ナタリー PowerPush - monobright
「DO10!! 攻約宣言!」続行中 3rdアルバムで試みた実験と挑戦
今年2月に「DO10!! 攻約宣言!」と銘打って2011年夏までの活動内容を一挙に発表し、精力的なリリースとライブを続けてきたmonobright。10月13日にリリースされる3rdアルバム「ADVENTURE」は、その縦横無尽な勢いを反映した、奔放な作品に仕上がった。先行シングルとしてリリースされた「雨にうたえば」のようなしっとりとしたポップソングだけでなく、サイケ、ダブ、プログレなどさまざまな音楽を吸収。今のUSインディシーンとのリンクを感じさせるナンバーや、今までのバンドイメージを覆すような実験性を持った楽曲も収録されている。まさにタイトルどおり「冒険精神」に満ちた1枚だ。
3rdアルバムの発売と同時に4thアルバムのダイジェスト盤を配布することも発表している彼ら。怒涛のリリースの中でクリエイティビティを爆発させているmonobrightの今を、桃野陽介(Vo, G, Key)、松下省伍(G)、出口博之(B)、瀧谷翼(Dr)の4人にたっぷり語ってもらった。
取材・文/柴那典
展開の速さに自分でビックリしてます
──新作「ADVENTURE」は、やりたい放題だし、それがいい結果を生んだアルバムだと思います。まず、これができあがっての実感はどうですか?
桃野 「攻約宣言」をしてから、ずっとレコーディングをしてきたんですよ。「ADVENTURE」が完成した次の日も「さあ4枚目だ」ってなったくらいで。展開の速さに自分でビックリしてますね(笑)。アルバムはいいものを作った自信に加えて、今まで味わったことのない独特の達成感があります。
──今まではもうちょっと制作後の余韻があったんですよね。
桃野 そう。CD屋さんや街でできあがったのを聴いてみたりとか。でも、今回はもう次のことを考えてるんで。
──「攻約宣言」をしてから半年経ちましたが、どうですか? 「無茶なスケジュールを言っちゃったなあ」みたいな気持ちはあります?
桃野 言わなきゃよかったなって? 好きなことをやってるという意味では、そんなにしんどい感覚はないですけどね。あとは体力との戦いです。祈るしかない(笑)。まあ、「言っちゃったな」って結果的には思いましたけどね(笑)。でも宣言したことで、バンドの成長にも生まれる音楽にも、見返りがあったとは思います。
中途半端なものを出したら「攻約宣言」自体が逆効果になる
──実際、アルバムに収録されている曲は1曲1曲の濃度が高く、振り切った内容になっていますよね。そこが素晴らしいと思うんですが、これは「攻約宣言」したことで相乗効果があったんでしょうか? それとも、もともと音楽的なクリエイティビティが高まっている自信があったからこそ、宣言できたということでしょうか?
桃野 両方ですね。もともと自信があったから言ったんですけど、今回ツアーをしながら曲も作っていくことになったので、短い期間で集中して制作できたという側面もあります。だから濃密な作品ができた。
松下 中途半端なものを出したら「攻約宣言」自体が逆効果になっちゃう、というのは僕らも思っていたんです。そこで、曲の濃度を上げたり、どんどん新しいことを露骨に取り入れたりするように、自分たちに厳しいハードルを課したんです。こういう企画をやってるからこそ、シングルにしてもアルバムにしても、どうせやるんならとことんやってやろうと。
──アルバムだけでなく、シングルの内容も濃いですよね。「雨にうたえば」も、カップリングに「RYDEEN」のカバーや、表題曲にしていいくらいのクオリティの「KISS」が収録されていたり。
出口 「雨にうたえば」では、最後まで表題曲以外をどうするかみんなで悩んだ印象がありますね。「KISS」にしても、アルバムに入れるのかシングルに入れるのか考えに考え抜いた。その1曲だけで全体の印象がガラっと変わるくらい強い曲がいっぱいあったんで。
松下 もはや、シングルって本当に好きじゃないと買わないものになってきてますよね。僕自身がそうだったりするし。でも、シングルでもミニアルバムのような感じにすることだってできるし、同じ曲を違うように聴かせることだってできたりもする。せっかく「攻約宣言」したんだから、そういう挑戦的なことをやろうよとは思ってました。
今の時代に最前線でやってるバンドこそがニューウェイブ
──では、アルバムのテーマやコンセプトはどこから決まっていったんでしょう?
桃野 まず「ADVENTURE」というタイトルは前から決めてましたね。もともとはTELEVISIONという好きなニューウェイブバンドの2ndアルバムからとった言葉なんです。意味合いは単純に「冒険」なんですけれど、それに並行して「DO10!! 攻約宣言!」というのがあったんです。だから、まさにアルバムタイトルのとおり冒険や挑戦の詰まった作品になったというか、「攻約宣言」以降のアグレッシブな活動が反映された楽曲ができたと思うんですね。自分たちの活動を音楽として表現したのが「ADVENTURE」。結果として、自分たちが今まで持ってなかった要素を引き出すことになったんです。
──例えば「裸の目をしたミュータント」とか、今のUSインディっぽいポップ感を持つ曲もありますよね。ニューウェイブというルーツだけに縛られるんじゃなくて、2010年代のロックシーンとリンクして、そこで何が新しいかを模索している感じもありましたけど。
桃野 僕らの中でのニューウェイブの感覚って、80年代のあの時代を指しているんじゃないんですよ。あくまで精神的な意味でのニューウェイブを意識している。ということは、今の時代に最前線でやってるイギリスとかアメリカのバンドは、今の時代のニューウェイブなんですよ。そこをないがしろにはできないわけで。
──FRANTZ FERDINANDとかINTERPOLのような80'sニューウェイブを再解釈して自分たちなりの表現に昇華しているバンドだけじゃなくて、ANIMAL COLLECTIVEとかVAMPIRE WEEKENDも今の時代のニューウェイブなんだ、と。
桃野 そうですね。その時代の今を鳴らす音というのにも興味があって。そういうものを取り入れつつ、自分たちの中で新しいことに挑戦したりしましたね。
初回盤CD収録曲
- 81日目のAM1:16
- 雨にうたえば
- 黒い空
- 裸の目をしたミュータント
- 孤独の太陽
- 2010年のKOZOO
- JOYJOYエクスペリエンス
- ポーツス
- 英雄ノヴァ
- 正義にて
- 白
初回盤DVD収録内容
- JOYJOYエクスペリエンス(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
- 孤独の太陽(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
- 英雄ノヴァ(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
- 雨にうたえば(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
通常盤CD収録曲
- 81日目のAM1:16
- 雨にうたえば
- 黒い空
- 裸の目をしたミュータント
- 孤独の太陽
- 2010年のKOZOO
- JOYJOYエクスペリエンス
- 英雄ノヴァ
- 正義にて
- 白
monobright(ものぶらいと)
桃野陽介(Vo,G)、松下省伍(G)、出口博之(B)、瀧谷翼(Dr)の4人から成るロックバンド。2004年11月に桃野の弾き語りプロジェクトとしてスタートし、2006年6月に現メンバーが加入。地元・北海道で精力的なライブ活動を行いながらファンを増やしていく。2007年1月に東京に拠点を移し、同年7月にシングル「未完成ライオット」でメジャーデビューを果たす。その後も、2ndシングル「頭の中のSOS」、1stアルバム「monobright one」と順調にリリースを重ね、2009年1月にシングル「アナタMAGIC」がアニメ「銀魂」の主題歌に起用され急激に支持層を拡大。日本のロックシーンを担う新星として注目を集めている。インディーズ時代から黒縁メガネをかけ、白いポロシャツにスリムジーンズというファッションを貫いていたが、2009年4月に2ndアルバム「monobright two」のリリースを機にビジュアルイメージを一新した。