音楽ナタリー Power Push - みきとP

自分の声とボーカロイド それぞれに感じる可能性

少人数で作るのが好き

──アルバムにはボカロ曲のセルフカバー、歌い手への提供曲のセルフカバー、書き下ろしの新曲などさまざまな楽曲が並んでいますが、これまでの膨大なディスコグラフィの中からどう収録曲を選んでいったのでしょうか?

みきとP

けっこういろいろ考えたんですけど、満遍なくバラエティに富んだ内容にしようと思ったのと、歌いやすいものを選んだらこの曲たちがそろってました。

──「いーあるふぁんくらぶ」が“ぼっち多重録音バージョン”として収録されています。先ほど話していた“歳相応”の熟練感の出ているアレンジだと感じました。

「いーあるふぁんくらぶ」を今、自分がアレンジしたらどうするかなって考えて、できたのが今回のバージョンですから。ある意味楽曲を客観的に見ることができて、この曲はまだまだ遊べるなと思いました。原曲よりアレンジはシンプルなんですが、そぎ落としていくことで「いーあるふぁんくらぶ」には芯があるってところを見せられたと思っています。

──なぜそれを1人でレコーディングしようと?

僕、そんなに知り合いがいないんですよ(笑)。知り合いは少ないし、新しい人とやると緊張するし。実は少人数でものを作るのが好きで、この曲はエンジニアの方と2人っきりで作った曲ですね。自分が演奏した楽器の音が重なっていくのってめっちゃ楽しいんですよ。ドラムだけ録ってるときは何もないのにベースを入れるとどんどん曲っぽくなっていって……。僕は各楽器のスペシャリストではないですけど、ある程度1人でもグルーヴは生み出せている気がしたんです。「ある程度おいしいごはんが1人で作れるようになってきた」って感覚かもしれませんね。

──「ぼっち幸福論」のMVには、実際にみきとさんが各楽器のレコーディングに臨む姿が収められています。

ドラムとか、あたかも叩ける人っぽく映ってますけど、実はスタジオに入ってかなり練習しています(笑)。DTMをやっていたから頭では叩けているんですけど、そこに体がついてこないんですよね。スタジオミュージシャンとかすげーなって改めて思いました。

──動画の後半には三線を演奏するシーンもあって、本当になんでも弾けるのかと驚きました。

三線は自前の楽器なんですよ。動画の撮影のとき初めて人前で弾いたくらいですけど、その何週間か前に買って家で練習してて。意外と弾けました(笑)。

──いろんな楽器を集めているんですか?

コレクターって感じではないんですけど、必要な楽器はけっこう買いますね。鍵盤ハーモニカ、トライアングル、鈴、カスタネットとか。レコーディングのときに一応持っていくんですよ。何か困ったときにとりあえず出してみて「いいじゃん!」ってなるときがたまにあって。そういえば昔、バンドをやっていた頃はそういう楽器をレコーディングに使おうとはあんまり思ってなかったですね。レコーディングを重ねるうちに世界が広がったというか、いろんなことを考えられるようになりました。

レベルが上がるコラボ相手

──アルバムの通常盤にはボーナストラックとしてもじゃさんこと大柴広己さんとのコラボ曲「サブトラの最終定理」が収録されています。そもそもどういう経緯で2人のコラボが実現したんですか?

みきとP

僕が出演しているライブをもじゃさんが観ていたらしく、Twitterに「みきとさんいいな」ってつぶやいていただいたことがあって。僕は前々からもじゃさんのことを知っていたからうれしくて、「一緒にやりましょうよ」って声をかけたのがきっかけですね。彼と何か1曲一緒にやったら、僕のレベルも上がるかなと思って。

──「サブトラの最終定理」は“みきもじゃ”という名義の楽曲ですが、曲を作ったのはどちらだったんですか?

今回はもじゃさんに楽曲の叩きやテーマを作ってもらいました。その代わり「編曲は任せろ」みたいな感じで作り上げました(笑)。もちろんお互いで作ったところもありますけど、基本的にはもじゃさんの世界観に乗っかってる感じです。

──実際ご一緒してみていかがでしたか?

ギター1本で全国を回っている方なんで、やっぱりグルーヴがあるなあと思いました。歌もしっかりしてますし。制作中はもじゃさんのレスポンスがすごく早くて、「ここやってください」ってお願いすると、次の日にもう「録りました」って返ってくるんですよ。ホントすげーなと思って。一緒にやって勉強になりましたね。

ニューアルバム「MIKIROKU」 / 2015年11月18日発売 / EXIT TUNES
限定盤 [CD+DVD] 3024円 / QWCE-00526
通常盤 [CD] 2484円 / QWCE-00527
CD収録曲
  1. きゅりあす
  2. 夕立のりぼん
  3. 刹那プラス~Woody Arrange~
  4. あのこサーティースリー
  5. バレリーコ
  6. クノイチでも恋がしたい / with みきと会
  7. Telephone Juice / with バグってるひと
  8. おもふといふ
  9. 京都ダ菓子屋センソー
  10. 夏の半券
  11. いーあるふぁんくらぶ ~ぼっち多重録音Ver.~
  12. Hanabi
  13. 走馬灯
  14. ぼっち幸福論
  15. サブトラの最終定理 / みきもじゃ(みきとP×大柴広己[もじゃ])※通常盤のみ
DVD(限定盤のみ)
  • きゅりあす MV
  • バレリーコ MV
  • ぼっち幸福論 MV
  • おもふといふ MV
  • 刹那プラス~Woody Arrange~ MV
  • 京都ダ菓子屋センソー MV
  • メイキングofぼっち幸福論
  • おまけ映像
みきとP「『MIKIROKU』発売記念LIVE "MIKIROCK BYPASS"」

2015年12月27日(日)東京都 下北沢GARDEN
OPEN 16:15 / START 17:00

コラボグッズ販売情報
ヴィレッジヴァンガードFREAKS渋谷パルコ×みきたまごとゆかいな仲間たち

販売期間:2015年11月17日(火)~12月27日(日)
販売場所:東京都 ヴィレッジヴァンガードFREAKS渋谷パルコ

みきとP(みきとぴー)
みきとP

VOCALOIDを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP、シンガー。「小夜子」のような心を揺さぶるシリアスなギターロックから「いーあるふぁんくらぶ」をはじめとするアッパーなディスコポップまで、幅広いタイプの作品を発表している。2013年4月に初音ミクをフィーチャーした初のオリジナルアルバム「僕は初音ミクとキスをした」をリリースした。2015年7月にはみきとP自身が歌唱する楽曲「きゅりあす」をシングルとして発表。11月に本人歌唱曲のみで構成されたアルバム「MIKIROKU」をリリースする。また12月には東京・下北沢GARDENにてワンマンライブ「『MIKIROKU』発売記念LIVE "MIKIROCK BYPASS"」の開催が決定している。