音楽ナタリー PowerPush - ムック

「SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争-」強敵と戦い続けた半年の軌跡

Episode 2VS

──メンバープロデュース公演の翌月は、「異種格闘技戦」をコンセプトとした対バンツアーが始まりました。

ミヤ(G)(撮影:木村泰之)

ミヤ 俺個人は、このツアーの郡山(※4月12日の郡山HIP SHOT JAPAN公演)からツアーが始まった気がするんですよね。それまであんまり記憶がないんですよ。ちょうど郡山でのライブの時期に、アルバムの目処が立ちそうだったんですよね。そこで吹っ切れた。しかもTHE BACK HORNのライブがすごくよくて、うちらもがんばろうって。そっからやっとツアーにモードが切り替わった感じでしたね。

──ちなみに「VS」のゲストバンドのセレクト基準は?

ミヤ 単純に対バンしたら面白いなっていうバンドですね。個々に推したい人を挙げていったり、全員で話し合いをしたりして決めて。とにかく相手を尊敬してないと成立しないツアーだったと思います。

──このツアーだけ東京公演がありませんが、何かこだわりがあったんでしょうか?

ミヤ それぞれのバンドに縁がある場所でやりたかったんですよ。the telephonesだったら彼らの地元の埼玉だし、THE BACK HORNだったら福島。ROTTENGRAFFTYは、以前に彼らの地元に呼んでもらったので、今度は俺らの地元茨城に呼ぼうと。ストレイテナーやSEBASTIAN Xとも、東京でやるよりも地方でやったほうが面白い気がしたんで。

──対バンを通してどんなフィードバックを受けましたか?

ミヤ ワンマンにはない空気感がいいんですよ。音楽を楽しむ空間としては、対バンが一番いい形なんです。ツアー中は対バン相手によって曲順も変えたし、相互作用というか。対バンだとバンドの違う一面が見えるから、ワンマンしか来ないお客さんは損してると思うんですよね。

──なるほど。お客さんに新しい音楽を提案したい、という思いもあったんでしょうか?

ミヤ ヴィジュアル系のファンって、あんまり自分から新しい音楽を探しにいかないんですよね。だから対バンツアーを通して新しい音楽との出会いを提供するっていう意味もありましたけど……でも、自分から探しにいかないって悲しいですよ。本当に音楽が好きなのかなって気もするし。ムックのファンからも対バン相手のファンからも「楽しかった」っていう声もあって、うれしかったですけど。

──アルバムのレコーディングも並行して進んでいたんでしょうか?

8月9日に新木場STUDIO COASTにて行われたライブシリーズ「SIX NINE WARS-ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 6.『ARMAGEDDON』」の東京公演の様子。(撮影:木村泰之)

ミヤ やってましたね。これまでツアーをしながらレコーディングってのはあんまりなかったんですけど、メリットはありましたね。ライブでやった次の日にレコーディングすると、前日に受けた刺激がそのまま反映される。ツアー中じゃなかったらできてなかっただろうなっていう歌詞やアレンジもありました。

逹瑯 俺は極力ツアーとレコーディングは別がいいですけどね。5月はしんどかったなあ。ライブで歌って、レコーディングでも歌録りして。しかも5月の「Thanatos & Thanatos」は激しい歌ばっかりで。声が枯れちゃった。そうなってくると怪我を治すのと同じで、復活するまで時間はかかるし、それをどうやって早く治せるようにするかってことが大事になってくる。

──ちなみにこのツアーの中で一番しんどかった時期って?

逹瑯 個人的には6月がコンディション的に一番しんどかったな。だけど対バンが仲のいいメンツだったので、彼らに支えられて乗り切った感じですね。これがワンマンだったら、気分的にも落ちてたかもしれないんだけど。

YUKKE 精神的にしんどいって思うことはなかったですけど、体力的にハードだなって思ったのは「Thanatos & Thanatos」。激しい曲を連続してやるのがこんなにしんどいんだって実感した。でも、そこで基盤ができたというか、ツアーの体力を作った感じですね。

SATOち 俺も体力的なところで5月の「Thanatos & Thanatos」ですかね。4月の「VS」はすごい楽しくて、対バン相手にアドレナリンが出てて。ただ「Thanatos & Thanatos」は対お客さんになって、相手が本気でぶつかってくるのでそれに対峙するのに体力がいるというか。

Episode 3Thanatos & Thanatos

──体力的に大変だったという「Thanatos & Thanatos」ですが、中盤のCLUB CITTA'公演で「ENDER ENDER」のPVシューティングが行われました。この曲は早くもライブに定着してる感じですが。

ミヤ ひさしぶりにバンドっぽい感じの曲でしたね。それまでのシングルの流れを、ガラッと変えたかったんですよ。自由にライブを楽しんでって言っても、みんなまったく同じノリ方をしてることが多いから「ENDER ENDER」で変えたかったっていうのがあった。でないと閉鎖的な空間でやってる感じが出てくるから。1月にSiMのイベントに出たときに、お客さんはほぼSiMのファンだったんですね。みんなムックの曲なんて知らないんですよ。だけど曲のビートやサウンドに反応して「こういう曲だったら、こういう感じで楽しもう」っていう感じがあって。さすが旬なバンドにくっついてきたお客さんだなって思いましたね。予定調和じゃない感じが素晴らしいなって。予定調和をしにいくライブももちろん楽しいとは思うんですけど、そればっかだと面白くないというか。一度できあがったら、壊していくことを常にしていかないと。

──先ほどSATOちさんとYUKKEさんからは、このツアーはハードだったという声があがってましたが、ミヤさん的にはどうでしたか?

ミヤ 俺は一番楽でしたけどね。体力があれば乗り切れるものだし、耐久レースみたいなんで。そうじゃないライブのほうが気を使いますね。流れだったり演出だったり。この曲をどんな気持ちで弾いたらお客さんに伝わるか考えなくちゃいけないんで。

逹瑯 俺もこのツアーは勢いでやっていけるからラクでしたね。攻撃力みたいなのが大事なんで。レコーディングさえなければ……って思ってました(笑)。

5月3日になんばHatchにて行われたライブシリーズ「SIX NINE WARS-ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 3.『Thanatos & Thanatos』」の大阪公演の様子。(撮影:瀧本“JON…”行秀)5月3日になんばHatchにて行われたライブシリーズ「SIX NINE WARS-ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 3.『Thanatos & Thanatos』」の大阪公演の様子。(撮影:瀧本“JON…”行秀)

Episode 4TRIANGLE

──体力勝負のEpisode 3のあとは、同じシーンで活動するメンツとの対バンツアーでした。こちらは参加バンドとのコラボあり、カバーありのツアーでしたね。

ミヤ 「TRIANGLE」は“脱線”する部分を楽しむことに重きを置いていた気がしますね。MERRYはずっと一緒でしたけど、ほかのバンドを交えて初めてやる日は探り探りで。“脱線”の部分を観客にも見せなきゃいけないし、バランスを取るのが大変でした。

──交流のあるバンドと今回のような形で一緒に回るというのは今までありましたか?

逹瑯 ウチらが主導でってのはなかったですね。今回はMERRYが一緒にこのツアーを作っていこうって積極的に参加してくれて、いろいろ提案してくれたんで助かりました。彼らがいなかったらコラボがあるようなツアーにはならなかったと思う。彼らの場合はカップリングツアーとかやり慣れてるから、決まり事にとらわれないライブの作り方を熟知してるんですよね。

──打ち上げも盛り上がったのでは?

逹瑯 そうですね。MERRYとは9本一緒でしたけど、途中で参加バンドが変わると打ち上げの空気が変わるんですよ。それは面白かったですね。後輩が積極的に絡んできたり、こっちもどう絡もうかとか考えたり。打ち上げの空気が、ステージにも影響を与えてた気がしますね。

6月18日になんばHatchにて行われたライブシリーズ「SIX NINE WARS-ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 4.『Thanatos & Thanatos』」の大阪公演の様子。(撮影:瀧本“JON…”行秀)6月18日になんばHatchにて行われたライブシリーズ「SIX NINE WARS-ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 4.『Thanatos & Thanatos』」の大阪公演の様子。(撮影:瀧本“JON…”行秀)
SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Final Episode「THE END」
2014年9月23日(火・祝)
東京都 国立代々木競技場第一体育館
OPEN 16:00 / START 17:00
ニューシングル「故に、摩天楼」 / 2014年9月10日発売 / Sony Music Associated Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / AICL-2724~5
通常盤 [CD] / 1296円 / AICL-2726
ニューアルバム「THE END OF THE WORLD」 / 2014年6月25日発売 / Sony Music Associated Records
ニューアルバム「THE END OF THE WORLD」初回限定盤
初回限定盤 [CD+DVD] / 3900円 / AICL-2683~4
通常盤 [CD] / 3100円 / AICL-2685
ムック

ムック

1997年に茨城で結成された4人組ロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、従来のヴィジュアル系サウンドに欧米ヘヴィ / ラウドロックからの影響をミックスした独自の音楽性が高く評価されている 。海外でもライブ活動を行っており、2008年には海外バンドと北米、ヨーロッパ、日本を回る大規模なツアー「Rockstar Taste Of Chaos 2008」に参加した。2012年6月に幕張メッセで結成15周年ライブ「MUCC vs ムック vs MUCC」を開催。2013年に入ってからは「HALO」「World's End」という2枚のシングルをリリースした。2014年5月にはシングル「ENDER ENDER」を、6月にはアルバム「THE END OF THE WORLD」を発表。また2014年3月より7カ月にわたる大規模なライブシリーズ「SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争-」を開催している。