ドラマや映画で目覚ましい活躍を見せながら、アーティストとしても驚異的なスピードで進化を続けている宮世琉弥。3rdアルバム「Illusion」は、俳優とアーティストとして活動する“二面性”というワードから着想を得て、タイトルが名付けられた。全10曲のうち、宮世は7曲の作詞または作曲に参加している。
本作には“音楽と花”をテーマに宮世が作詞した「Flower chord」や、長谷川大介(ex. Aqua Timez)とともに作曲し、崎山蒼志が作詞した「ブラウンシュガー」、石崎ひゅーいと共作した「美貌録」、作詞作曲やアレンジ、プログラミングのすべてに挑戦した「We both think alike」など多彩な楽曲を収録。俳優として生きてきた日々が、確かな血肉となって音楽へと昇華されている。
音楽ナタリーでは宮世にインタビューを行い、音楽的なルーツからアルバムの制作過程まで話を聞いた。
取材・文 / 三橋あずみ撮影 / YOSHIHITO KOBA
自分じゃない誰かを“生きた”時間を音楽として形に
──2024年のアーティストデビューから丸2年が経過しました。俳優としての活躍も目覚ましい宮世さんですが、アーティストと俳優、2つの顔を持ち活動している現状をご自身でどう捉えていますか?
俳優活動と音楽活動のギアは、全然違うんです。でも“全然違うこと”を同時にやっているというのは自分の強みだと思っています。例えば、俳優としての活動の中で得た経験を変換して、自分の音楽に落とし込むことができる。演じた役柄のキャラクターなどからインスパイアされて曲を作ったり詞を書いたり……自分じゃない誰かを“生きた”時間を音楽として形にすることができたりするので、どちらの要素もすごく大切な感覚があります。
──俳優として生きた役柄の人格を、宮世琉弥の音楽に落とし込む。面白いですね。どちらか片方だけの活動だったらできないことですもんね。
ありがたいことに、いろんな作品に携わらせていただいていて日々勉強ばかりです。僕は皆さんを元気にしたいという思いを第一に活動をしているんですが、この楽曲制作の流れをルーティン化することによって、皆さんの日常に花を添えるというか、1つのエンタメとしても楽しんでいただけたらいいなと思っていて、「宮世くん、この作品に出演しているから、今演じているこの役の曲もいつかできるのかな」とか、そんな楽しみも生まれると思うんです。それは“演じること”に限らずで、昨年は「2025 TBSバレーボール」の応援サポーターをやらせていただいて、選手の皆さんを近くで見て感じたことを曲に落とし込んで「GRAVITY」というインスパイアソングを制作することができました。そういう表現ができるのは、アーティスト活動をしているからこそだと思うので、今後も自分の軸としてやっていけたらいいなと思っています。
──俳優活動とアーティスト活動のいい循環ができているんですね。労力的に「大変だな」と思うことはないですか?
もちろん大変だと思うときもありますが、楽しい思いが勝るというか、楽しいから続けられているという面はかなり大きいと思います。
──アーティスト活動をするうえで自ら楽曲制作をしようと思った、そのきっかけはどういったものだったんですか?
自分の力でみんなを元気にしたいという思いが僕の活動の軸にあって、“自分の声”で思いを届けたい、元気を届けたいと思ったのが始まりです。それを叶えるために作詞作曲の勉強をしようと決めて、ディレクターさんに話を聞いたり、座学で音楽の勉強をしたり……時間はかかっていますが、そうやって進んでこれた感じです。クリエイティブは、正解がないのがよさでもあり、難しさでもあるなと今は実感しています。
──演じた役柄からインスパイアされること以外に、普段から楽曲制作をするための種を集めたりも?
集めています。日常の中で起きたことや感じたことは、すごく細かくメモするようにしていて。それはもう癖になっています。小説などを読んで、そのときに感じたことを詞に落とし込むこともあります。あとは自分の周りの人から話を聞いて、それをもとに曲を作ったりもします。父と母から2人のなれそめを聞いて作った曲なんかもあって、それが今回のアルバムの最後に入ってる「We both think alike」という曲です。
──音楽ナタリーでソロアーティストとしてお話を聞くのはこれが初めてなので、ぜひ宮世さんの音楽的なバックグラウンドについても聞かせてください。以前、BLANKEY JET CITYのフォロワーとして、特集企画にコメントを寄せてくださったこともありました(参照:BLANKEY JET CITY×THEE MICHELLE GUN ELEPHANT特集|各界著名人が明かす、消えない影響)。
あのときは、1曲だけを選ぶのにすごく悩みました(笑)。ブランキーさんを好きになったのは自分が好きな洋服のブランドとコラボされていたのがきっかけなんですが、父にそのことを言ったら「ブランキー、昔俺が流して琉弥も歌ってたじゃん」と。ロックをよく聴く父も、ブランキーが大好きだったんです。そんな感じで父と話すうちに、もっと好きになっていって。ほかにもいろんな場所から刺激を受けています。SNSを通して出会ったり、レコードを探す中で「このアーティストの方はどんな感じだろう?」と聴いてみて、実際好きになったり。ただ、そうやって好きになった音楽と自分が発信する音楽は別のものという感覚があって。
──そうなんですね。
なんというか、感覚的には絵画を観ている感じに近いです。ブランキーさんやTempalayさん、Nirvana……好きなカルチャーはたくさんありますが、それを自分の音楽に落とし込みたいという気持ちはなくて。ただただ眺めて楽しんでいたい、みたいな感覚です。
愛しすぎているからこそ湧き出てくる“裏の感情”
──今回のアルバムのタイトルが「Illusion」。本当にイリュージョンのように1曲1曲の曲調も宮世さんの歌声も変化していく、聴き応えのある作品です。この「Illusion」というコンセプトは、アルバム制作スタートの段階から設定していたものなのでしょうか?
半々かもしれないです。「アルバムの世界観をこんなふうにしたい」という構想と、世界観を落とし込んだ曲作りを同時進行で進めていました。
──宮世さんは2024年4月に1stアルバム(「PLAYLIST」)、去年の3月に2ndアルバム(「Soleil」)と、1年に1枚のペースでアルバムを発表されています。アーティスト活動に専念していたとしてもかなり早いサイクルでのアルバムリリースだと思いますが、制作はいかがでしたか?
楽しくやらせていただきました。今回は半分以上の収録曲で制作に関わっているので、すごく濃密で。あとはやっぱり、石崎ひゅーいくんや崎山蒼志くん、長谷川大介さん(ex. Aqua Timez)と一緒に楽曲を作らせていただいたことで、自分自身学びもすごく多くて。本当に充実した制作期間だったと思います。
──宮世さんが制作に携わった新録曲を中心にお話を伺えたらと思いますが、まずはアルバムの1曲目を飾る「美貌録」。宮世さんと石崎ひゅーいさんが一緒に作詞作曲をされた楽曲です。
ひゅーいくんとはドラマ「パリピ孔明」で共演させていただいて、そのときから「一緒に曲を作ろう」と話していたんですが、けっこう時間が経ってしまって。今回アルバムを作ることが決まったときにお声がけして、ようやく念願が叶いました。曲作りに関しては、2人でスタジオにこもって、僕はギターを持ち、ひゅーいくんはピアノで、一緒にコード進行を決めてメロディを作りながら歌詞を当てはめていって、レコーディングして、そこからどんどんブラッシュアップしていった感じです。
──共作するうえで、「こういう曲にしたいな」というテーマは最初から設定していたんですか?
ありました。王道ラブソングと言うよりは、どこか影を感じるものを作りたかったので、愛しすぎているからこそ、自分の内側に湧き出てくる、側からは見えない“裏の感情”みたいなものを目がけて作っていった感じです。例えば歌詞で言うと「僕の悪い口癖も 僕の臆病な愛も 永遠に焼き付けておくれ」という部分。「臆病な愛も」と自分の弱さを見せつつ、それくらい、臆病になってしまうくらい愛しているんだと。マイナスな部分をさらけ出すことで愛の強さを示すような、そんな曲にしていきましょうということを話しながら作っていきました。
──ひゅーいさんとの制作作業はいかがでした? どんなことが印象に残っているでしょうか。
2人ともすごく感覚的で、それが特に印象的でした。もちろん理論もあるんですが、ニュアンスをより大切に「感覚で進めよう」みたいな部分があって。「このフレーズはすごくテーマに合っていて絶対入れたいから、ここをなんとしてでも入れられるように組み立てよう」という感じでした(笑)。この曲、サビとメロのギャップがあると思うんですが、そのギャップも「サビでバン!と“我”を突き出したいよね」という2人のイメージがあったからこその構成だったりします。いい意味でまとまり感がないけど、ニュアンスの統一感はある。歌詞に関しては特にそういう、2人の感覚を重視した表現になっているのかなと思います。
──「美貌録」というタイトルにも、お二人の美意識が表れているように感じます。すごくこだわりを感じるタイトルですが、これはどんなふうに付けられたんですか?
ひゅーいくんが付けてくれました。アイデアを聞いて「まさしくこの言葉だな」と思ったので、スタッフさんたちともお話して「それでいきましょう」と。僕も造語でいろいろと考えたんですが、この「美貌録」が一番スッと曲になじむ感覚があったので、このタイトルに決定しました。
──ボーカルの質感も印象的でした。宮世さんの歌声に生々しさがあって、アルバムを再生して1曲目からガツンと来る感覚に驚かされるというか。
けっこう裏切ってますよね?
──はい、「Illusion」というキラキラとしたタイトルのアルバムの1曲目だと思って聴くと、かなり意外性があると思います。
よかったです。「美貌録」を歌うときは、誰かのことを好きすぎて狂ってしまうような感覚をイメージして、役者としてこの楽曲の世界観に浸りました。想像で“演じる”ことがあるなかで、演技だけど本物として聴かせる、その表現には役者としての技術を使う感覚なんです。曲のテイストによって感情の入れ方が違うので、今回のアルバムの曲も歌声が全部同じには聞こえないと思います。そういった声のニュアンスは、すごく大事にしています。





