星街すいせい|恒星のように輝くアルバムを手に新たなステージへ

6月よりデジタルシングルを3カ月連続でリリースしている星街すいせいが、1stアルバム「Still Still Stellar」を9月29日にリリースした。

“個人勢”として2018年に活動を始め、VTuberグループのホロライブが展開するレーベル・イノナカミュージックへの所属、そしてその後ホロライブへの加入という異例の経歴を歩んできた星街。1stアルバムには「NEXT COLOR PLANET」「天球、彗星は夜を跨いで」「駆けろ」といったこれまで発表してきたオリジナル曲に加え、TAKU INOUE提供の新曲「Stellar Stellar」など計12曲が収録される。星街の活動の集大成とも言える1stアルバム完成までの軌跡を追いながら、彼女が今作に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 森山ド・ロ撮影 / 前田立

ステージ上で口にした目標が現実のものに

──1stアルバム「Still Still Stellar」は初のソロアルバムであり、これまでの活動の集大成とも言える作品だと思います。どのような思いで制作に取りかかったのでしょうか?

アルバム自体は前から作りたいなと思っていて、なんとなくですが自分の中でも勝手に計画を進めていました。運営さんに「こういう感じでアルバムを作るのはどうでしょうか?」と打診していたら、「じゃあ作りましょう」という話になって。ホロライブの中でソロアルバムを出すのは私で4人目なんですが、せっかくなので全国流通で出したい気持ちがあったので、全国流通させるならどんな感じで売り出していくのかを一生懸命考えながら制作に取りかかりました。

──アルバム制作を意識し始めたタイミングはいつ頃ですか?

「ノンストップ・ストーリー」(2020年1月に東京・チームスマイル・豊洲PITで開催されたホロライブの全体ライブ)で、「オリジナル曲でアルバムを出したいです」と宣言したときですね。その瞬間から「アルバムを出す」というのが自分の中の目標になりました。

──アルバムを出すと宣言してから、約1年8カ月の時を経てその目標が叶うことになったわけですね。

アルバム制作が決まったときは「よかったー! 作れる!」と思って、素直にうれしかったですね。ホロライブは人数が多くて、私だけ何かしてもらえることがなかなか難しい中で、ちゃんとアルバムを作る方向に向かえてよかったなって。ただうれしいことばかりではなくて、アルバム作りに関してはいろいろ大変なこともあって……。

──どんなことが大変でしたか?

一番大変だったのは、納期との戦いですね(笑)。カツカツなスケジュールの中で制作に取りかかったので、何日までに歌詞ができないといけない、何日までにデモができてないといけないとか。一時期は1週間まるまるアルバムのレコーディングに追われて大変でした。

星街すいせい

派手で、明るくて、元気で、おしゃれで、さらにエモい

──アルバムのタイトル「Still Still Stellar」というキャッチーな言葉にはどういう意味が込められているのでしょうか?

タイトルは私が決めたんですけど、そもそもタイトルの提出自体も納期に追われていて(笑)。「何日までに決まってないとヤバいです」みたいなことを言われている中で、やっぱり自分のモチーフになっている「星」になぞらえた何かしらのワードは入れたいというのだけは決めていました。

──そこから「Stellar」という言葉が採用されたんですね。

そうです。アルバムと同時に進めていたライブの制作の人とライブタイトルを考えているときに、「Stellaはどうですか?」とか「Galaxyは?」「Andromedaもいいね」みたいに候補をもらって、そこから「Stella」という言葉を使うことにしたんです。「Stella」は「星」を意味するラテン語で、そこからちょっとスペルを変えると英語の「Stellar」になるみたいで。英語だとそれが「恒星」「輝く星」という意味になるから、そこに惹かれて「Stellar」を使って語呂のいいタイトルをひねった結果、こうなりました(笑)。

──アルバムタイトルと同じく「Stellar」という単語が使われた曲「Stellar Stellar」は、「3時12分」に続くイノタク(TAKU INOUE)さんとのコラボ曲第2弾です。制作はどのように進みましたか?

「3時12分」でご一緒した時に、私の声とか歌い方、ニュアンスみたいなものをすごく気に入ってくださったみたいで、「『3時12分』でお世話になったんで、できる限り希望に沿って超がんばってネリネリするのでなんでも言ってください!」と言われました(笑)。それで2人でいろいろと意見交換する中で、私から「ライブのこういうところで歌いたいです」と伝えたところ、作っていただいたのが「Stellar Stellar」という楽曲です。ライブのどこで流れるかというのは、まだ内緒なんですが……。

──ではライブの使いどころ以外ではどのようなことを意見交換で伝えましたか?

最初に届いた音源がバラード感強めだったので「もっと派手で、明るくて、元気で、おしゃれな曲で、さらにエモい、みたいにして欲しいです!」と超アバウトな希望を伝えちゃいまして(笑)。私、イノタクさんが(月ノ)美兎ちゃんに提供した「アンチグラビティ・ガール」がすごく好きなんですよ。エモいんだけど、ちょっとおちゃらけた感じのサウンドをイノタクさんに出してもらいたくて、いろいろ要望を伝えさせていただきました。

──「3時12分」とはガラッと雰囲気の違う曲に仕上がりましたよね。レコーディングの工程などで2つの楽曲の制作に違いはありましたか?

実はそんなになくて、「3時12分」より「Stellar Stellar」のほうがコーラスが多かったくらいですね。以前対談させていただいた際にも、イノタクさんはけっこうディレクションするタイプと話していたんですが(参照:TAKU INOUE×星街すいせい「3時12分」インタビュー)、「3時12分」の収録でも「Stellar Stellar」の収録でも、「いいね! もう1回! いいね! じゃあ次行こうか!」みたいにすごくテンポがよくて(笑)。「本当にこれでいいのかな」と思っていたんですが、「言うことないんで大丈夫です」と言ってもらえたので、自分のイメージしてたものがそのまま出せました。

──「3時12分」の作詞はイノタクさんでしたが、「Stellar Stellar」の作詞はすいせいさんが担当しています。これは最初から決まっていたんですか?

もともと「Stellar Stellar」はイノタクさんが歌詞を書く予定だったんですけど、「私に書かせてください」と打診して、歌詞を書かせていただくことになりました。私はこの曲をアルバムの表題曲にしようとずっと前から決めていて、アルバムリリースとライブ開催を並行して考えていたから「Stellar Stellar」にはアルバムとライブをつなげる役割を担わせたかったんです。なので、今回は歌詞を書かせていただきました。どのようにアルバムとライブがリンクしているかは、ライブを観て確かめてほしいですね。

星街すいせい

3周年の記念日に生まれた代表曲

──アルバムに収録されている「NEXT COLOR PLANET」は、すいせいさんの代表曲として数々のライブで歌われている印象が強い1曲です。この曲はどういう背景で生まれたんですか?

納期に追われていた思い出しかないですね(笑)。私はもともとイノナカミュージックに所属していたんですが、レーベルの方針とかいろいろあってホロライブに移籍することになって。それで、移籍してすぐくらいのタイミングで3月22日の周年記念日に向けてオリジナルソングが作れることになったんですが、そのときにはもう時間があまりなくて……。そんなときに作曲家の酒井拓也(Arte Refact)さんが私のカバーした曲を聴いてくれたみたいで、DMを送ってくれたんです。その返しに「私、Arte Refactさんに曲書いてもらうのが夢なんです!」とお伝えしたら、急ピッチでいろんな確認や制作をしていただき、記念日に向けて「NEXT COLOR PLANET」という楽曲を作っていただきました。私にとって1年ぶりのオリジナルソングだったので、すごく思い入れがあるし、リスナーさんにとっても待ちに待った1曲だったんだろうと思います。

──VTuberイベントの至るところで「NEXT COLOR PLANET」が流れていましたし、コミュニティの中でよく話題に上がっていた1曲でもありますが、すいせいさん自身はなぜここまで人気が出たと思いますか?

正直、私がどうではなくて、酒井さんすごいなって感じです(笑)。

──(笑)。すいせいさん自身の魅力も人気につながっていると思いますよ。イベントでも披露する機会が多かった「NEXT COLOR PLANET」を歌うときに意識していることはありますか?

この曲、めちゃくちゃ難しいんですよ。制作の前に、私が自分の出せる最低音と最高音を提出したら、「せっかく高いところまで出るので、いただいた最高音まで入れてみました」と言われて(笑)。一応、その最高音から-2下げた音源も用意していただいていたので、聴き比べてすぐ-2の音源にしようと決めました。それとサウンドプロデュースをしていただいた桑原聖(Arte Refact)さんから「3年目の周年の曲だから、展開を3段階にしました」と伝えられていて、1サビが1段階目、2サビのBメロが2段階目、ラスサビが3段階目というように少しずつ盛り上がっていく曲なんです。ライブで歌うときはこの3段階を上手に表現したくて、いろいろ工夫しながら披露しています。