吉野北人(THE RAMPAGE)が主演を務める映画「遺書、公開。」が、1月31日より全国で公開される。
陽東太郎による同名マンガをもとにした本作の物語は、私立灰嶺学園2年D組の新学期、担任と生徒24人に“序列”が送られたことから展開される。人気者で誰もが認める優等生・姫山椿は序列1位に選ばれるが、その半年後に突然自殺。クラスの全員に姫山から遺書が届き、彼らは自殺の真相に迫るべくクラスメイトの前で自分の遺書を公開することになる。吉野が序列19位の池永柊夜を演じたほか、宮世琉弥、志田彩良、松井奏(IMP.)、髙石あかり、堀未央奈、忍成修吾も出演。鈴木おさむが脚本を手がけ、「東京リベンジャーズ」シリーズの英勉が監督を務めた。
映画ナタリーでは姫山が自殺する前の劇中時間の9月頃、2年D組の教室に掲出されたという学級通信をお届け。新学期から半年が経った生徒たちの平穏な日常が確認できると思いきや……? 序列に支配された生徒たちの本性を知りたい人は「裏の顔は?」をクリックしてみてほしい(ネタバレを含むので注意)。さらに後半には、学園ミステリーの新境地となる本作の解説も掲載している。
文 / 大畑渡瑠
映画「遺書、公開。」予告編公開中
※「裏の顔は?」にはネタバレが含まれるので注意
2年生になって半年!楽しかった行事を振り返ろう!
体育祭
みんなで力を合わせたね!津島くんが実行委員をやってくれたおかげですっごく楽しかった。対抗リレーではアンカーで負けて2位になっちゃったけど、次は優勝を目指してがんばろうね!!
みんなで力を合わせたね!津島くんが実行委員をやってくれたおかげですっごく楽しかった。でも対抗リレーはアンカーの姫山さんのせいで2位……。序列は1位なのに、2位。なんでだよ!? あんな走り方するくらいなら、辞退する選択肢もあったよね?
文化祭
クラスでの演劇は準備が大変だったけど、達成感ハンパなかった!主役はみんなの推薦で姫山さんに。森本さんの熱心な指導もあって、役と一心同体になっているように見えたよ。成功して本当によかった。
クラスでの演劇は準備が大変だったけど、達成感ハンパなかった!主役はみんなの推薦で姫山さんに。序列1位なんだから、主役になるのは当然だよね?森本さんが熱心に指導してくれたけど、演技は下手だった……。
クラスメイト紹介コーナー 今月はこの6人!
-
池永柊夜くん
序列19位ちょっと控えめだけど、クラスメイト思いで包容力があって、とにかくいいやつ。電車が好きでよく橋の上から見てる。特に周都線がお気に入り。
姫山の自殺の真相探しをしているにもかかわらず、なかなか自分の遺書を公開しようとしない。何か訳が…?
-
千蔭清一くん
序列16位常に冷静沈着で、頭がいいクールイケメン。たまに嫌味をこぼしたり、皮肉めいた発言をすることも。普段は何を考えてるんだろう?
家では母親からの過剰な“愛”にうんざり。クラスのみんなを“愛”し、自分の小さな言葉も拾ってくれた姫山に抱いていた感情は……?
-
赤﨑理人くん
序列2位勉強もスポーツもそつなくこなしていてかっこいい。姫山さんとの少女マンガみたいなカップルに、みんな憧れてる!
序列2位には納得いかない。姫山と付き合ってたことにはある理由が……。ほかの女子のことはどう思っていたのだろう。
-
廿日市くるみさん
序列20位いつも1人で絵を描いているけど、実はクラスのみんなのことをよく見てるし、とっても詳しい。池永くんと仲がいい。
人間観察は好きだけど、ちょっとエスカレートしちゃうところも。池永とは何を話してるの?
-
御門凛奈さん
序列3位姫山さんと1年生の頃からずっと一緒にいる親友。テニス部でもダブルスを組んでいる。明るくていつもみんなを盛り上げてくれるムードメーカー!
誰かの悪口を言ってるときが一番楽しそう。姫山から借りていたマンガも読んでないようだったし、2人は本当に親友同士……?
-
姫山椿さん
序列1位もはや紹介するまでもないけど、学級委員でクラスの人気者!誰にでも優しいし、ずっと笑顔でなんでも受け入れてくれるから、みんな頼りにしてる。
ずっと1位になりたかったけど、実際になったら周囲の期待と失望に苦しむことに。頼れる人は誰もいない……。
遺書を公開し合うことで、生徒たちの本性や関係性がくっきりと浮かび上がる
“遺書”が生徒たちの本性をあぶり出すという、斬新な物語設定が見どころ。姫山の葬儀後、教室に戻った生徒たちはすべての座席に白い封筒が置かれていることに気付き、戦慄する。それは彼女からクラスメイトに届けられた最後の手紙(遺書)だった。生徒たちは1人ずつ順番に教壇に立ち、遺書を読み上げていく。その行為によってくっきりと浮かび上がってくる、各生徒の教室内での位置付けや、クラスメイト同士の関係性。イケメンの人気者、スポーツマン、ガリ勉優等生……彼らは公開処刑のように壇上に立たされることで、自供するかのごとく“裏の顔”を見せてしまう。本性をあらわにして“闇落ち”した人同士には奇妙な連帯感があり、羽が生えたかのような自由な振る舞いを見せるシーンにも恐怖が。生徒たち全員に遺書公開=本性の公開というプロセスが用意されているという物語構造の巧妙さや、彼らが新学期から半年の間どのような人間としてクラスの中で生きてきたかという過去を想像させる余白も魅力となっている。
フレッシュな俳優たちが表裏のある高校生を鬼気迫る表情で怪演。もう全員ヤバい
主演を務めた吉野北人は、物静かで受け身な性格である池永柊夜を好演。俯瞰的にクラスメイトたちを見つめつつも、事件の中心人物として“ある過去”を抱える人物を絶妙なバランスで体現する。そして脇を固めるのも、フレッシュかつ実力派である俳優陣。宮世琉弥はミステリアスな役どころながら後半に人間らしい表情を見せていく千蔭清一を飄々と演じ、志田彩良はクラスメイトへの目線に鋭さを持つ廿日市くるみをクールに表現した。とりわけ鬼気迫る演技が印象的だったのは、赤﨑理人役の松井奏と、御門凛奈役の髙石あかりだ。松井は初の映画出演となった本作で、これまで培ったアイドル像をキャラに反映しながらも中盤で意外な一面を見せてくれる。「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで注目を集めた髙石は、本作でも強い眼力で鑑賞者を釘付けにして離さない圧倒的なパワーを見せつけた。さらに物語の起点となる重要人物・姫山椿役には堀未央奈が起用され、笑顔の裏に孤独や葛藤をのぞかせる繊細な演技を披露。そのほか上村海成、島鈴遥、藤堂日向、菊地姫奈、大東立樹、鈴川紗由ら注目の若手俳優も多数参加しており、担任教師・甲斐原誠に扮した忍成修吾を含め、もはや“全員主役”であるような狂気のアンサンブルを堪能できる。
教室というワンシチュエーションで、スクールカーストの恐怖を赤裸々に映し出す
監督を務めたのは「東京リベンジャーズ」シリーズや「賭ケグルイ」シリーズなど群像劇を多数手がけてきた英勉。今作では2年D組の生徒と担任教師を含めた計25名のキャラクターたちの関係が次々に変動していく複雑な物語を、教室というワンシチュエーションで見事に成立させた。 脚本は一昨年に放送作家の引退を表明した鈴木おさむが担い、英と「ハンサム★スーツ」以来16年ぶりのタッグに。2人は遺書を公開するシーンに関して「生徒たちが外の世界から隔絶された“入れ物”にいるように描きたい」というアイデアのすり合わせを事前に行っていたという。その目論見通り、教室がクローズドな空間として何が起こるのか予想がつかないマジックボックスのような機能を果たしており、“箱”に入れられた生徒たちはやがて叫び狂っていく。英は本作を“人を見る映画”と表現しており、序列によっていやが応にも自分と他者を比べて一喜一憂する高校生の生きづらさや滑稽さ、周囲からのまなざしが心の闇を生むというスクールカーストの恐怖が赤裸々に映し出される。