ナタリー PowerPush × WOWOW ミュージックスタイルJAPAN ORIGINAL LOVE
20周年記念ライブをオンエア WOWOW連動インタビュー
「本物の音楽との出会い」をコンセプトに、毎月厳選したアーティストを紹介するライブプログラム「ミュージックスタイルJAPAN」がWOWOWで新たにスタートする。記念すべき第1回は、今年デビュー20周年を迎えたORIGINAL LOVE。10月30日放送の番組では、「ORIGINAL LOVE 20th anniversary『フリーライド・ツアー!』」から、7月18日に行われたSHIBUYA-AXでのツアーファイナルの模様が放送される。
ナタリーではこの注目の新番組の趣旨に賛同し、「ミュージックスタイルJAPAN」と完全連動の特集コンテンツを制作。番組内でオンエアされるORIGINAL LOVE・田島貴男インタビューをロングバージョンのテキストでお届けする。彼の独自性と音楽への愛を、このインタビューと番組を通して確かめてもらいたい。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 福岡諒祠
ニューアルバムは“新しいオールディーズ”
──メジャーデビュー20周年おめでとうございます。
ありがとうございます。20年やってきてよく「アルバムを出すごとに変わった」って言われるんですけど、自分の実感としてはそんなに変わってないです。音楽の衣装はいろいろ変えてみましたが、中身のほうはなかなか変われないものですね。
──でも、デビュー前後のORIGINAL LOVEのスタイリッシュなイメージに比べると、ここ最近の田島さんはどんどん肉体的になっている気がします。ご自身ではそのあたりどう捉えていますか?
それについてはね、当時の周りの人たちがORIGINAL LOVEをそういうふうに見せてくれてたんですね。僕自身は、デビュー前から自分の作る曲は肉体を伴った音楽でありたいと思ってた。頭でっかちな音楽じゃなくてね。知識を超えたところにあるポップス、あんまり音楽に接したことがない人でもいいって感じてくれるような、音楽の「普遍性」に到達したかった。もちろんデビュー当時はどうやっていいかわからなくて。いろいろ音楽やっていくうちにやり方が見えてきて、ちょっとずつわかってきてる最中ですね。今も失敗したり、たまに成功したりしながらやってます。
──この夏には、5年ぶりのアルバム「白熱」もリリースされましたね。
「白熱」を説明するときに、「新しいオールディーズのアルバム」ってよく言ってます(笑)。50~60年代に始まったロックンロール、その周辺のポピュラーミュージック。僕らが普段よく耳にする音楽はそれを受け継いだものだと思ってるんですよ。ところが最近の音楽って、受け継がれるべき部分が分断されて粉々になってて、バラバラに散らばってるような印象を受けるんですよね。
──なるほど。
だからこのアルバムでは、50~60年代の音楽のチャーミングなメロディ、その素晴らしさを意識的に受け継ぐように再構築して、2011年の今の音楽を作りたかった。メロディがいい、良い曲っていうことを、意識しながら書きました。
──確かにすごくポップで、耳に残るメロディがこのアルバムにはあふれています。
ありがとうございます。やれるだけのことはやりました(笑)。今回のアルバムの、ポップスとしてのクオリティにはそれなりに自信はあります。ただリスナーの方がそういう音楽を求めているかは別だし、もっとマニアックな、細々としたものを聴きたいんです、って言われたらそれまでなんですけど。でも僕はあえてここで、バディ・ホリーとかフィル・スペクターとか、THE BEATLESがやってたようなああいう音楽を、Pro Toolsやサンプラーを使って、この時代にやってみたかったんですね。
演奏も録音もマスタリングも全部1人でやった
──アルバムのレコーディングはほぼ全部、田島さん1人で行ったと伺いましたが、具体的には?
最初から最後まで、作詞作曲、演奏も歌も録音もマスタリングも全部1人でやりました。こんなアーティストいるでしょうか(笑)。できあがってきたアルバムCDを初めてCDプレイヤーに入れて最後まで聴いてみたとき、支障なくちゃんと再生されたので本当にホッとしました(笑)。
──かなり大変な作業だったと思うんですが……。
時間もかかったし、ホント大変でした。まいりましたね(笑)。僕のデビュー当時のレコーディングのやり方って今と全く違っててね、大きなスタジオで素晴らしい機材を使って素晴らしいエンジニアと一緒に、時にはオーケストレーションも録ったりしてたんです。前回のアルバムまでは僕もずっとそういう作り方をしてたんですけど。
──そのスタイルを変えて、今回1人でやってみようと思ったのはなぜですか?
コンピュータを使った録音システムや、インターネットが普及した2000年頃を境に、音楽の制作スタイルは大きく変わっていきました。このごろはコンピュータのソフトが洗練されて、1人でアルバムを全部作り上げることも不可能ではなくなった。それじゃあ僕も20周年っていうのを機に、1回頭の中を入れ替えてその新しいやり方でやりきってみようかと思ったんです。あと、1人でいろんな楽器を演奏してアルバムを作り上げてるアーティストの音楽が昔から結構好きでした。トッド・ラングレンなどは、学生時代からずっと好きなアーティストだったし。ここでチャレンジして、そのやり方で全部1人で作ってみようと思ったんです。
──1人でやってみてよかったことは?
完成したときの充実感はやっぱり大きかったですね。「やったな!」って感じでね(笑)。あと、いろんなエンジニアとかミュージシャンを尊敬するようになった(笑)。 今までナメてたわけじゃないですけど、「ベーシストってやっぱすげえわ」とか「エンジニアってやっぱさすがだわ」って、自分でやってみてそういうことを痛感する場面がいっぱいありました。
CD収録曲
- フリーライド
- バイク
- セックスと自由
- カミングスーン featuring スチャダラパー
- 春のラブバラッド
- ハイビスカス
- ふたりのギター
- 海が見える丘
- あたらしいふつう
- 好運なツアー
ボーナストラック
- フリーライド(ひとりソウル・ヴァージョン)
※2011年2月8日渋谷CLUB QUATTRO「ひとりソウルショウ 東芝DAYS」 - なごり雪
※養命酒製造「ハーブの恵み」CMソング
DVD(Special Editionのみ)
- フリーライド
※2011年2月9日「ひとりソウルショウ ポニーキャニオンDAYS」
ORIGINAL LOVE(おりじなるらぶ)
1985年冬、田島貴男を中心に前身バンド「レッドカーテン」を結成。1987年にバンド名を現在のORIGINAL LOVEに改名。1991年6月にシングル「DEEP FRENCH KISS」でメジャーデビューし、1993年の5thシングル「接吻 kiss」がドラマ主題歌に起用され大ヒットを記録する。翌1994年発表の4thアルバム「風の歌を聴け」はチャート初登場1位を獲得し、一躍人気バンドの仲間入りを果たした。数度のメンバーチェンジを経て、現在は田島のソロユニットとして活動中。2011年7月に自身のレーベルよりアルバム「白熱」をリリースしている。