ミセス大森元貴の提供曲は「割り振りや言葉の刻み方が本当に独特」
──8月にCDリリースされた「レナセールセレナーデ」についても聞かせてください。「レナセールセレナーデ」は「転生したらスライムだった件 第3期」オープニング主題歌第2弾として、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴さんが書き下ろした1曲で、この夏いろんなところで耳にする機会がありました。
玉井 うれしい。ちょっと前に音楽番組の収録をしたとき、空き時間があったのでメンバーとボウリングに行ったんですよ。そこで順番を待ってるときに、なんか聴いたことある曲が流れてると思ったら「レナセールセレナーデ」で。
高城 しかもミュージックビデオも流れていて(笑)。
玉井 そうそう(笑)。やっぱり人気アニメの主題歌だからか、街で遭遇する機会も多いですね。
佐々木 「レナセールセレナーデ」に関しては「転スラ」ファンの皆さんはもちろんですけど、ミセスファンの皆さんからの反響もすごく多くて。ミセスっぽい複雑なメロディや歌詞構成に対して、「大変だったでしょ?」「ももクロちゃん、がんばって歌ってくれてありがとうね」という優しい言葉をSNSでたくさんいただきました。
玉井 MVのコメント欄もすごく平和なんですよ。「転スラ」ファン、ミセスファン、ももクロファンの間でちょっとした交流も増えていて、いろいろな異なる要素が交わるとまた新たなものが生まれるんだなと実感しました。
──この曲、とにかくメロディが強いし、そのうえフックの効いたアレンジなのでついつい聴き入ってしまいます。
玉井 サビ以外同じメロディが出てこないのもすごくぜいたくですよね。1A、2A、Dメロなんて全部違う曲みたいで、初めて聴いたときは「これ覚えられるのかな?」と心配だったんですけど、それ以上にコロコロ変わっていく展開が楽しくて。それでいて何度も聴いているうちに耳にも残るし、気付いたら口ずさんでいる。そういう曲だなと思います。
高城 さっきも撮影の合間に誰か1人が歌い出すと、それがどんどん伝染していく、という流れがあったよね。この曲、言葉の切り方がすごく特徴的で、そういう部分で大森さん節がさく裂していると思います。
百田 大森さんが歌割りまで考えてくださったんですけど、その割り振りや言葉の刻み方が本当に独特で。私たちの中では「ここでバトンタッチするの?」という驚きや難しさもあったんですけど、それが新鮮で歌っていて面白さもありました。
佐々木 大森さんが立ち会ってくださって、「こういうふうに歌ってほしい」というのを実際に歌いながら教えていただきました。
玉井 レコーディングブースの向こうで、めちゃくちゃ難しいフレーズをさらっと歌うんです。それに対して私たちが「もちろんこっちもそんな感じで歌いたいんですよ!」ってブーブー言うという(笑)。
佐々木 「そのつもりでいます!」ってね(笑)。でも大森さんが軽くさらっと歌ったフレーズが本当に美しすぎて、ぜいたくな時間でした。
玉井 空き時間に歌割りについてもお話を聞いたら、大森さんはももクロのラジオをけっこう聴いてくださったみたいで。いつだったか番組の中で、私たちが小さい頃に考えていた将来の夢について話していたそうなんです。私はケーキ屋さんかパン屋さん、夏菜子ちゃんはお花屋さん、あーりんは「おジャ魔女どれみ」のキャラクターになりたかったと言っていたので、それを受けて「小さい頃の夢は」という歌詞を入れてくれたそうで、歌割りも「ケーキやパンも」が私のパートだったから、すごく納得しました。
佐々木 でも、れにちゃんだけは大森さんの記憶に残らなかったみたいで、「ノスタルジー」というパートの担当になりました(笑)。
高城 番組で言ってたはずなんですけどねえ……。
玉井 あまり記憶に残らなかったんでしょうね(笑)。
高城 私は根本的に大森さんに響いてないと思うんですよ。
玉井 なんでよ!
一同 (笑)。
高城 「冴えない私もいつか」というパートも私じゃないですか……だから、ご本人にお会いしたら言いたいです!
佐々木 「私、一番冴えないですか?」って?(笑)
玉井 面白い(笑)。
高城 お会いしたとき、絶対に聞こうと思ってる。
佐々木 根に持ってるんだ(笑)。
玉井 初めて聞きました、この話。ぜひご本人に伝わってほしい!
──ここに載せて届けましょう(笑)。
高城 冗談は抜きにして(笑)、そういう歌詞とか歌割りにもすごく愛を感じました。
玉井 アニメに寄り添っているのはもちろん、私たちの今までの歴史やこれからについても歌詞に落とし込んでくださっていて、すごく素敵な曲を作ってくださってうれしく思います。
──特撮の皆さんにしても大森さんにしても、アニメのテーマソングではあるけど、それ以前に、ももクロが歌うことありきで作っているからなんでしょうね。アニメとの親和性ももちろん重要ですけど、「ももクロがずっと歌っていけるような曲にしたい」ってことを、常に意識して作っているのかもしれませんね。
佐々木 「やわく恋して ~ずっと僕らでいられますように~」にも「ずっと僕らで いられますように」というフレーズがありますけど、そこも今の私たちにもすごくリンクする部分で。ずっとこうやってふざけながら楽しくやっていけますように、みたいな願いも込められていると感じましたし、そういうところにも愛を感じます。
ももクロのターニングポイントになったアニメソングは
──これまでいろいろなアニメのテーマソングを歌ってきた中で、皆さんの中で「ここでちょっと潮目が変わった」「グループとして1つ乗り越えられたものがある」など、そういうターニングポイントを感じた楽曲を挙げるとするとどれになりますか?
高城 今の4人体制になって最初にリリースした楽曲が、「クレヨンしんちゃん」の映画(2018年公開の「映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~」)の主題歌「笑一笑 ~シャオイーシャオ!~」で。私たちにとって新たな挑戦の始まりでもあったので、今思うとターニングポイントだったのかなあ。
佐々木 新体制でがんばっていこうという時期に「クレヨンしんちゃん」という大きな作品とのタイアップをいただいて、小さい子から大人まで楽しんでもらえるわかりやすい歌詞やダンスを用意する一方で、MVはわりと初期の私たちらしいちょっとふざけた内容だったんです。新しさもあるけど原点も忘れてないという姿勢に対して、「変わらないももクロでいてくれるんだな」と感じてくれたファンの方も多くて、私たちとモノノフさんの気持ちがより近付いた思い出の曲でもあります。
百田 私、街中を歩いていたときに、ちっちゃい子から「『クレヨンしんちゃん』のお姉さんだ!」って声をかけられたことがあって。覚えられ方ってどこを入り口にして知ったかによって全然違うんだなということを、そのときに肌で実感しました。そういう意味でも、しんちゃんの主題歌を担当したことは大きなターニングポイントだったかもしれません。
玉井 私は「美少女戦士セーラームーン」(テレビアニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」)の主題歌「MOON PRIDE」かな。自分が幼稚園生のとき、将来の夢にセーラームーンって書くぐらい憧れの存在だったので、個人的にこのタイアップはすごくうれしかったんです。それに海外のライブで「MOON PRIDE」を披露したとき、イントロがかかった瞬間にものすごい歓声が沸き起こったことが本当に忘れられなくて。言葉が通じない中でアニメやアニメソングのパワーを強く感じられたのは「美少女戦士セーラームーン」のおかげです。
百田 「ドラゴンボール」(映画「ドラゴンボールZ 復活の『F』」)の主題歌(「『Z』の誓い」)を歌わせていただいたときも、MVでの私たちの設定が悟空たちの弟子だったりして、作品の世界に入れてもらった感じがしてうれしかったなあ。周りの大人の方々に「すごくうらやましい」といっぱい言ってもらえたのも、あれが初めての経験でした。でも、それ以上に忘れられないのが……私たち、新しい作品を作るたびにアーティスト写真を撮っていただくんですけど、「『Z』の誓い」のときは私たちがフリーザの格好をした写真だったんですよ(笑)。
高城 あったねー!
佐々木 メンバー全員がフリーザだった(笑)。
百田 テレビで私たちの話題を出してもらうときに、よくワイプでももクロのアーティスト写真が映ったりするじゃないですか。あの時期はそれが必ずフリーザのアーティスト写真だったんです(笑)。あれだけは忘れられないです。
佐々木 まず「これ何?」ってなるよね(笑)。
玉井 確か、エイプリルフールの企画で顔までフリーザになったアーティスト写真も作ったよね。
百田 私がドラマに出演させていただいたときも、俳優さんの写真に並んで私だけ「セーラームーン」のアーティスト写真が使われたり(笑)。当時はそれがちょっと照れくさいというか、恥ずかしいなと思っちゃうところもあったんですけど、今はそういう気持ちもなくなって自信を持って向き合えます。
佐々木 麻痺しちゃったんだ(笑)。
百田 かもしれない(笑)。普段のアーティスト写真も私たちはインパクトが強いものばかりですが、アニメタイアップだと作品にちなんだデザインや衣装になることが多いので、そういう部分でも印象に残りやすいですね。
佐々木 「やわく恋して ~ずっと僕らでいられますように~」や「レナセールセレナーデ」のジャケットも、それぞれの作品のテイストで私たちのイラストを描いてもらっていますし、そこは主題歌をやらせてもらう特権なのかなと思っています。「ちびまる子ちゃん」ではアニメにも出させていただきましたし、私は「おどるポンポコリン」のカップリング曲「私を選んで!花輪くん」の中で、みぎわさんと2人で花輪くんを奪い合って(笑)。「こんなことできるんだ!」っていうくらいぜいたくなコラボレーションが本当にうれしくて、これからもずっと自慢できます。
長く愛される曲を増やしていきたい
──今後もいろいろなアニメ作品と関わる機会があると思いますが、アニメに関連した楽曲を通じて将来的にこんなことできたらと、何か思い描いていることはありますか?
佐々木 「じょしらく」のエンディングテーマ「ニッポン笑顔百景」(2012年9月リリースのシングル)が何年か前にTikTokで流行って、特に海外でたくさんの方が踊ってくださったんですね。もともと海外の方のリアクションがいい曲だなと感じていたんですけど、リリースから時を経て、SNSを通じて再び注目されたことがうれしくて。そういう未知の可能性を秘めた楽曲がまだまだあるんだという気付きも得られました。もちろんリアルタイムでアニメと同時に皆さんにその楽曲を楽しんでいただきたいという思いもあるんですけど、そうやって何年も長く愛される曲をどんどん増やしていきたいですね。
玉井 あと、いつかアニソンコレクションみたいな感じで、アニメソングだけをまとめたアルバムを出せたらいいなと思います。
──カバーも含めたらけっこうな数になりますよね。
百田 確かに。森口博子さんのアルバム(2024年8月発表の「ANISON COVERS 2」)で一緒に歌った「おジャ魔女カーニバル!! / with 百田夏菜子(ももいろクローバーZ)」もありますし。
佐々木 ジブリの曲(2023年発表のスタジオジブリのトリビュートアルバム「ジブリをうたう」に収録された、玉井詩織歌唱の「風の谷のナウシカ」)もあるもんね。
玉井 (レーベルスタッフのほうを向いて)アニソンコレクションをお願いします!(笑)
佐々木 許可とかいろいろ大変そうだけどね。
高城 そこはキングレコードの腕の見せどころかなと(笑)。がんばってください!
百田 ライブでもアニメの楽曲だけでセットリストとか組めちゃうよね。
高城 楽しそう!
玉井 アニメを入り口にももクロを知ったという方々には、そこからほかの楽曲にもたどり着いてほしくて。アニメのタイアップソング以外にもたくさんいい曲がありますし、「走れ!」や「行くぜっ!怪盗少女」だけじゃないぞっていうところも知ってほしいなと思います。
──ここまでの積み重ねが、さらにいろんな可能性を広げていきそうですね。皆さんにインタビューするのはひさしぶりでしたが、考え方含め本当に大人になりましたね。
佐々木 さすがにね(笑)。
玉井 高城さんは31だから。
高城 まあでも、昨日お店で未成年に間違えられましたけどね。
玉井 さっきからこの話ばっかり聞かせてくるんですよ(笑)。
高城 ちゃんと書いておいてください!
玉井 いやいや、いらないです!
佐々木 きっと真面目な店員さんだったんだよ。
高城 いや、そんなことはない。
玉井 お客さん全員に未成年かどうか聞かなくちゃいけないと思ってたんだよ。
佐々木 まだ見極めができなかっただけ。
玉井 しかも、店員さんに「未成年じゃないですよね?」って聞かれて「違います」だけでいいのに……。
高城 「31です!」って答えました(笑)。
百田 それがおばさんっぽいのよ(笑)。
玉井 それでさっき「ねえ、聞いて! 昨日未成年に間違えられたの!」と言ってきて。その言い方もおばさんぽいんですよ。
高城 イヤだねえ、本当に(笑)。
プロフィール
ももいろクローバーZ(モモイロクローバーゼット)
百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、高城れにの4人からなるアイドルグループ。2008年にももいろクローバー名義で結成され、2010年5月にシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。2011年4月に早見あかりがグループを脱退したあと、グループ名をももいろクローバーZへ改名。2012年にグループ結成当初から目標としていた「NHK紅白歌合戦」に初出場し、2014年3月には女性グループとして初となる東京・国立競技場での単独ライブを成功させた。2016年2月に3rdアルバム「AMARANTHUS」、4thアルバム「白金の夜明け」を同時リリースし、同月より初のドームツアーを開催。2018年5月には結成10周年を記念した初の東京・東京ドーム公演を行ったほか、ベストアルバム「桃も十、番茶も出花」を発表した。結成11周年記念日である2019年5月17日に5thアルバム「MOMOIRO CLOVER Z」、その3年後の結成14周年記念日である2022年5月17日に6thアルバム「祝典」をリリース。2024年5月に7thアルバム「イドラ」を発表。8月にアニメ「転生したらスライムだった件」第3期のオープニングテーマ「レナセールセレナーデ」をCDリリースし、10月にはアニメ「甘神さんちの縁結び」のオープニングテーマ「やわく恋して ~ずっと僕らでいられますように~」を配信リリースした。
ももいろクローバーZ(ももクロ) (@mcz517_official) | X
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