向井太一|人々の支えになる音楽

一番やりたいことを表現できた2曲

向井太一

──またクールと言えば、「Don't Lie」にはアザド・ナフィシーさんとウィリアム・レオンさんという海外プロデューサーが参加されています。現代のチルR&Bの雰囲気を感じる楽曲ですよね。

彼らが制作に携わったEmotional Orangesの楽曲が好きだったし、そのトラックは絶対に日本語にマッチすると以前から思っていたんです。だからスタッフの方から「誰と曲作りをしたい?」と聞かれたときに2人の名前を出して、コンタクトを取ったところ、ちょうど来日しているタイミングで。それで即スタジオに入りました。

──彼らとのセッションはいかがでしたか?

自由にさせてくださったというか。自分のアイデアや意見を尊重してくださり、とてもスムースに進行しましたね。また完成した楽曲も、日本語にフィットする仕上がりでしたし。

──ボーカルも印象的ですよね。感情を抑えているというか、今までとは異なる声に感じました。

確かに、キーがほかの楽曲よりも低めですね。またオートチューンも薄く入れているので、ひと味違ったボーカルの雰囲気を感じてもらえるのではないでしょうか。

──オートチューンは「悲しまない」でも使用されていますね。

そうですね。この楽曲も、純粋に自分の好きな音楽を追求した感じです。アルバムの中で、音楽的に一番やりたいことを表現できたのは、「Don't Lie」と「悲しまない」だと思いますね。

どんな色を重ねても自分でいられる

──別れをにじませた「Bed」はとても官能的ですね。

grooveman Spotさんと一緒に作る楽曲は、なぜか失恋とか、報われない愛を描いたものが多くて。だから自分の中で、切ない曲担当はgrooveman Spotさんだと勝手に位置付けています(笑)。今回もそういうイメージの楽曲をお願いしました。

向井太一

──そして本編ラストを飾るのは、タイトル曲のバラード「Colorless」です。制作背景にはどんな思いがありましたか?

デビューして以降、さまざまなサウンド要素を取り入れた楽曲を発表してきていて、音楽以外でも写真やファッションのスタイリング、そしてSNSでの発信など、自分自身が選んだ活動をしてきました。すべてのことが、自分の音楽活動にいい影響を与えるものだと信じて。だから、いろんな“色”をまとった向井太一という印象を持たれている人もいるかもしれません。でも、実はコアな部分は無色透明で、そこさえブレずにいたら上にどんな色を重ねても、自分でいられるんだなって感じるようになったんです。そんな気持ちを楽曲に表現できればと思って。

──なるほど。

“自己愛”が生まれたというか。いいところはもちろん、苦しみや迷いなどネガティブな部分も自分を形成するうえで大切な要素。つまり、たくさんの感情を抱えているからこそ、自分が存在しているということに気付いたんですよね。その話を百田さんにお伝えして、思いをさらに引き立ててくれるような音に仕上げていただきました。メロディに関しても、自分では表現できなかった展開で、新たな表現の引き出しを増やしていただけたなと感じました。

──ネガティブな部分も認めながら、明日へと力強く歩んでいこうとする姿勢。それはボーカルからも感じとることができました。最後は圧倒されるくらいのエネルギーを発していますよね。

ボーカルは、とても難しかったです(笑)。コロナの影響もあり、声を出す機会が減ってしまったので、当初は思い通りに歌えなかったんです。でもじっくり時間をかけて、最終的には納得のいく声を収録できました。最近は歌う機会が増えたので、ようやく自然に声を出せるようになりましたが。

──この楽曲のミュージックビデオは、どんな仕上がりなのですか?

僕にとって初のドラマ仕立ての作品になっています。初演技ということもあって、撮影の1週間前から胃が痛かった記憶がありますね(笑)。台本もしっかりあって、しかも泣く演技や、実際にビデオでは流れませんが10分近くにわたる長セリフもあったりしたので。心が押しつぶされそうになりながら、撮影に臨みました。ここで新たな“色”のついた向井太一を感じていただけたら。

──これをきっかけに俳優業に挑戦も?

そうですね。お話をいただけたら検討いたします(笑)。デビュー当時は演技なんて絶対しないと思っていたんですけどね。ほかにも2021年にはYouTubeチャンネル「むかチャン」をスタートさせましたし、今後もいろんなことに挑戦する、アクティブな1年にできたらと思います。

溜め込んできたものをすべて見せる

──「むかチャン」は面白いですね。音楽だけではわからない向井さんの素顔を拝見できたり、「なるほど」と思える情報もあったりして。

当初は自分のこと、音楽を知っていただくためのものとしてスタートさせたのですが、やっていくうちに僕自身も楽しくなってきていまして。これからも、幅広く皆さんに楽しんでいただけるコンテンツを提供していきたいと思います(参照:「むかチャン」再生リスト)。

──ビジュアルと言えば、アルバムのアートワークも印象的ですね。強い意思を感じる視線に釘付けになってしまいました。

色彩を全面に押し出しつつ、何か考えさせられるアートワークにしたいと考えました。顔をアップにすることで、僕の意思を感じていただけるのではないでしょうか。

向井太一

──また、CD盤にはボーナストラックとして「We Are」が収録されていますね。ピアノのシンプルな音色に乗せて、向井さんの思いがストレートに心に響いてきました。

これはファンの皆さんのことを考えて作ったというか、会えない時間が長くて、そこで感じたことを楽曲にしました。この1年があったからこそ伝えられる音楽になっていると思います。

──さらに、初回生産限定盤に付属するBlu-rayには、本作収録曲のライブ映像が収録されています。

ライブが思うようにできなかったので、何かスペシャルなパフォーマンスを届けたいと思いまして、収録しました。オリジナルとは異なる特別な音色を楽しんでいただけたら。

──6月には待望のワンマンツアー「COLORLESS TOUR 2021」が開催予定ですね。

1年以上ぶりの有観客ライブになりますので、これまで溜め込んできたものをすべてお見せできるようなステージにしたいですね。

──引き続き、以前のように自由な雰囲気や空間で音楽を満喫できる状況にはならない可能性もあります。その環境下において、「COLORLESS」がリスナーにとってどんな作品になってくれたらいいと思いますか?

この1年、皆さんの心も大きく揺れ動いたのではないかと思います。たくさん考えたり、落ち込んだりした方もいらっしゃったのではないでしょうか。そういう方々の隣でゆっくりと一緒に一歩を踏み出していけるような作品になれば。僕自身、多くの人に支えられてここまで来ることができたので、今度は音楽を通じて多くの人を支えることができたらと思っています。

ライブ情報

COLORLESS TOUR 2021
  • 2021年6月3日(木) 大阪府 なんばHatch OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2021年6月5日(土) 東京都 Zepp DiverCity(TOKYO) OPEN 17:00 / START 18:00
向井太一