ミドグラは挑戦の場、タイアップ曲「Moonlightspeed」の制作秘話を星街とイノタクが語る

星街すいせいとTAKU INOUEの音楽プロジェクト・Midnight Grand Orchestraによる新曲「Moonlightspeed」が9月14日に配信リリースされた。

「Moonlightspeed」はモスバーガー「月見フォカッチャ」のCMのために書き下ろされた曲。オーケストラを生かしたポップソングでありながら、壮大なスケールのミドグラ流スペースパンクに仕上がっている。音楽ナタリーでは星街とTAKUに「Moonlightspeed」の制作過程はもちろん、始動してからこれまでに起きた変化、思い描く今後の活動について語ってもらった。

取材・文 / 杉山仁

互いを刺激する歌詞

──Midnight Grand Orchestraの活動がスタートして約5カ月が経ちますが、その間にも1stミニアルバム「Overture」のリリースや初ライブ「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の開催など、さまざまな出来事があったと思います(参照:星街&イノタクのMidnight Grand Orchestra「居心地最高!」の豪華ステージで初ライブ)。お二人が特に印象に残ったのはどんなことですか?

TAKU INOUE まずは「3月頃、忙しかったなあ……」ということです(笑)。あの頃は1stミニアルバム「Overture」のレコーディングが集中していたので。

星街すいせい とにかく曲を覚えて、歌詞を書いて。

TAKU 毎週のようにレコーディングしていたんですよ。

「Overture」ジャケット

「Overture」ジャケット

──ソロとして活動していたお二人がユニットを組むという意味でも挑戦だったと思うので、余計に大変そうですね。

TAKU そうですね。せっかくユニットを組んだので、いつもとは違う曲の作り方をしたいと思っていて、曲作りはずっと試行錯誤していた思い出があります。その中で「こうすれば、すいせいさんが歌いやすいのかな?」ということも、日に日にわかるようになってきました。

星街 私は日に日に自由になってきてる気がします。最近も、レコーディング中に「ちょっと走ります!」と言って突然走りに行ったりとか。そういうフリーダムな空気なんです(笑)。

TAKU ミドグラでは作詞を2人で担当していて、最近はその作業に慣れてきた感覚があります。ユニットをやるうえで、作詞も作曲も自分名義だといつもと変わらないなと思ったのと、「Stellar Stellar」(星街の1stアルバム「Still Still Stellar」収録曲。参照:星街すいせい「Still Still Stellar」インタビュー)のときにすいせいさんが作詞できることを知っていたので、ミドグラでは「ぜひやってください」と僕からお願いをしました。

──「Stellar Stellar」のときは、星街さんの希望で歌詞を担当することになったんですよね。

星街 お風呂に入っているときにふと歌詞が浮かんで、「このフレーズを入れたい!」とイノタクさんに伝えたんですよ。でも、ミドグラでは、最初は歌うだけのマシーンになろうと思っていました。そうしたら、イノタクさんに「歌詞も書いてください」と言われて、「えっ、歌詞を書くマシーンにもならなきゃいけないんですか!?」って(笑)。

──お互いの歌詞のどんなところに魅力を感じていますか?

TAKU 僕は歌う人間が歌詞を書いたほうが歌唱がよくなると思っていて、また「Stellar Stellar」での経験から、特に「夜」というテーマを設けたときの我々の趣味趣向はわりと近いのかなと感じていました。自分で書かなくても、もともとのイメージからブレすぎない歌詞になる気がする。すいせいさんは、日に日に韻の踏み方もこなれてきていますよね。

星街 共作するときにイノタクさんから韻を踏みまくっている歌詞が届くと、「ああ、私も韻を踏まなきゃ……!」という気持ちになって、いろいろとがんばりました。イノタクさんって、口に出すのが楽しい言葉を選んで歌詞にするのがうまいと思うんですよ。なので、そのリズム感を崩さないようにしなきゃと意識して。

──まさにユニットならではのお話ですね。

TAKU すいせいさんは作詞がホントに上手で、僕も勉強になることが多いですよ。あと、ミドグラの場合は自分が意見するというより、相手に裁量を任せている部分があります。すいせいさんは事前にすごく考えてきてくれますし、そのアイデアをそのまま生かす瞬間が多いのかな、と。あくまですいせいさんが一番いいと思うものをパックしたいので、もらったものに対してあまり手を加えたりしないんです。

星街 おかげさまですごく歌いやすいです。本当に好きなように歌ってる、という感じですね。

星街のホーム・バーチャル空間でのライブ

──今お二人が思う「ミドグラっぽさ」というと、どんなものなのでしょう?

星街 ミドグラは「SOS」(1stシングル曲)でデビューして。ロボットっぽいサイバーな雰囲気で、オーケストラの要素が入っている……「音楽を武器とする戦隊」のイメージです。そういう方向性はどの曲にも共通しているのかなと思います。

──「SOS」の歌詞にも出てくる武器「アレグロ」を使って戦うわけですね。

TAKU 音楽だけでなくアートワークも含めて、「ミドグラっぽいな」と思う要素が確立されてきたことを僕も実感しています。

──8月20日には初ライブがバーチャル空間で行われました。「SOS」のミュージックビデオの世界観を拡張したセットなども印象的で、パフォーマンスも演出も、ものすごいクオリティのライブでした。

星街 すごいセットを用意していただいて、私たち自身もびっくりしました(笑)。

TAKU 楽曲としての「SOS」やプロジェクトが解禁された際のキービジュアルの世界観をベースに、ライブ制作チームの皆さんがさらに深掘りしてあのセットを作ってくれました。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

──ライブの中で特に印象的だった瞬間はありますか?

TAKU 僕は「Rat A Tat」がグルーヴィで、バンドのよさも出ていて、アーカイブでも何回も観ちゃいました。あと、あの曲はすいせいさんの歌がよかったんですよね。

星街 なんかハマっていましたね。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

TAKU 確か、歌った直後にも「すごくいい」と伝えた気がするんですけど、あの「Rat A Tat」は音源を超えるほどいい歌だったんじゃないかと思います。

星街 私も、ライブが終わってから「Allegro」と「Rat A Tat」の部分をよく観ているんです。最近は喉の調子があまりよくなかったんですけど、あの日はよく歌えて、特に「Allegro」と「Rat A Tat」はいい感じだったな、と思っていて。演出だと「3時12分」で円形のステージに時計の盤面が出てくるところも「天才やん!」と思って感動しました。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

──イノタクさんと星街さんが宇宙空間の中で次元を超えてステージに立っている姿もよかったです。

TAKU そうですよね。でもバーチャルの世界でライブするのはすごく大変なんですよ。

星街 逆に私はバーチャルな人間なので、皆さんが住む世界に行くほうが大変だったりするんですよ。

──星街さんからすると、リアルの次元にいる人たちがバーチャル側に来てくれるのも新鮮だったんじゃないですか?

星街 そうですね。普段は私たちが現実世界に呼ばれることのほうが多いので。しかも、あれだけ高いクオリティのセットでライブできたのはうれしかったですし、お金もたくさんかかりますけど、今後もどんどんやりたいと思いました。

TAKU 僕もまた“宇宙”に行きたいですね。今回のライブで勝手がわかったので、次はもっといろいろなことに挑戦できるな、と。

──ライブを観てくれた方々の反響はどうでした?

TAKU まずは純粋にセットに驚いてくれた人も多かったのかなと思います。「イノタクがバーチャルにいる」とか「ポリゴンの数多いな」って。

星街 (笑)。バーチャル界隈のみんなも「あの世界観はすごいね」と言ってくれました。バチバチにライトを焚いていたり、周りのビル群もライティングのひとつになっていたりして、どこをとっても本当にきれいでしたね。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

「Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE "Overture"」の様子。

──こうした試みが増えることで、ライブの可能性がより広がりそうな感覚もありました。

TAKU そうですよね。今度はこっちの次元にも来てもらいたいですし。それに、最近も花譜さんが武道館でライブをやったりと、この分野では同時進行的に面白いことがいろいろと起こっているような気がしています。