音楽ナタリー Power Push - 宮野真守

多忙なマルチプレイヤーの飽くなき挑戦

テレビアニメや映画などさまざまな作品で声優として活躍しながら、アーティストとして日本武道館のステージに立ち、夏にはミュージカル俳優として帝国劇場の舞台を踏んだ2016年の宮野真守。この秋は自身が声優として深く関わるアニメ2作品の主題歌をシングルとして同時にリリースし、年末に向けては過去最大規模のツアーへと挑む。音楽ナタリー8度目の登場となる今回のインタビューでは、役者として多忙な日々を送りながらも飽くなき挑戦を続ける、宮野の音楽への思いを聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃

ナタリー全ジャンルを制覇する男、宮野真守

──アルバム「FRONTIER」以来およそ1年ぶりのインタビューなので(参照:宮野真守「FRONTIER」インタビュー)、この1年の宮野さんの活動履歴を確認してみたんですけど……ちょっと働きすぎじゃないですかね?

あはははは(笑)。そんなことないですよ(笑)。

──アルバム発売後にツアーがあり、多数のテレビアニメや映画での声優業、さらにはミュージカル「王家の紋章」への出演(参照:ミュージカル「王家の紋章」早くも再演決定!2017年4月帝劇、5月大阪で)もあって。音楽ナタリーのみならず、映画ナタリーやコミックナタリーにも今年は宮野さん出ずっぱりなんですよ。お笑いナタリー以外は。

出てみたいなあ、お笑いナタリー(笑)。

──あ、ありました(笑)。笑福亭鶴瓶さんやバナナマンさんが主軸ですが、映画「ミニオンズ」の舞台挨拶レポートが(参照:鶴瓶が映画「ミニオンズ」日本語吹き替えに参加「ミニオン落語も作れます」 / バナナマン「ミニオンズ」舞台挨拶、日村「オネエっぽい感じで一発OK」)。全ナタリーを制覇する中で、今年はシングルを4枚もリリースするという。

はい。結果的にそうなりましたけど、新しいチャレンジはどんどんしていこうと思っていたので。めちゃめちゃ仕事してるというよりも、今年はいろんな見せ方をさせてもらえているなあという実感です。

──これだけ役者としての仕事が多忙を極めていたら、音楽活動をセーブしてもよかったと思うんですけど、そうしなかったのはなぜですか?

今、自分が何を求められているのか、そして自分が何を求めているのか。そのバランスが今はいい状態にあって、うまく具現化できるタイミングだったからだと思います。自分が求めていても、周りから求められていなかったら、それに挑む場すら与えてもらえないわけで。それが合致してきたからこその現状だと思うので、今は立ち止まりたくなかったんです。

上松範康とゼロから作った「テンペスト」

──宮野さんが声優として参加されている新作アニメが続々と発表される中で、2作品のテーマソングを宮野さん自身が担当し、かつ同時にシングルリリースされるというインパクトが、より「働きすぎ」な印象を強めているのかもしれません。シングルの2作同時リリースは今回が初めてですよね。

そうですね。本当にたまたま、作品の公開タイミングが重なっただけなんですけど、いい機会をいただけたなと思って。

──まずは15thシングルとなる「テンペスト」について聞かせてください。こちらはおなじみ「うたプリ」シリーズの第4期「うたの☆プリンスさまっ♪ マジ LOVE レジェンドスター」の主題歌ですが、爽やかなダンスチューンだった前シリーズの主題歌「シャイン」(参照:宮野真守「シャイン」インタビュー)から一転、シリアスな雰囲気で。これはつまり、アニメ第4期の方向性を示唆するものなのでしょうか。

宮野真守

はい。制作スタッフから「波乱の第4期になる」とストーリーを伺ったので、そこから「嵐=テンペスト」というキーワードを導き出して。そのあと打ち合わせを進めていく中で、上松(範康。音楽クリエイター集団「Elements Garden」の代表。「うたプリ」シリーズでは音楽のみならず原作も手がける)さんとは初めてなんですけど、一緒にスタジオに入ってゼロから作るというやり方をしたんです。「うた☆プリ」に関しても音楽に関しても、4期まで一緒に作り上げてきた今だからこそ言える思いがお互いにあったので、ゼロから一緒に作ることで細部まで研ぎ澄ませることができました。そこで上松さんと意見を交わすのが面白くて。

──どんなお話を?

音楽を作る上でどういうことを大事にしているのか、お互いの意見が絶妙に混ざり合っていくんです。1つのフレーズのメロディを決めるのにも「僕はこの音には着地したくなくて……」と僕から細かい意見を出して、上松さんは「なるほど、宮野くんはそう行くんだね。頭の中でグルーヴが鳴ってるからそっちに行くんだろうなあ」って。

──同じコードでも、メロディをどう展開してどこに着地するかで印象は大きく変わりますよね。上松さんは今回メロディラインにまで宮野さんの意見を取り入れていると。

コード進行にも意見を出させてもらいました。上松さんの中には、アニメのテーマソングを作る上でのセオリーとして、盛り上がるコード進行があるそうなんですが、そこに僕の意見を取り入れてくださって、少し変わってきたり。また、上松さんも「こういうことがやりたいんだ」というアイデアを、その場で弾いて教えてくれたりして。そうやってセッションしながら作り上げた結果、「うた☆プリ」の世界観を表現しながら、2人の持ち味がいい形で混ざり合った楽曲になったと思います。

MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2016 ~MIXING!~
  • 2016年10月29日(土)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2016年10月30日(日)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2016年11月12日(土)愛知県 愛知県体育館
  • 2016年11月19日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2016年11月26日(土)福岡県 アルモニーサンク北九州ソレイユホール
  • 2016年12月3日(土)富山県 高岡市民会館
  • 2016年12月4日(日)長野県 ホクト文化ホール
  • 2016年12月10日(土)香川県 サンポートホール高松
  • 2016年12月17日(土)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2016年12月18日(日)神奈川県 横浜アリーナ
宮野真守(ミヤノマモル)

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でアーティストデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2013年10月には初の日本武道館公演「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2013 ~TRAVELING!~」を大成功に収め、2015年2~3月に開催された全国ツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~」では最終公演として日本武道館2DAYSを行った。2016年は「HOW CLOSE YOU ARE」「SHOUT!」「テンペスト」「The Birth」と計4枚のシングルをリリース。夏には東京・帝国劇場で上演されたミュージカル「王家の紋章」に出演し、新たな一面を見せた。