ナタリー PowerPush - monobright
「DO10!! 攻約宣言!」続行中 3rdアルバムで試みた実験と挑戦
肩透かししてやりたかった
──曲ごとの話も訊かせてください。まず、2曲目に収録された「雨にうたえば」がアルバムの中で占める位置は?
桃野 この曲は、一番変化を遂げた象徴的な曲だったので、それを最初に持ってきたいとは思いましたね。今まで激しくてドンチャンやってるアルバムを作ってきたから、今作はmonobrightの冒険として、序盤にだいぶ湿った音楽を聴かせたかったんです。
松下 カマしてやりたかったというのがありますね。毎回同じようにする楽しさもあるけれど、僕らは肩透かししてやろうと。それを突き詰めたのが1、2曲目なんですよね。
──確かに「英雄ノヴァ」で始まるほうがmonobrightらしいし、ロックアルバムとして展開が見えやすいですよね。
桃野 そう。でも、そうはいかないんです(笑)。
出口 最初に聴いたときに「ええっ!?」って感じてくれるようにしたいなって。
──3曲目の「黒い空」も相当攻めてる曲ですね。不協和音のようなコード感もあるし、フュージョン的なアレンジすらある。
桃野 そう、だから「黒い空」まで聴いて「あれ? 本当にこれmonobrightの新譜だったのかな!?」って感覚になるんじゃないかな。そこまで持っていきたかったんですよね。
音楽が好きすぎて狂ってくるくらいの人がポップスター
──中盤の「2010年のKOZOO」もかなり不思議なサウンドですけれど。これはどういう風にできていったんでしょう?
桃野 これは最初はインストだったんですよ。こういうふざけた歌を歌いたいと思って。そしたらふざけ過ぎた(笑)。
松下 こういうのは難しいんですよね。狙いすぎるとクサくなるし、気の抜けた感じだけれど、よく聴いたらカッコいいというバランスは難しくて。それはポップな表現の一部だと思うんですよね。そういうのにも挑戦したかったんです。
──“ポップさ”って、一般的にわかりやすさとか共感しやすさだと思われがちですけど、実はそうじゃないんですよね。なんだか知らないけれど耳から離れなくなるというキャッチーさもある。monobrightがやっているのは、そっち側だと思うんです。
桃野 ポップな曲って、音楽の歴史を見てても、音楽が好きすぎて変態になっちゃった人が書いてるような気がするんですよね。THE BEATLESとか、ブライアン・ウィルソンとか、プリンスとか、マイケル・ジャクソンとか。音楽が好きすぎて、狂ってくるくらいの人がポップスターなんだと思う。そういう意味で、僕らもポップスターに通じるナチュラルな活動をできてるな、って感じはしますね。
ネガティブなものにもポップネスを感じる
──では、最後を「白」で締めたのは? これは、ダブを導入した非常にドラッギーな曲ですが。
桃野 この曲は、シングルの「雨にうたえば」に収録した「黒」とリンクしている曲なんです。で、「黒」が落ち込んだ歌なんで、「白」で光があるのかなと思いきや、もっと暗かったという。そういうねじ曲がって宙に浮いている曲。これはmonobrightにとっても新境地だし、新しい方向が見えた曲ですね。ダブも、なんで今まで取り入れなかったんだろう?と思うくらいですけど、ようやく取り入れられました。
──歌詞もかなり独白に近い、シリアスなテーマですよね。何を象徴しているんでしょう?
桃野 そこにポップネスを感じるんですよね。僕、今まで結構ポジティブな歌を歌ってきたんです。でも、ネガティブなものもポップだと思ったんですよ。というのも、みんな人生を生きていくのは基本的に苦しくて、ネガティブなものを感じながら生活している。だから、自分の等身大の自然な感覚、ネガティブな部分を歌にしても、逆に今まで以上にポップなものを作れるんじゃないかという可能性を感じたんです。
2010年代を感じるようなアルバムになった
──わかりました。では、この3枚目のアルバムを「こういうアルバムだ」とあえて言葉で表すならば?
松下 2010年のアルバムだなって思いますね。時代に合わせたわけじゃないですけど、時代を感じるものになっている。
出口 整合性なんて一切無視して、まっすぐに曲に対して向かっていった印象がありますね。アルバム1枚の流れというよりも、1曲1曲に全員がバカ正直に向かっていった。
瀧谷 聴く人によっては「monobrightはどこに行きたいの?」って思うかもしれないですけれど、僕らなりに新しいエッセンスを取り入れて、吸収して、それを出したものになったと思うんです。そういうチャレンジがより明確になったアルバムができたと思います。
──では、聴いた人に、こんな風にアルバムを楽しんでもらいたいという思いはありますか?
桃野 monobrightのイメージをとっぱらって聴いてもらいたいですね。単純にいい音楽を届けたかったし、いろんなことに挑戦してみたんで。CD屋さんだったら、オムニバスのコーナーに置いてもらってもいいくらい(笑)。
──では、10月10日のプレミアムイベントや東名阪クアトロツアー「真夏不思議アドヴェンチャーZ!」でもダイジェスト盤が配布されるという4thアルバムですが、どういう作品になりそうでしょうか? 3枚目を聴けばどんなものになるか予想できそう?
桃野 基本、予想を裏切るのがmonobrightの音楽なので。それはきっとないでしょうね。とりあえず「みんなの予想は当たりません!」って言っておきます(笑)。
初回盤CD収録曲
- 81日目のAM1:16
- 雨にうたえば
- 黒い空
- 裸の目をしたミュータント
- 孤独の太陽
- 2010年のKOZOO
- JOYJOYエクスペリエンス
- ポーツス
- 英雄ノヴァ
- 正義にて
- 白
初回盤DVD収録内容
- JOYJOYエクスペリエンス(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
- 孤独の太陽(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
- 英雄ノヴァ(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
- 雨にうたえば(ビデオクリップ/ライブ映像/TVスポット)
通常盤CD収録曲
- 81日目のAM1:16
- 雨にうたえば
- 黒い空
- 裸の目をしたミュータント
- 孤独の太陽
- 2010年のKOZOO
- JOYJOYエクスペリエンス
- 英雄ノヴァ
- 正義にて
- 白
monobright(ものぶらいと)
桃野陽介(Vo,G)、松下省伍(G)、出口博之(B)、瀧谷翼(Dr)の4人から成るロックバンド。2004年11月に桃野の弾き語りプロジェクトとしてスタートし、2006年6月に現メンバーが加入。地元・北海道で精力的なライブ活動を行いながらファンを増やしていく。2007年1月に東京に拠点を移し、同年7月にシングル「未完成ライオット」でメジャーデビューを果たす。その後も、2ndシングル「頭の中のSOS」、1stアルバム「monobright one」と順調にリリースを重ね、2009年1月にシングル「アナタMAGIC」がアニメ「銀魂」の主題歌に起用され急激に支持層を拡大。日本のロックシーンを担う新星として注目を集めている。インディーズ時代から黒縁メガネをかけ、白いポロシャツにスリムジーンズというファッションを貫いていたが、2009年4月に2ndアルバム「monobright two」のリリースを機にビジュアルイメージを一新した。