音楽ナタリー Power Push - 宮野真守

挑戦と経験の先にある“最前線”

宮野真守の通算5枚目となるオリジナルアルバムが完成した。その名も「FRONTIER」。アルバムの冒頭を飾るリード曲では、ゆっくり踏みしめるような力強さで「今は ここが最前線」と繰り返し歌われている。音楽活動8年目、すでにアリーナクラスの会場を埋める人気を誇る宮野が、それでもなお挑戦を続ける理由はなんなのか。ロングインタビューでそのあくなき探究心とフロンティアスピリッツに迫った。

取材・文 / 臼杵成晃

経験を積んだ僕だからこそできる新しい何か

──まずアルバムタイトルの「FRONTIER」ですけど、これはなかなか壮大なテーマですね。

今回はテーマに悩んだからこそ大きく出たというところもあるんです。アルバムとしては2年ぶりなんですけど、シングルはコンスタントに出していて。そのたびに自分の中でテーマを探しながら、アイデアを振り絞りながら作ってきて……今年の前半、アルバム制作の前にはライブツアー(「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~」)もあったんです。これもまた「AMAZING!」という、大きく出た感のあるテーマでしたから(笑)、全力で挑んだ結果、ツアーが終わった頃には自分の中にあるものをすべて使い果たしたような、空っぽの状態でした。

──一旦ゼロになったところから。

宮野真守

はい。それでもツアーのあとにはすぐアルバムを制作すると決めていたので、どんなテーマで作ろうかと考えたときに、正直悩みました。いつもしっかりコンセプトを打ち立ててから構築したいと考えているし、それがその後のライブにも反映されていくのが僕のスタイルなので。

──すでに発表されていますが、アルバム発売後には日本武道館2DAYSを含む全国ツアーがありますしね。そこまで見据えた展開を。

そうなんです。僕の楽曲は、ライブで表現することも考えて制作していくので、ツアーで何をやりたいかというのもアルバムに反映されていきます。ありきたりに聞こえてしまうかもしれないけど、今までとは違う新しい何かをここでしっかり構築しないと進んでいけないなと思ったんです。そこで「新しい何かを見つける」ということ自体をテーマにしたらいいんじゃないかなって。新しい自分を開拓していく、新しい答えを見つけていくこと。もちろんこれまでも常に新しい答えを探してきましたけど、今までやってきたこととは違う、経験を積んだ僕だからこそできる新しい何かが見つかると思ったので、改めてこのテーマで構築していこうと思って「FRONTIER」というタイトルにしました。

──「FRONTIER」は辺境、最先端という意味があり、またフロンティアスピリッツ=開拓精神という言葉が浮かびます。このタイトルを聞いたときは、「宮野さん、まだ掘り進めますか」と思ったんですよ。

あはは(笑)。ありがとうございます。いやあ、掘り続けるでしょ!(笑)

──30代に突入して、声優としてのキャリアも着実に積んで、アーティストとしてもアリーナクラスの会場を埋められるような人なんだから、もう少しどっしり構えて大御所になる準備を始めていいんじゃないかと。でも「経験を積んだ僕だからこそできる新しい何か」という言葉で腑に落ちました。

きっとどれだけ自分が経験を重ねても、ずっと続くと思うんですよ。むしろ着実に自信が身に付いていると実感できているからこそ、このテーマに向き合うことができるのかなとも思います。

最前線を目指していきたい

──アルバムはそのタイトルを背負った新曲「FRONTIER」で幕を開けます。この曲は盟友STYさんと一緒に作られていますが、このコンセプトに基づいてどのように作り上げていったのでしょうか。

この「FRONTIER」というコンセプトに対して、曲よりも先にジャケット写真のイメージが浮かんだんです。音楽的にやりたいことがいくつかある中で、まずはビジュアル面で新しい見せ方ができないかなって。ビジュアルイメージを先に作って、自分の中の「FRONTIER」に対して発破をかけるというか。自然の風景から導き出されるものではなく、自分たちで作り出したものにしたくて……アートをテーマにビジュアルを作ったらどうなるかなって思ったんです。抽象的なイメージでビジュアルを作ったことはなかったし、そうすることで自分にとってのアートをどう表現できるかと考えて。

──確かにこれまでの作品ではロケ撮影やスタジオで作り込んだ写真が多かったし、モノクロ写真が使われているのも珍しいですね。

そうなんです。ブックレットにも面白い技を使って表現したビジュアルがたくさん詰まっているので、そちらも楽しんでもらえたらなと。そうやってまずは新たな挑戦であるアートなビジュアルイメージを作って、そこから「FRONTIER」というコンセプトをどう音楽に落とし込むかを考えたときに、STYさんと一緒にゼロから楽曲を築き上げていきたいと思ったんです。2人きりで会議室に籠って、今回の作品にかける思いをただ伝えただけじゃなく、どういう道をどういう思いで歩んできたから今ここにいるのか、お互いのルーツを探るようなところまで赤裸々に話していきました。

──スタッフも介さず、本当に2人だけで。

はい。お茶を飲みつつ世間話も交えながら、最終的に身の上話に(笑)。僕がどうやって役者になったのかというところから信念など全部話したら、STYさんも自分がやってきたことや大事にしていることをたくさん話してくれて、その部分にすごく共鳴したんです。これまでも音楽について話したり、ごはんを食べながらの世間話もたくさんしてきましたけど、今までお互いに触れていなかった深い話をすることができました。「FRONTIER」は自分のアルバムコンセプトとして掲げたものだったけど、結果STYさんと思いを1つにして作っていくことができたので、僕らの赤裸々な思いが込められたかなと思います。

──人間として共鳴した上で、改めて一緒に曲作りを進めたと。

歌詞のことだけじゃなく、楽曲についてもしっかり話しました。激しすぎず、ゆっくりすぎもしない、しっかり1歩1歩踏みしめて歩いていくようなテンポで歌いたいと伝えたら、STYさんはアンダンテ……「歩くような速度で」というキーワードを出してくれて。しっかり前を見据えて歩いている男、真摯な思いを背中で語るような楽曲にしたいねということで曲作りを進めました。さわやかさもありつつ、でも言葉は芯のある強い言葉を選ぼうとか、本当に細かいところまで考えて。

──まさにイメージ通り、しっかり地面を踏みしめながら歩いていく力強さを感じるサウンドだなと感じました。今までSTYさんと作ってきた音楽ともまた違う、新境地ですよね。そして「FRONTIER」という言葉の持つメッセージとして、「今は ここが最前線」というフレーズが繰り返されています。

そうでありたいという希望ではありますが、自分にしかできない表現を開拓していくこと、自分が立っているこの場所が最前線だと自信を持って目指していきたいという思いを込めて歌っています

──最前線を求めて「すべてを壊しても」前に進んでいこうとする一方で、「いつも君が横に いてくれるから」という守る者の存在もしっかり描かれているのが「ズルい! カッコよすぎる!」と思ったんですよね。

あはははは(笑)。

──アルバム全体に言えることですけど、開拓者精神を持ってアグレッシブに進んでいく中で、見守ってくれるファンや周りの人の存在と感謝の思いが、ニクいほどちゃんと描かれているなあと。

この曲をひとりぼっちの歌にはしたくない、という思いが僕にもSTYさんにもあって。とはいえ肩を組んでいく歌でもない。でも、しっかり見守ってくれる人がいるからこそ歩いていけるんだということをちゃんと書きたかったんですよね。

宮野真守 ニューアルバム「FRONTIER」2015年9月16日発売 / KING RECORDS
Blu-ray付き初回限定盤 [CD+Blu-ray+フォトブック] / 3888円 / KICS-93258
DVD付き初回限定盤 [CD+DVD+フォトブック] / 3888円 / KICS-93259
初回特典:スペシャルケース仕様&フォトブック(32P)封入
通常盤 [CD] / 3240円 / KICS-3258
CD収録曲
  1. FRONTIER
    [作詞:宮野真守、STY / 作曲・編曲:STY]
  2. BREAK IT!
    [作詞・作曲・編曲:STY]
  3. Evolve
    [作詞:Amon Hayashi / 作曲・編曲:Jin Nakamura]
  4. Naked Tango
    [作詞:由潮 / 作曲・編曲:市川淳]
  5. Fight for love
    [作詞・作曲・編曲:SHOW]
  6. NEW ORDER
    [作詞・作曲・編曲:STY]
  7. TRUST ME
    [作詞:WISE / 作曲:TSUGE、Jae / 編曲:TSUGE]
  8. Can't Ever Let You Go
    [作詞・作曲:marhy / 編曲:久保田光太郎]
  9. Magic(WEST LA REMIX)
    [作詞:Amon Hayashi / 作曲・編曲:Jin Nakamura]
  10. DON'T STOP!
    [作詞:宮野真守、Amon Hayashi / 作曲・編曲:高橋浩一郎]
  11. シャイン
    [作詞:宮野真守 / 作曲:上松範康(Elements Garden) / 編曲:藤田淳平(Elements Garden)]
  12. ただ、そばにいて
    [作詞・作曲:由潮 / 編曲:菊池達也]
DVD / Blu-ray収録内容
  • BREAK IT!(Music Video)
  • シャイン(Music Video)
  • FRONTIER(Music Video)
  • MAKING
  • MAMO in L.A.2014
  • NEW ORDER -Another Edition-
宮野真守 ライブDVD / Blu-ray「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~」2015年11月18日発売 / KING RECORDS
Blu-ray Disc / 7344円 / KIXM-210~1
DVD / 7344円 / KIBM-526~7
宮野真守(ミヤノマモル)

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でアーティストデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2013年10月には初の日本武道館公演「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2013 ~TRAVELING!~」を大成功に収め、2015年2~3月に開催された全国ツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~」では最終公演として日本武道館2DAYSを行った。同年9月には通算5枚目となるオリジナルアルバム「FRONTIER」をリリース。11月18日には前述の日本武道館2DAYSからツアー千秋楽となった2日目の模様を収めたライブBlu-ray / DVD「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2015 ~AMAZING!~」が発売される。