「MUCC 25th Anniversary TOUR」開催記念インタビュー|結成25周年の“最終章”へ向かう逹瑯、ミヤ、YUKKEの思い

MUCCが結成25周年を記念して行っている過去アルバムの再現ツアー「Timeless」。このツアーのラストを飾る第4弾公演が10月1日にスタートする。

「Timeless」はMUCCが約1年前の2023年10月より開催しているツアーで、第4弾の軸となるのは2010年リリースの「カルマ」と2012年リリースの「シャングリラ」だ。音楽ナタリーでは、一連の再現ツアーに合わせてメンバーのソロインタビューを展開してきたが、最終回となる今回はMUCC全員に取材。「Timeless」の感触、「カルマ」「シャングリラ」リリース時の心境、そして12月に控えているアニバーサリーライブ「MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to『Timeless』&『WORLD』」に向けての意気込みを聞いた。

取材・文 / 樋口靖幸(音楽と人)

新曲が鍵を握っていた再現ツアー

──本題に入る前に、ここまでの再現ツアーを振り返ってみてどうですか。

逹瑯(Vo) ……最初の「是空」「朽木の灯」ツアーはめちゃめちゃ昔な気がするな。

YUKKE(B) 最近気付いたんですけど、俺、この再現ツアーが始まってから誕生日を2回迎えることになるんですよ(YUKKEの誕生日は11月5日)。第1弾のツアー中に神戸で誕生日を迎えて、今回のツアーの名古屋公演でまた迎えるという。それで1年以上このツアーをやってることを実感しました。

逹瑯 ここまでやってきて思うのは、ただ昔を振り返るだけのツアーじゃなくてよかったなってことで。ツアーごとに新曲も披露したじゃないですか。あれがあるのとないのとでは全然違うというか、新曲をセットリストに入れたことがよかった。もちろん曲を作るのはすごい大変で、ツアーの合間の1カ月くらいで作らなきゃいけないんだけど、それでも新曲をやれたことが大きかった。

逹瑯(Vo)

逹瑯(Vo)

YUKKE そういえば最初のツアーは準備が大変だったかもしれない。サポートのAllenもイチから曲を覚えなきゃいけなかったし。

逹瑯 でもツアーやるたびにどんどんリハの効率もよくなっていった。

ミヤ(G) 今までのツアー3本とも新曲が一番いい。その時代の古い曲と混ぜてやることを踏まえて作ったから当然なんだけど、ツアーの中で一番映える曲になってるのがよかったなって。あと、どのライブも当時できなかったことがちゃんとできるようになってることも。ボーカル面は特にそう。

──3本のツアーの中で思い出深いライブや、印象的だった会場はありますか?

逹瑯 野音(日比谷野外大音楽堂)って来年改装されちゃうんでしょ? だから改装前にやれたのはよかったかな。あと逆にZepp Shinjukuとか、浅草のライブハウス(浅草花劇場)とか、これだけ長くやってて初めてライブをした会場もあって。別れもあれば出会いもある感じ。

ミヤ そういえば新宿BLAZEもなくなっちゃうし。なくなる前にそこでDEZERTとツーマンライブをするんですよ。

──私は浅草の初日公演を観に行きましたが、アットホームな会場の雰囲気がとてもよかったです。

逹瑯 あそこはめちゃめちゃよかったですね。会場だけじゃなくて立地そのものがワクワクする場所で。なんたって花やしきの中にあるっていうことに、俺らもワクワクしたし、お客さんもそうだったと思う。

YUKKE 屋上から遊園地が見渡せるのもよかった(笑)。

──あとは会場の並びにある「ドムドムバーガー」を取材しに来ていたニュース番組から、偶然リーダーが取材を受けるという事件もありました(笑)。

ミヤ あればミラクルだったね。別にテレビに映りたくて買いに行ったわけじゃないんだけど。

──前日のライブのMCで「ドムドムバーガー」にまつわる思い出を話してたじゃないですか。しかも「明日はライブ前に食べるつもり」と言ってて。そしたら次の日のニュース番組で、普通のお客さんとしてコメントしてるリーダーが出てた。

ミヤ 初日は食べられなかったんで、2日目は会場入りする前に「ドムドム」を朝ごはんにするって決めてたんですよ。で、店で注文してたら、カメラを持った女の人がずっとこっち見てるんで「なんですか?」って聞いたら「取材していいですか?」と。

ミヤ(G)

ミヤ(G)

YUKKE すごくないですか? ウチのリーダー。1日目で言ったことをちゃんと2日目で実行するだけじゃなく、予想外の結果まで残すという(笑)。

本当はこういうことがやりたかったんだ

──ツアーを重ねていく中で、コロナ禍で敷かれていた規制が解かれていったことも印象に残っているのでは?

逹瑯 お客さんの声が聞けるようになったのはすごくよかったですね。ひさびさに聞いたときはめちゃめちゃ感動して。でもしばらく声がない状態でライブをするのが当たり前になってた分、慣れるのに時間がかかった。今はもうすっかり声がもらえることに慣れちゃって、それはそれで寂しいというか、ありがたみが薄れちゃうんですよね。

YUKKE やっぱりお客さんの声が聞けるようになったのは、ツアー中でうれしかったことの1つですね。でもツアーが始まった頃の映像を見返すと、MCとかもずっと1人でしゃべってて、それにすっかり慣れてる自分がいるんですよ。

ミヤ もちろん声はもらえたほうがうれしいし、それでステージの雰囲気が変わったところもあるけど、俺はそこまで動じなかったです。

──どのツアーでも過去の曲が今のMUCC仕様にアップデートされている印象でしたが、そこにはサポートのAllenさんがひと役買ってるのではないかと思いました。

ミヤ 昔のMUCCの曲ってすごくイビツなんだということにAllenと一緒にやることで気付いた。普通のドラマーだったら理解できないような激しい振り幅のテンポなんだなって。でも当時は、歌の雰囲気が暗くなるのに合わせてテンポも落としてたんですよ。そういうのを当時は全部感覚でやってたから、そこをAllenとやることで答え合わせをしてる感じ。

逹瑯 Allenはがんばってますよ。頭もいいし真面目だし。

ミヤ でもあいつ、夜にLINE送っても朝にならないと返ってこないんだよ。「翌日のリハでここはこうしたい」みたいな要望を送るんだけど、全然既読にならなくて。ただ、朝7時半に「了解です」って返ってくる。つまり、朝練してるんだよね。

──真面目ですね。

逹瑯 たぶん切り替えが大事なタイプなんだと思う。だから夜になったらLINEもシャットアウトして、次の日は朝からしっかりやる、みたいな。

ミヤ Allenが昔の曲を叩くことで「本当はこういうグルーヴを出したくて書いた曲なんだな」ということに気付くことがあって。例えば「カルマ」に入ってる曲は四つ打ちのスクエアなビートが多いんだけど、それが当時だとちゃんと形になってなかった。でも今はAllenがしっかり理想通りのスクエアなビートで叩くから、その分自分が自由に演奏できる。で、本当はこういうことがやりたかったんだなと気付くんです。

YUKKE Allenとやることで、当時の自分ができなかった弾き方とかリズム感をちゃんとつかめたような感覚はありますね。「あ、ここはこうなんだ」「ここはこう弾けばよかったんだ」みたいな発見は多いかも。あとAllenには人間的な面でも勉強になる部分があって。さっきのLINEの話もそうだけど、ちゃんと自分のペースを守りつつしっかりがんばるところとか。昔からMUCCはずーっと根詰めてやるタイプだったんですよ。でも彼はそうならないようにコントロールしてる感じ。

YUKKE(B)

YUKKE(B)

──今では彼の存在がバンドの風通しをよくしたり、のびのびとしたバンドのパフォーマンスに寄与してる印象があります。

ミヤ 例えば「カルマ」とか「シャングリラ」ってリラックスしたビート感が大事だし、ステージの上でも緊張感が強いとたぶん楽しめない。作品的にリラックスしてるビートとかパフォーマンスのほうが気持ちいいんですよ。で、Allenは自分の能力を100%発揮するために、そうやって自分をコントロールしてるんだけど、昔のウチらって真逆だったから。

──むしろ緊張感こそがMUCCの要でした。

ミヤ そういう意味では今回のツアーは気持ちよくやれそうな気がする。