ナナヲアカリの新作ミニアルバム「マンガみたいな恋人がほしい」が4月8日にリリースされる。
本作のテーマは「“変”愛」。Souとデュエットした最新シングル曲「チューリングラブ feat. Sou」(参照:ナナヲアカリ「チューリングラブ feat. Sou」特集 ナナヲアカリ×Sou対談)、みきとPが作曲した「逆走少女」、DECO*27が作詞作曲、TeddyLoidが編曲を担当した「もしも信者」、煮ル果実の提供曲「ヒステリーショッパー」、ナナヲが自ら書き下ろした「MISFIT」「note:」が収録される。
音楽ナタリーではナナヲに加え、「逆走少女」を作曲したみきとP、同曲のミュージックビデオを制作した動画クリエイター・からめるを迎えてインタビュー。時代の流行や空気に逆行して生きる女の子の姿を描いた楽曲とMVの制作エピソードを聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 斎藤大嗣
ナナヲアカリがまだやっていないロックを
──今回は「逆走少女」の作曲を手がけたみきとPさんと、MVを制作したからめるさんにお越しいただきました。作曲やMV制作などの人選はすべてナナヲさんによるものなんですよね?
ナナヲアカリ はい。ナナヲの趣味100%です。ミニアルバムにどんな曲を入れようか考えていたとき、強めのギターリフがチャキチャキ鳴っているロックな曲をやりたいなと思いまして。それこそ「バレリーコ」のようなイメージの曲を歌いたくて、まずみきとさんに相談したんです。そうしたらみきとさんから「作詞をてにをはさん、編曲をemon(Tes.)さんにするのはどう?」と提案していただいて。
みきとP お話をいただいてから、まずはナナヲさんの曲を全部聴いて、まだやっていないことを探してみたんです。「ロックな感じ」とは伺っていたんですが、ロックといってもいろいろある中で、どんなことができるかなと考えているうちに、今回はちょっと遊びを入れたロックにしようと思い付いたんです。てにをはさんは言葉選びがすごくうまい人なんですよ。以前も共作したことがあるんですけど、ナナヲさんにすごく合うんじゃないかなと思って。
──emonさんに編曲をお願いしたのはなぜですか?
みきとP 実は僕とてにをはさんとemonさんは、いつもけっこう一緒に遊んでいる仲なんです。ナナヲさんを取り巻くちょっと楽しそうな雰囲気、遊べる空気感を曲で表現するなら作り手である僕も楽しむ必要がある、みたいなことを思い付いて、いつもの3人で楽しみながら曲作りをしてみたくなったんです。
──「逆走少女」という曲のテーマはナナヲさんのアイデアだったんですか?
ナナヲ 最初は“から回ってる主人公”くらいのイメージでした。がんばればがんばるほど空回りしてしまってうまくいかねー!みたいなことはナナヲ自身にもいっぱいあって。そういうことを勢いよく歌うロックな曲があったらいいなと。
みきとP 曲作りにおいて、遊ぶことが許される相手と許されない相手がいると思うんですよ。ナナヲさんはいい意味でどう遊んでも許されるというか、むしろ遊んだほうがいいような印象で。僕ら3人もけっこう盛り上がって曲を作りました。
最初はすごくかわいい女の子だった
ナナヲ 曲ができあがったときに思い浮かんだのが、からめるさんが描く猫さんが暴走して爆発しているところだったんです。それで、MVの制作をからめるさんに依頼しました。
からめる ありがとうございます。でもどこで僕のことを知ったんですか?
ナナヲ Twitterですね。リツイートでからめるさんの猫の動画はよく流れてくるんです。「うわ、この猫かわいい!」ってずっと思ってました。
からめる ナナヲさんのことは依頼が来る前からもちろん知っていて、むしろ一方的にファンだったんです。だからこういう依頼が来てビックリしたうえに、作曲があのみきとPさんだなんて……こんなしょーもない猫が爆発している動画がMVでいいのかなと。
みきとP そもそもMVを作るのは初めてですよね?
からめる 昔、一度だけ短いインスト曲のMVを作ったことはありましたけど、今回のように長い尺のMVを作るのは初めてですね。しかも僕、普段は猫しか描いていないんですよ。
ナナヲ 「逆走少女」では、からめるさんに女の子のキャラクターを描いてもらったんです。てっきり猫が主人公のMVになると思っていたから、ラフをいただいたときに「え、からめるさんって人間描けるんだ!」と思いました(笑)。
からめる いやあ、猫は秒で描けるんですけど、人を描くのはメチャクチャひさしぶりで。思ったよりも描けなくて苦労しました(笑)。
ナナヲ 最初のラフではすごくかわいい女の子を描いてもらったんですけど、もうちょっと逆走してる感が欲しくて、目をぐるぐるさせてもらいました(笑)。
からめる 最初のキャラデザは目にハイライトが入るくらいのすごく笑顔がまぶしい子でしたね(笑)。失礼のないようにちゃんとかわいい子にしようと張り切ってしまって……MVの中で上半身が地中に埋まって足をバタバタさせるシーンがあるんですけど、かわいい女の子キャラだったらここまではっちゃけられなかったと思う(笑)。
タライかすき焼きか
みきとP 「逆走少女」という曲は、いい意味ですごくクレイジーな作品だと思っていて。僕やてにをはさん、emonさんの力だけじゃなくて、ナナヲさんというボーカリストがこれまで培ってきたキャラクターやキャリアも必要だったし、さらにそれをクレイジーな動画にまとめてくれたからめるさんの力もあってのことだと思うんですよね。
ナナヲ レコーディングのときもクレイジーでしたよね(笑)。
みきとP 実は歌詞を2パターン用意しているところがあって。「すすす 言えるかー!」のあとにタライの音が入るパターンと、「すすす すき焼き!」というパターン。
ナナヲ けっこう悩んだんですよね。どっちにするか。
みきとP タライの音はね、挑戦だったんですよ。ナナヲさんチームに向けて「こんな音も入れちゃいましたけどどうします? アリですか?」みたいな。
ナナヲ そうだったんですね! タライの音がすごく印象的だったのもあって、「言えるかー!」のほうを採用したんです。タライはMVでもちゃんと描かれますよね。
からめる 映像を作る際はすき焼きバージョンの音も一緒にもらっていたんです。もしこれがOKテイクになったら、きっとタライの代わりにすき焼きを降らしていたんだろうな(笑)。
ナナヲ 怖っ! タライが落ちてくるより何倍も危ないよ!(笑)
みきとP 僕は「言えるかー!」のほうがちょっとライブ向きかなと思って推してました。あの部分、ちょっと音が遠く聞こえるようにしているんですよ。
ナナヲ うんうん。
みきとP それはライブでマイクを離してお客さんに向けて叫ぶイメージがあったから。「逆走少女」はライブでお客さんを巻き込んで盛り上がってほしいんですよね。
からめる この曲のコール&レスポンスのところに男の人の声が入っているじゃないですか。あれってもしかして……。
ナナヲ みきとさんの声ですね(笑)。あとレコーディングに立ち会っていただいたてにをはさんにも参加していただいて。
みきとP 現場にいる人みんなで声を入れたんですよ。実際のライブでは男性も女性も関係なく声を出してもらいたいし、レコーディングのときのわいわいした感じも入れたくて。そういえばMVにライブハウスが出てくるんですよね。ちゃんとライブを意識したことが伝わっていてうれしかったな。
からめる みきとさんたちが声を入れている「い・え・い・え」と繰り返すところ、猫たちが一斉に少女にエールを送る絵を描いているんですけど、動画にしていてすごく楽しいところでした。
ナナヲ そこの動き、本当にイメージ通りでドンピシャでした!
みきとP 本当に、やってもらいたいことを具現化してもらった感じでした。ありがとうございます。
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ジャンルを超えて使われる爆発