音楽ナタリー Power Push - 宮野真守

多忙なマルチプレイヤーの飽くなき挑戦

痛々しいまでに張り詰めた表現だからこそ伝わるもの

──「The Birth」はMVも迫力ある映像になりましたね。

情熱的な「テンペスト」とはまた違った、激しいMVができました。すごくダークな世界観だとは思うんですけど、美しくアーティスティックなビジュアルが作れたかなと思うので、満足しています。

──全身を拘束されてもがくシーンはスチームパンク的なムードで、今までになく痛々しさを感じるハードな演出ですよね。ちょっとおぞましさを感じるような。

そうですね、まさに。でもきっと、痛々しいまでに張り詰めた表現だからこそ伝わるものがあると思うし、こういうときには極限まで振り切ったほうがいいと思ったんです。

──拘束された男が黒い涙を流して、最後は何かをつぶやいて終わるという意味深な映像になっています。

MVの監督が「Reborn」というテーマを提示してくださったんですけど、映像で抑圧された世界から解放されて、自分の意志を見せていくという表現が見せられたんじゃないかなと思います。

双方が刺激し合うような関係性

──それぞれ主題歌となった作品の世界観に寄り添った楽曲ながら、シングル2枚が対になっているような印象も受けました。

そうなんですよね。「うた☆プリ」と「亜人」それぞれの作品の世界観を守ることが第一で、曲調もビジュアルも全然違うものを作っているはずなのに、どこか共通するところがあったり、気が付けば対比した表現になっていたり。どちらも形は違えど、自分が今だからこそできる表現を突き詰めた結果、双方が刺激し合うような関係性になっている気がします。

──カップリング曲はどちらも新しいクリエイターチームと組んだダンスミュージックですが、それぞれ表題曲のテイストに合った楽曲がセレクトされている印象を受けました。

宮野真守

そこは意識しました。それぞれシングルの持つ世界観が表現できる1枚にしたくて。「うた☆プリ」はシリアスなだけじゃなく楽しい雰囲気も大事にしたかったので、少しレトロなディスコサウンドが合うんじゃないかなと。「Sugar, Sugar」の歌詞は、意中の女の子と並みいるライバルがいるような甘くてかわいらしい世界観にしたくて。「Gravity」は「The Birth」とは異なる愛の側面というか、過酷な世界の愛を描いた「The Birth」、出会えた奇跡を喜び合うかけがえのない愛を描いた「Gravity」という形で歌詞をつづってもらいました。

──偶然のタイミングとはいえ、単体で出すシングルとも違う、かと言ってアルバムやミニアルバムとも違う楽しみ方ができる作品になりましたね。

ありがとうございます。作業は同時進行で大変でしたけど、僕も作っていて面白かったです。

「MIXING!」はいろんな表現が織り混ざったお祭り騒ぎ

──シングル発売後にはツアーが控えています。宮野さんのツアーは毎回タイトルがその内容を示唆するものになっていますが、今回は「MIXING!」ということで、いったい何をミックスするのかなと。アイデアはもう固まっているんですか?

前回はアルバム「FRONTIER」を携えてのツアーだったので、アルバム制作段階からライブを意識していたんです(参照:宮野真守、日本武道館の中心で「自分の“最前線”をまた一歩前に」)。自分でも非常に満足のできるツアーができたので、すぐに次のアイデアは浮かばず、いつものごとく一旦空っぽになってました(笑)。それからしばらく、舞台などそれぞれの仕事に集中する日々が続いた中で、ふとイメージが降りてきたんです。1つのテーマを絞り出すのではなく、別の方法があるんじゃないかと。

──前回のツアーがかなり作り込まれたものだっただけに。

そうやって1つのテーマを元にライブを作り上げていくのが自分のスタイルだと思うんです。意志を持って自分がやりたいことを見せるのがライブだという気持ちがあったので、当たり前に1つのテーマを絞り出そうとしてたんですよね。でも、そろそろ制作に取りかからないとツアーの準備ができないという時期になってもなかなか浮かばなくて。そんなとき、ふと「なんで1つのテーマに絞らなくちゃいけないんだろう」という逆転の発想が浮かんだんです。「いろんな宮野真守を見せる」というテーマもいいんじゃないかなって。冒頭におっしゃっていただいたように、今年は本当にいろんなことをやってきたので。

──いろんな活動があって、2枚同時発売のシングルでもそれぞれ異なる表情を見せて、このツアーで年末を迎えるという。

そうです。今回に限らず、シングルはどれもそれぞれの世界観を持ったものだから、あえて曲ごとの世界観をしっかり見せていくライブも面白いかもしれない。いろんな表現が織り混ざった、ミックスされたお祭り騒ぎがやりたいな……ハッ、“MIXING!”だ! みたいな。

──なるほど。

すぐに打ち合わせをして趣旨を話したら、スタッフのみんなからも意見がどんどん出てきて楽しかったですね。盛り上がるツアーになりそうです。

──宮野さんにとって2016年は本当にいろんなことがあった1年だと思うんですけど、結果として「いろんな表情を持っているのが宮野真守」というのを証明するような1年だった、という感じですね。今日の話を聞いていると。

本当にそうですね。……なんだか、きれいにまとまっちゃいましたね(笑)。

MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2016 ~MIXING!~
  • 2016年10月29日(土)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2016年10月30日(日)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2016年11月12日(土)愛知県 愛知県体育館
  • 2016年11月19日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2016年11月26日(土)福岡県 アルモニーサンク北九州ソレイユホール
  • 2016年12月3日(土)富山県 高岡市民会館
  • 2016年12月4日(日)長野県 ホクト文化ホール
  • 2016年12月10日(土)香川県 サンポートホール高松
  • 2016年12月17日(土)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2016年12月18日(日)神奈川県 横浜アリーナ
宮野真守(ミヤノマモル)

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でアーティストデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2013年10月には初の日本武道館公演「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2013 ~TRAVELING!~」を大成功に収め、2015年2~3月に開催された全国ツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~」では最終公演として日本武道館2DAYSを行った。2016年は「HOW CLOSE YOU ARE」「SHOUT!」「テンペスト」「The Birth」と計4枚のシングルをリリース。夏には東京・帝国劇場で上演されたミュージカル「王家の紋章」に出演し、新たな一面を見せた。