アラフォーに足を突っ込んだ“ブルース感”
──ゲイリーさんは最近SNSを通じて、“炎上”しがちな世の中の風潮に対する自身の意見をときに辛口に発信しています。そういう閉塞的な現代社会に対する思いも、この歌詞から感じ取ることができました。
ゲイリー 僕自身は炎上を狙ってるわけじゃないですけどね(笑)。僕が言葉を投げたときに、どんな反応や意見が返ってくるのか?を試してみたくて。自分が当たり障りのないことを発信しても、そんなのはネット資源の無駄だと思うので。何か波紋を広げるようなものを日々投げ続けないと、なんて考えたんです。でも、今作の制作が終わった瞬間から、適当な投稿しかしていませんが(笑)。
──そうやって世間に意見を投げることで、歌詞をブラッシュアップさせた部分もあるんですか?
ゲイリー SNSを覗きつつ、自分の持っている言葉や表現力を細かく軌道修正させていった感じです。的確に言葉を扱うということは、どういうことなのかを考えながら今回は制作していったので。ネットを通じて確認できるのは素晴らしいことだなって思う反面、例えば中島みゆきさんや井上陽水さんは、ネットがなかった頃から誰にでも伝わる普遍的な表現を取り入れていた。そういう普遍性も大事だよなと思い、バランスを取りながら制作していました。同時に、最近の若手バンドの作品もチェックしていますよ。「いいこと言ってるな」って思うことが多いので。
──そうなんですね。若手からはどんなインスピレーションを受けるんですか?
ゲイリー 若さゆえの「人生何もわかっていないからこそ言える」みたいな勢いっていいって。そういうのって今の自分たちが完全に失ってしまった輝きだから。自分たちが二十代の頃に作った「パンティー泥棒の唄」とか、改めて聴くと「俺って天才だな」って自画自賛しますし(笑)。それに比べて、今の自分は凡人に成り下がってしまったなとか。どうあがいても、あの頃には戻ることはできない。若者を見てるとめちゃくちゃ嫉妬するときもある。
──でも経験を重ねたからこそ表現できる深みもありますし、ブルース感が作品全体に流れていますよ。
ゲイリー ああ確かに。これはブルースですよね。アラフォーに足を突っ込んでいる人間ならではの(笑)。
──「7秒」に関しても、二十代の頃には表現できないような味わいがありますし。しかしなぜ「7秒」なんですか?
ゲイリー 「永遠の愛」って、この世には成立しないものだと思うんです。死なない限りは。「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」みたいなところが、生命の本質なのでは?と。だから“7秒”くらいで十分なんですよ。人生において自分のことを見て、愛してくれるのは。それ以上見つめるのって、しんどいと思うし。でも与えられたその瞬間だけは真剣に向き合ってほしい!という思いを込めて作った楽曲です。
愛と希望を歌に込めて
──次に収録されている「AI ha MABOROSHI」に関しても、一瞬の「愛」について歌った楽曲ですよね。今回の作品では「愛」について向き合う機会が多かったのでしょうか?
ゲイリー 僕はクリスチャンの家庭で育ったので、思春期くらいから「愛」について考えてきたというか、考えさせられ続けてきた。そうするうちに「愛」を語るというきれいごとと、「現実」にギャップがあることに気付くんですよ。世の中、人間って言ってることとやっていることは違うんだなってことを。他人を見ても、自分のことを考えても思う。だから1曲くらい「愛」は幻だと断言するものを作ってもいいのかなって。でも、1mmくらいの「希望」を楽曲には残していて、そのわずかな「光」だけで、人は生きているところはあるのでは?それを追い求める人生を過ごせたらいいな、という思いを楽曲に込めた部分がありますね。
──この楽曲ではメンバーそれぞれのソロパートが用意されていますね。
ユッカ スタジオで突然「いけるでしょ?」と言われて。しかもけっこう長いパートを。いきなり豪速球を投げられた感じでしたよ(笑)。
マルガリータ あれはけっこう大変だったよね。
ゲイリー 2人にもちゃんとやってもらわないとね。自分のドラムソロパートもあったんですけど、結局それを何度も録り直しして、一番迷惑をかけたという(笑)。
──今回のアルバム制作を通じて「希望」や「光」を見出せましたか?
ユッカ いやあ毎回作っていて思うのは、自分の至らなさですね。リズムのパターンの少なさとか、いろんなジャンルの音楽を聴いてなんとかカバーしようとは思っているんですけど、なかなか血肉になってくれない(笑)。
マルガリータ 僕も至らなさを痛感しました。もっと的確に楽曲に合う音を表現したいと思うのですが、なかなかうまくいかなくて。次こそは、何とかしたいですよね(笑)。
──でも今回セルフプロデュースでミニアルバムを完成させたことで、今後鳴らしたい音とか、鳴らすべき音が明確に見えた部分もあるのでは?
ゲイリー セルフと言っても、僕自身がやったことは今回の場合、これまでとそんなに変わらなかったんですよね。ほかの2人にどういう演奏をしてもらうか? とかを考える時間が増えましたが、付き合いが長いのでどういう音ができるか知っている部分も多くて、悩むことはなかったし。
──そうなんですね。
ゲイリー 正直、音楽を作ることを「特別」だなんて思ったことはないんです。これからも淡々と職人としてレベルをこれからも上げたい。いいものを死ぬまで作ることができたらと考えているだけで。だから、次のビジョンみたいなものはなくて、ただ純粋に自分たちが納得のいく音楽を作って、それがある程度受け入れられたらいいなっていう感じです。売れてくれないと、僕ら生きていけないので、ある程度の緊張感を持ちつつ、好きな活動ができればと思います。
──そして10月からは全国ツアー「Yeahhhh!! ムチャしやがって」がスタートします。今回は長らく行けなかった北海道のライブハウスを含め、各地を回りますね。
ゲイリー これまでライブは死ぬほどやってきているので、基本は変わらずですが楽しみですね。下北沢でやっていることを、そのままいろんな場所に持っていく感じでやりたいなと。ただ、今回ひさびさにLIQUIDROOMという大きな会場での公演があるので、多くのお客さんが来てくれる手前、あんまりカッコ悪いことはできないかなという思いはあります(笑)。
- モーモールルギャバン「IMPERIAL BLUE」
- 2018年9月26日発売 / Bellwood Records
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[CD]
1800円 / BZCS-1169
- 収録曲
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- IMPERIAL BLUE
- 7秒
- AI ha MABOROSHI
- 海へ
- やんなっちゃった BODY
- ツアー情報
モーモールルギャバンTOUR 2018「Yeahhhh!! ムチャしやがって」 -
- 2018年10月12日(金)東京都 LIQUIDROOM<出演者> モーモールルギャバン
- 2018年10月14日(日)愛知県 CLUB UPSET<出演者> モーモールルギャバン / Su凸ko D凹koi
- 2018年10月20日(土)大阪府 LIVE HOUSE Pangea<出演者> モーモールルギャバン / ビレッジマンズストア
- 2018年10月21日(日)福岡県 Queblick<出演者> モーモールルギャバン / 挫・人間
- 2018年10月27日(土)北海道 Spiritual Lounge<出演者> モーモールルギャバン / クリトリックリス / HANABOBI(オープニングアクト)
- 2018年10月28日(日)北海道 CASINO DRIVE<出演者> モーモールルギャバン / OVerHeAT(オープニングアクト)
- 2018年11月2日(金)宮城県 仙台MACANA<出演者> モーモールルギャバン / MASS OF THE FERMENTING DREGS
- 2018年11月3日(土・祝)岩手県 盛岡Club Change<出演者> モーモールルギャバン / and more(オープニングアクト)
- 2018年11月10日(土)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room<出演者> モーモールルギャバン / セックスマシーン / ふちなし(オープニングアクト)
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2018年11月11日(日)奈良県 奈良NEVER LAND
ユッカ凱旋記念ワンマン<出演者> モーモールルギャバン - 2018年11月17日(土)福岡県 LIVE HOUSE MARCUS<出演者> モーモールルギャバン / 首振りDolls
- 2018年11月18日(日)香川県 高松MONSTER<出演者> モーモールルギャバン / and more(オープニングアクト)
- 2018年11月23日(金・祝)鹿児島県 SR HALL<出演者> モーモールルギャバン / 姫と家来。(オープニングアクト)
- 2018年11月25日(日)熊本県 熊本Be.9 V2<出演者> モーモールルギャバン / Klagenicole(オープニングアクト)
- 2018年12月1日(土)京都府 磔磔<出演者> モーモールルギャバン / SAKANAMON
- 2018年12月2日(日)石川県 vanvanV4<出演者> モーモールルギャバン / and more(オープニングアクト)
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2018年12月8日(土)群馬県 高崎clubFLEEZ
矢島丸山凱旋FINAL SPECIAL 2MAN<出演者> モーモールルギャバン / and more
- モーモールルギャバン
- ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)、ユッカ(Key, Vo)、T-マルガリータ(B)からなる3ピースバンド。2005年4月に5人編成で活動を開始し、紆余曲折を経て現在の体制となる。関西地区を中心に活動を展開し、インパクトたっぷりのサウンドと破壊力抜群のライブパフォーマンスでリスナーを獲得。2014年5月より制作に集中するためライブ活動を休止するが、2015年3月からのツアー「蘇る無茶と野獣ツアー2015」でライブ活動を再開させた。2015年6月にレーベル移籍後第1弾作品にして3年3カ月ぶりとなるフルアルバム「シャンゼリゼ」を、2016年6月にミニアルバム「PIRATES of Dr. PANTY」を発売。2017年3月にクラウドファンディングでミュージックビデオ制作プロジェクトを展開し、支援金をもとに新曲「ガラスの三十代」のMVを制作した。5月に新作フルアルバム「ヤンキーとKISS」を発表。2018年9月に新作ミニアルバム「IMPERIAL BLUE」をリリースし、10月より全国17カ所を回るツアー「Yeahhhh!! ムチャしやがって」を開催する。