSICAL IN MY HEAD-」が完成しました。この3年半はシングルのリリースを続けながら、香港、韓国、台湾などで精力的にライブ活動を展開してきましたよね。中島さんにとって、海外ライブの魅力とは?

海外でのライブを始めたのはデビューから20年以上経ってからなので、皆さん、すごく喜んでくれて。ライブ中の反応もすごく大きいし、ファンの方とダイレクトにつながれる感じがありますね。あと、セットリストも日本でのライブとは少し変えているんですよ。海外のファンの方は「雪の華」で私のことを知ってくれた方が多いので、それ以前の曲はあまり知らない方が多くて。「STARS」(2001年リリース)や「WILL」(2002年リリース)を歌っても、「なんていう曲だろう?」みたいな反応になることがあるんです。日本でその頃の曲をやると「ひさしぶりに聴いた!」という空気になるので、そこはけっこう違うのかなと。国や地域によって好みの曲も少しずつ違うみたいなので、現地の主催の方にあらかじめリサーチしていただくようにしています。

──韓国のバラエティ番組「日韓トップテンショー」に出演するなど、メディアへの露出も増えていますよね。

「日韓トップテンショー」はすごく楽しかったですね。もともと韓国のドラマやバラエティはよく観ていたし、ほかの出演者の方の歌を聴けるのも楽しみで。スタッフの方は「収録が長いけど大丈夫ですか?」と心配してくれたんですけど、全然長く感じなかったです。

──国内でも、ファンからリクエストを募ったツアーや、ピアノとコントラバスの編成によるプレミアムライブを開催してきました。ライブに対する思いが以前より強くなっているのでは?

そうですね。ただ、昔ほどではないですけど、やっぱりライブの前はナーバスになるんです。もともと不安症だし、どうしても緊張しちゃって。準備のためにやらなくちゃいけないことも増えているので。年齢も重ねているし、来年、どれくらい体力があるかはわからないじゃないですか(笑)。ライブの制作に入るとずっとそのことを考えているし、体と気持ちを切り替えながら臨んでいるので、ライブへの向き合い方も自然と変わってきている。必死です(笑)。

中島美嘉

中島美嘉の脳内ミュージカル

──では、アルバム「STAGE -THE MUSICAL IN MY HEAD-」について聞かせてください。本作はCD2枚組で、DISC 1「マチネ盤」、DISC 2「ソワレ盤」というミュージカル様式のコンセプトを軸に“舞台と裏舞台”“陽と陰”の対照的な世界を描いた作品です。

この形式については、以前からスタッフに「こういうことをやりたい」と言っていたんです。シングルのA面、B面で言うと、DISC 1がA面で、DISC 2がB面。A面は皆さんに知ってもらってる曲が中心で、B面のほうが本当の自分を表現しやすかったり、制限なく歌詞を書けることが多かったりして。「その両面をしっかり分けてアルバムを作る」ということを以前からやってみたかったんです。

──その発想がミュージカルというコンセプトにつながった、と。

それはプロデューサーが何気なく言った言葉がもとになっていて。話が前作の「I」まで戻るんですけど、「ソワレ」に入ってる曲は、「I」の制作のときに作っていたんですよ。COLDFEET(WatusiとLori Fineによる音楽ユニット)にデモ音源を作ってもらって、私が好きな曲たちを録っていて。もちろんすごく気に入っていたんですけど、プロデューサーに「ちょっと美嘉ちゃんの脳内ミュージカルすぎるかもね」と言われて。

──脳内ミュージカルというのは?

自分で歌詞を書くときは、頭の中で映像を思い浮かべて、そこにいる人たちを動かしながら書いてるんですよ。私の中ではすべて映像ができあがっているけど、曲を聴いている人にはそれが見えていないから、歌詞が伝わりづらいことがあって。そのことを「脳内ミュージカル」と言われたんです。その言葉を聞いたときに「そうか、この映像は私にしか見えてないのか」って(笑)。それからいろいろあって、結局「I」は私が全曲の作詞作曲をすることになり、COLDFEETに作ってもらった曲はアルバムに入らなかったんですよ。もちろん大好きな曲ばかりだから、絶対まとまった作品にしたいなと思っていて。今回アルバムを作るときに「脳内ミュージカル」という言葉を思い出して、だったらミュージカルをコンセプトにして2つに分けたらどうだろう?と。最初はタイトルも「脳内ミュージカル」がいいなと思っていたぐらいで(笑)。ただ、海外のリスナーにわかりづらいということで、「STAGE -THE MUSICAL IN MY HEAD-」になりました。

「STAGE -THE MUSICAL IN MY HEAD-」初回限定盤ジャケット

「STAGE -THE MUSICAL IN MY HEAD-」初回限定盤ジャケット

──なるほど。アルバムの「マチネ盤」には「SYMPHONIA」(アニメ「takt op.Destiny」エンディングテーマ)、ドラァグクイーンのル・ポール・アンドレ・チャールズへのリスペクトを込めた「We are all stars」、「UNFAIR」(アニメ「デリコズ・ナーサリー」オープニングテーマ)、「MISSION」(アニメ「め組の大吾 救国のオレンジ」第2クールエンディング主題歌」)などのシングル表題曲が収録されています。クラシカルなバラードからEDMまで、幅広い楽曲がそろっていますね。

本当にジャンルは関係なくなってるかもしれないですね。デビューしたときからいろんな曲を歌ってきたから、常に新しいことをやるのが当たり前になっていて。以前は「これは私らしいかな? 大丈夫?」と思うこともあったけど、チャレンジし続けるうちに自然と幅が広がってきたんじゃないかな。

中島美嘉

──しかもボーカリストとしてのスキルが求められる曲が多いですよね。

曲を作ってくださる方が、「中島美嘉なら歌えるはず」と勘違いなさってるんじゃないかな(笑)。スッと歌える曲は少ないし、いつも時間をかけてレコーディングしています。「SYMPHONIA」なんて、どれほど苦労したかわからないです(笑)。もちろんすごくいい曲だし、がんばって歌ってますけどね。

──そして「ソワレ盤」は、8曲のうち7曲が“作詞:中島美嘉、作曲:Lori Fine(COLDFEET)”による楽曲。カッコいい曲ばかりですね!

そう、カッコいいんですよ。「あまのじゃく」は私が作曲したんですけど、それ以外は全部Loriに書いてもらって、COLDFEETにデモをお願いしました。COLDFEETの曲だけで1枚のCDにしたのは初めてですね。

──COLDFEETはこれまでにも「FIND THE WAY」「ALL HANDS TOGETHER」などを手がけています。中島さんにとって、COLDFEETの魅力はどのあたりにありますか?

いろんな方と仕事をしてきたし、皆さんすごいと思っているけど、COLDFEETほど私自身になりきって曲を作ってくれる人たちはいなくて。作曲はLoriなんですけど、彼女とは「こんな曲がいい」みたいな話をほとんどしないんですよ。打ち合わせでもただおしゃべりして帰っていくんですけど、しばらくすると「まさに私が感じていたことだ」という曲が送られてくる。いつもすごいなって思っているし、大好きですね。デモ音源のクオリティもめちゃくちゃ高い。Loriの仮歌も素晴らしいし、アレンジを含めて仕上がった状態で送ってくれるので、その時点で感動しています。歌詞のイメージも湧きやすいです。