新生MUCC早くも始動、混迷する世界に3人が放つ“決意の音” (2/2)

ライブで声が出せない今だから

──「WORLD」は、作詞が逹瑯さん、曲はミヤさん、逹瑯さんの共作です。ファンの皆さんから集めた歌声を編集した、壮大なコーラスが鳴り響く楽曲ですね。

逹瑯 はい。うまくいくかわからなかったけど、まずSNSでみんなの声を送ってもらおうと思ったんですよ。それを取り入れたコーラスワークの上で、自分が違うメロディを歌うという構成の曲にしたいなと。俺が作っていたのはアッパーでシンプルなリズムの曲だったんですけど、「そのアイデアとコーラスの感じがいいね」ということになって、リーダーが作っていた曲とくっつけたんです。

ミヤ コーラスとBメロが逹瑯、Aメロとサビは俺ですね。俺が作っていた曲はバラードっぽかったんですけど、とにかくコーラスのアイデアがよかったし、曲調的にもリンクする部分があって。逹瑯の曲を聴いた瞬間、頭の中で2曲がくっついたんです。

逹瑯 俺の曲の仮タイトルが「アンセム」で、リーダーの曲が「ワールド」だったから、「合わせると『ワールド・アンセム』になるけど大丈夫?」って言いながら(笑)。

──(笑)。再スタート1発目のシングルにはファンにも参加してほしいという気持ちもあった?

逹瑯 すごくありました。ライブで声が出せないからこそ、みんなの声が入っている曲が作りたいなと。

ミヤ 大勢で一緒に歌うことができないですからね、今。コーラスを募集したら予想を遥かに超えて1000トラック以上集まったんです。それを全部使っているので、まとめる作業はけっこう時間がかかりましたね。1つツイてたのは、俺が使ってる音楽ソフトがそのタイミングでアップデートしたこと。それまでは取り込めるトラックの上限が1000までだったんですが、2000トラックまで使えるようになったので。スマートフォンのマイクの精度もすごく上がってるし、今だからこそ実現できたことだなと。

逹瑯 音質的にどうなのかなと思ってたんですけど、ミックスされたものを聴いたら、めちゃくちゃ素晴らしくて。みんなの声の混ざり具合がすごくいいんですよね。

YUKKE コーラスのアイデアを聞いたときも「いいな」と思ったし、実際に上がってきたトラックも想像以上の仕上がりでした。スタジアムでこの曲を演奏して、ファンのみんなに歌ってもらったら気持ちいいでしょうね。日本武道館みたいに横幅も縦幅もある会場でやれば、すごいことになるんじゃないかな。

YUKKE(B)

YUKKE(B)

──「WORLD」の歌詞からも、変貌した世界の中で、それでも先に進むという意思を感じました。

逹瑯 混沌としてますからね、今。これまでは世の中が正常に動いていたからこそ、「THE END OF THE WORLD」や「World's END」みたいな曲をやれてたと思うんです。でも、ぐちゃぐちゃな世界になってしまって。逆説的ですけど、「この先を見たい」という気持ちになった。こういうときこそ前向きになるもんだなって思うし、だからこそ「WORLD」では「beginning of the world」って歌ってるんですよ。

SATOちにカッコいいステージを見せないと

──カップリングには逹瑯さん作詞・作曲による「XYZ.」が収録されています。この曲は、MUCC流のシティポップと言いたくなるような曲調ですね。

逹瑯 そうですね(笑)。「GONER」「WORLD」で今の世の中の感じ、自分たちの感じをがっつり出しているので、カップリング曲には、それとはまったく関係ない曲を入れたくて。

ミヤ 何も考えないで聴ける曲、歌詞がぜんぜん入ってこない曲もいいなと。「XYZ.」のような曲調もやったことがないし、この体制だからこそ実現したアプローチだと思います。ハードルはかなり高かったですけどね。特にベースは難しかったみたいで。

YUKKE こういうニュアンスを楽曲の中に取り入れることはあったんですけど、“1曲を通して”というのは初めてだったんですよ。だいぶ苦労しましたけど、気持ちよく聴ける曲になったかなと。ライブでもこの曲の気持ちよさを伝えたいので、楽しみにしていてほしいです。

──ライブについても聞かせてください。新体制になって最初のライブは、10月14日にZepp DiverCity(TOKYO)で開催されたROTTENGRAFFTY主催イベントでした。

ミヤ 俺ら、ロットンのトリビュートアルバム(2019年12月リリースの「ROTTENGRAFFTY Tribute Album ~MOUSE TRAP~」)に参加したんですよ。リリースライブにも声をかけてもらって、それは延期になったんだけど、振替公演にもお誘いいただいて、こっちとしても「ぜひ」という感じで。

逹瑯 違うイベントだったら断ってたかもしれないけど、ロットンだったら、むしろやったほうがいいなと。

YUKKE ロットンのメンバーにも今のMUCCを見てもらいたかったしね。

ミヤ 新体制の最初のライブはワンマンがいいんじゃないか?という話もあったんだけど、「俺らはいつでもやれるよ」という自信もあって。マイナスな考えはまったくなかったです。

──そして11月4日には全国ツアー「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness WORLD is GONER」がスタートします。ツアーにも自信を持って臨めるだろう、という意味でこのタイミングでツアーを組んだんでしょうか?

ミヤ もちろんそれもあるし、新しい体制で早く動き出したいという気持ちも強くて。今のMUCCを早く観てほしいんですよね。

YUKKE 注目してもらえるタイミングだと思うし、ツアーまでにさらにバンドサウンドを構築して、パワーアップしたMUCCを感じてもらいたいですね。サポートドラマー、すごく緊張しいなんですよ。このインタビューを読んだら、余計にプレッシャーを感じるかも(笑)。

──逹瑯さんはツアーに対して、どんな思いを持ってますか?

逹瑯 背伸びしてもしょうがないし、等身大の部分をブラッシュアップするような気持ちでリハに入ってますね。どのタイミングになるかわからないけど、SATOちもライブに来たいって言ってるし、カッコいいステージを観せないと。

YUKKE SATOち、ずっと前から「MUCCのライブを観たいけど、ドラム叩いてるから無理」って当たり前のことを言ってたんですよ(笑)。

逹瑯 ようやく観れるな。ゲストパスは渡すと思うけど、ライブハウスだったらドリンク代は自分で払ってほしい(笑)。

ふんどしを締め直して

──最後に、皆さんがイメージしているMUCCの未来像を教えてもらえますか? コロナ禍、SATOちさんの脱退、新体制のスタートを経て、この先のMUCCはどうなっていくのか。

ミヤ 今のMUCCは今しか見られないじゃないですか。しっかり作り込んでからスタートするのではなくて、今後どうなっていくか、その過程もお客さんと共有するのがウチらしいと思うんですよ。変化もするだろうけど、その時期のMUCCをリアルタイムで楽しんでほしいなと。

──ミヤさん自身、今後のMUCCに期待しているところもある?

ミヤ ありますね。24年くらいバンドをやってる中でまたスタート地点に戻ることなんて、ほとんどないと思うんですよ。なかなかできない経験をさせてもらっているし、すべて前向きに捉えているので。

逹瑯 ふんどしを締め直している感じもあるし、このまま突き進んで、1秒でも長く、カッコいいところを見せたいなと。すごくポジティブだし、自分自身も今後が楽しみです。

YUKKE シングルとツアーを発表したとき、お客さんからも「楽しみです」という意見をたくさんもらって。いろんなことがあって、お客さんも強くなっていると思うし、一緒に進んで行ける自信もありますね。4人から3人になって、考えなくちゃいけないことは増えましたけど、精神的には軽くなっている部分もあるんです。もっと自分の気持ちに正直に、前だけを見て進んでいきたいですね。

ライブ情報

MUCC TOUR 202X 惡-The brightness WORLD is GONER

  • 2021年11月4日(木)東京都 USEN STUDIO COAST(「朱ゥノ吐」VIP会員限定)
  • 2021年11月15日(月)大阪府 なんばHatch(「朱ゥノ吐」VIP会員限定)
  • 2021年11月16日(火)大阪府 なんばHatch
  • 2021年11月22日(月)宮城県 SENDAI GIGS(「朱ゥノ吐」VIP会員限定)
  • 2021年11月23日(火・祝)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2021年11月26日(金)石川県 金沢EIGHT HALL(「朱ゥノ吐」VIP会員限定)
  • 2021年11月27日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2021年11月30日(火)愛知県 DIAMOND HALL(「朱ゥノ吐」VIP会員限定)
  • 2021年12月1日(水)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2021年12月3日(金)東京都 USEN STUDIO COAST

プロフィール

MUCC(ムック)

1997年に茨城で結成された、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)からなるロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、ヘヴィロックやラウドロックの影響をミックスさせた音楽性が国内外で評価されている。2002年にデンジャークルー・レコード内に自主レーベル・朱を設立。結成15周年を迎えた2012年には千葉・幕張メッセにてワンマンライブを開催した。2019年2月には期間限定メンバーとして吉田トオルを迎えたアルバム「壊れたピアノとリビングデッド」を発表。2020年6月に15枚目となるオリジナルアルバム「惡」をリリースした。6月9日を「ムックの日」とし、毎年さまざまなイベントや企画を行なっている。2021年10月をもってSATOち(Dr)が脱退し、現体制に。11月にニューシングル「GONER / WORLD」を発表し、同月よりツアーを開催する。