中島愛|デビュー10周年の第一歩

歳下のアーティスト・シンリズムとのレコーディング

──楽曲制作にあたり、中島さんからシンリズムさんにはどんなリクエストを?

カップリングの「ポラリス」も含めて、シンリズムさんの感性にお任せしました。私から「こういうふうに歌いたい」と細かく指示することはなく、「かくりよの宿飯」の世界観をベースにシンリズムさんの描きたいことを書いてほしいなと思っていたら、素晴らしい歌詞とメロディの2曲が届いたので、そのまま歌わせていただいた形です。

──レコーディングはいかがでしたか?

中島愛

ボーカルのディレクションは佐々木史朗さん(FlyingDogの制作ディレクター)がしてくれて、シンリズムさんには歌入れあとの音源をチェックしてもらいました。「イメージと違うところがあったら歌い直すので言ってくださいね」と伝えたんですけど、恐縮されていたのか「素晴らしいです!」みたいな感じで。「知らない気持ち」ではシンリズムさんにユニゾンでサビを歌ってもらっているんですけど、その歌入れを逆に私が見学させてもらいました。私がキューボックスを押して「すごくよかったです!」とか感想を伝えて、シンリズムさんから「はい!」って返事が来るみたいな(笑)。

──年齢や経験を重ねたからこそのものなのか、中島さんの歌声がさらに説得力を増しているように感じました。

ありがとうございます。今回のシングルは自分らしさを突き詰めて行く方向にシフトした第一歩なんですけど、ボーカルがアップデートされていないと単に自分らしさの焼き直しになってしまうので、新しい歌い方をレコーディングでたくさん試しました。「知らない気持ち」はアニメとのタイアップで、ひとりごちる感じというか、相手へ気持ちを伝えようか、伝えまいかという迷いが出ている作品だったんですけど、「ポラリス」はもっとみずみずしくて……なんだろうな、大人の世界から一歩はみ出してもいい作品だったから、青春っぽい雰囲気で歌えて気持ちよかったです。

──「知らない気持ち」と「ポラリス」は、どちらもこれまでの活動をきちんと踏まえつつ次の一歩へと進んだ中島さんのキャリアの積み重ねを感じました。その一歩を支えているのがフレッシュな存在のシンリズムさんというのもまた味わい深くて。

中島愛

今回はシンリズムさんの深い音楽知識に助けられた部分が大きいです。スタジオではよく五十代のディレクターとシンリズムさんが同じテンションで1970~80年代の音楽の話をしているのを見かけました。私もその時代の音楽は単純に好きで楽しんでいますが、彼の場合は音楽の知識が達観した感じとか引き出しの多さにつながっている。シンリズムさんは若いですけど教えられることがとても多かったです。しかも声がいいんですよね。私の声はバラードでも子音が立ちすぎると言うか、どうしても強さが出ちゃうところがあるんですけど、「知らない気持ち」ではシンリズムさんとのユニゾンになったことでまろやかさが出た。シンガーとしても助けられたので、参加してもらって本当によかったです。作家さんとしては今回の作風以外にもいろいろなバリエーションを持っていらっしゃると思うので、キラキラポップス系もいつか書いてほしいですね。

6年越しの夢が叶った「Bitter Sweet Harmony」

──「すのはら盤」の1曲目に収録された「Bitter Sweet Harmony」の作詞作曲および編曲はkz(livetune)さんが手がけています。アニメのオープニングテーマということもあってか、今回の4曲の中では飛び抜けてポップな曲ですね。こちらはどういった経緯でkzさんに依頼したんでしょうか?

「Transfer」(2012年に発売されたlivetuneの楽曲)に参加させてもらったときからkzさんに曲を書いてもらいたいなと思っていたんです。それが今回、6年越しに夢が叶いました。とてもポップで甘い曲を作ってもらえました。

──kzさんは作風に振り幅があるので、新曲がkzさんの楽曲提供だと聞いたときは「どのパターンで来るのかな」と思いました。

中島愛

私もデモテープが来るまでそう思っていました(笑)。「すのはら荘の管理人さん」に登場する中学生の椎名亜樹くんは背伸びして大人になろうとしているけど、なりきれないような子で。そんな彼の姿を“Bitter Sweet”という言葉で表現するkzさんのセンスにビビっときましたね。

──歌詞やタイトルも含めてkzさんにお任せしたんですね。

トータルでお願いしました。アニメのイメージを詰め込んでもらっています。この曲は歌のディレクションもkzさんがしてくださいました。明るくて元気な曲を歌うときってキャピキャピしたくなるんですけど、物語に出てくる管理人の春原彩花さんが持っている包容力も表現すべきだと思ったので、キャピキャピは違うなと。でも明るくて甘い曲なので、年齢感は二十代半ばだとしてもかわいいほうがいいし、一体どうしたら……と迷って。結局kzさんに迷っていることを正直に伝えて、「今のは若かったかも」「ジャストです!」と細かくジャッジしてもらいながら歌いました。

──キャピキャピしすぎず、落ち着きすぎずという線を狙って。

私はついつい、しゃくりたくなるんですよね。「ここでしゃくりを入れられる」というポイントをすごく探したくなるんですよ。でも多用しすぎるのは違うなと思ったので、大人な雰囲気に抑える作業をkzさんに手伝ってもらいました。

人生観を込めて歌った「悲しみと共に」

──「すのはら盤」のみ収録のカップリング曲「悲しみと共に」は作詞が岩里祐穂さん、作曲がH ZETT Mさんで、グッと大人びた楽曲ですね。

中島愛

「悲しみと共に」はテレビアニメ「重神機パンドーラ」第9話の挿入歌という形でピンポイントでオファーされた曲で、今回の4曲の中で最初にレコーディングしたんです。「Curiosity」とほぼ同時進行で作っていた曲ですね。今回のシングルの中でも特に作品のシーンに寄り添った曲で、シンガーとして参加させてもらうという感覚でした。復帰後は私の中で「大人になろう」というキャンペーンを続けてきたんですけど、今の年齢でここまで踏み込んだ歌詞とジャジーな曲をいただけるとは思ってなかったんですよね。こういう曲は三十代後半とか、もっと人生経験を増やしてから出会えると思っていたので。

──中島さんの「大人になろう」という思いは歌詞にも落とし込まれているのでしょうか。

いえ、この曲は完成した状態でいただいたので、岩里さんと直接お会いして話を聞いたわけじゃないんです。だからこそ「悲しみと共に」というタイトルと歌詞を自分なりに解釈できるようにしっかりと考えて……歌詞は少ない文字数で人生の真理を突くようなものだったので、ドキッとしましたね。私はここまで達観してるわけじゃないですけど、この歌詞にあるあきらめの気持ちがわかる気がすると言うか。こんなにも人生観を込めて歌うのは初めてだったので、レコーディングも今までとは違う感覚がありました。歌手冥利に尽きる曲ですね。

中島愛「知らない気持ち / Bitter Sweet Harmony」
2018年8月1日発売 / FlyingDog
中島愛「知らない気持ち / Bitter Sweet Harmony」かくりよ盤

かくりよ盤 [CD]
1404円 / VTCL-35284

Amazon.co.jp

中島愛「知らない気持ち / Bitter Sweet Harmony」すのはら盤

すのはら盤 [CD]
1404円 / VTCL-35285

Amazon.co.jp

かくりよ盤収録曲
  1. 知らない気持ち[作詞・作曲:シンリズム / 編曲:シンリズム、高野勲]
  2. Bitter Sweet Harmony[作詞・作曲・編曲:kz(livetune)]
  3. ポラリス[作詞・作曲:シンリズム / 編曲:シンリズム、高野勲]
  4. 知らない気持ち -Instrumental-
  5. Bitter Sweet Harmony -Instrumental-
  6. ポラリス -Instrumental-
すのはら盤収録曲
  1. Bitter Sweet Harmony[作詞・作曲・編曲:kz(livetune)]
  2. 知らない気持ち[作詞・作曲:シンリズム / 編曲:シンリズム、高野勲]
  3. 悲しみと共に[作詞:岩里祐穂 / 作曲:H ZETT M / 編曲:H ZETTRIO]
  4. Bitter Sweet Harmony -Instrumental-
  5. 知らない気持ち -Instrumental-
  6. 悲しみと共に -Instrumental-
中島愛(ナカジマメグミ)
中島愛
6月5日生まれ、ふたご座のA型。アニメ「マクロスF(フロンティア)」のヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島 愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビューを果たす。2014年3月より音楽活動を休止していたが、2016年12月に活動再開し、2017年2月には復帰第1弾となるシングル「ワタシノセカイ」、10月には復帰第2弾シングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」をリリース。2018年2月には通算4枚目となるオリジナルアルバム「Curiosity」を発表し、3月末から4月にかけて東名阪3都市を回るライブツアー「Megumi Nakajima Live Tour 2018 "Curiosity of Love"」を実施した。2018年8月1日にニューシングル「知らない気持ち / Bitter Sweet Harmony(かくりよ盤)」「Bitter Sweet Harmony / 知らない気持ち(すのはら盤)」をリリースした。