三浦透子|声がここまで連れて来てくれた、透明から始まる物語

自分が誤解されることに抵抗がない

──いつかアーティストデビューしたいという気持ちはなかった?

なかったですね。

──役者もシンガーも表現としては一緒だって言う方もいらっしゃいますけど。

アーティストの方は主体性がすごく大事だと思うんです。私が自分を表現する欲って、役者をやってても十分満たされるんですよ。あと今回はあくまで女優・三浦透子がCDを出すという形ですけど、それで自分が誤解されることに抵抗がないんです。

──世間からどういうふうに見られても構わない?

例えば今回のアルバムは、きっと柔らかさや透明感っていう形容詞がすごく合うものになったと思うんですけど、私の周りにいる人たちが私のことをそう思うかっていうと、実はそうでもないような気がしていて。でも、別にそこに対してフラストレーションを感じたりはまったくしないんですね。

──ギャップに苦しむっていうこともない。

なくて。だから、歌が芝居と同じ表現だっていう感覚に今はまだなれてないんですよ……あ、嘘だな、それは。歌ってる最中の感覚は一緒でした、今回において言えば。ただ、アルバムを作るってなったときは、歌うっていう行為だけじゃなくて、その過程があるじゃないですか。制作っていう。

三浦透子

タナダユキ監督に「声がいい」って見つけてもらった

──自分から「私、歌いたいんです!」と手を挙げた始まりではなかった。透子さんの場合は本人の意志とは別に、音楽のほうから近付いてきてますよね。

ホントにそういう感じなんですよ。近付いてきてるというより、私の声がすごく音楽と距離の近いところにあるなっていう感覚なんですね。でも今回、音楽畑にいる人たちと触れ合ったりレコーディング作業を経験したりして、面白いなって思うところがいっぱいあったし、せっかくこんなにありがたい状況にいるので、続けていきたいなっていう気持ちは確実にあるんです。そういう意味で今、声がいる場所に頭とか心とかが追い付いていったらいいなと思っていて。自分というよりも声に連れて来てもらったみたいな感覚がありますね。

──少し戻って、声に注目が集まったのは、2015年に大島優子さんが出演していたテレビCM「ミノン全身シャンプー」で歌った「お母さんへ」という曲でした。これはどういう経緯で歌うことになったんですか?

そのCMの監督が、2014年に出演したライオン株式会社のテレビCM「働く女性への応援歌」編の監督でもあるタナダユキさんで。タナダさんに「声がいい」って見つけてもらったそのCMが歌うことのスタートだったんです。ワンフレーズ口ずさむくらいの感じだったんですけど、タナダさんに「すっごい声がいいから歌ったほうがいいよ」って言われて。いいと思っていただいたのはありがたかったんですけど、もちろんお世辞だと思ったから、まさか本当に歌のお仕事をもらえるとは思ってませんでした。

──そのあと、実際にCMソング「お母さんへ」のオファーをもらったわけですよね。

素直にうれしかったです。私、自分の声を武器にできるかもしれないって勝手に思ってましたけど、人に言ったこともなかったですし、人から言われたこともなかったので。この先、面白い仕事につながるかもしれないっていうのはなんとなく思ったし、単純に好奇心としてすごいうれしかったですね。

三浦透子
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