Mia REGINA|大人アニソン系ユニット、5年目の決意表明

転機になった「I got it!」

──これだけいろんなタイプの楽曲があるので、歌い分けなど工夫されていることも多いと思います。ボーカル表現でとくに意識したこと、新しく挑戦したことなどを教えてください。

リス子 私にとっては、「I got it!」が転機になりました。今までの私はニュアンス担当みたいなところがあって、世界観をより濃くする、彩りを添えるみたいなイメージで歌ってたんですけど、この曲では「私が引っ張らなきゃ!」と思って。それまで「これをやるとうるさくなっちゃうかも」と抑えていたものを全部解放してみたら、それでも2人はどうにかしてくれることがわかったんで、もう抑えるのはやめようと(笑)。しかも、それを一度やったことで、そのあとに別の曲を従来の抑えめの感じで歌ったときにも、より表現力がアップしたんです。

──一度10を出したことのある人が出す5と、5しか出せない人の5とでは全然違うという。

リス子 そうですそうです。

──リス子さんの特徴的な歌唱法というと、やはりコブシですよね。コブシと呼んでいいのかはわかりませんが(笑)。

リス子 ですね。コブシを効かせるのはクセみたいな感じです(笑)。

──そのコブシの分量調節がものすごく精密な印象があります。それによっていろんなテイストを使い分けているのかなと。

リス子 トゥーマッチになるとコントになっちゃうので(笑)、一番感情が直で伝わりやすい分量を探りつつ、やりすぎてうさんくさくならないようにしています。練習で1回、コブシを全開にして歌うんですけど、それをスマホとかで録ってみると「しつこい!」となるので(笑)、そこから削っていく感じですね。

──その分量は意識的にコントロールしているんですね。

リス子 しています。曲ができたばかりのときは歌割りが決まっていない場合もあるので、絶対に取りたいパートがあったり、「こう歌いたい」という明確なプランがあるところは、すごく細かく調整しますね。

ミアレジのバランサーならではの悩み

──若歌さんはいかがですか?

霧島 ボーカル録りで一番印象に残っているのは、「Endless Warp Zone」ですね。歌っていてめちゃくちゃ楽しかった(笑)。今までにないくらい楽しいレコーディングで、疲れとかよりも「この曲をずっと歌っていたい」という気持ちが勝っちゃって、エンドレスに楽しかったです。

──初めて歌を歌った人みたいな感想ですけど(笑)。

霧島 あははは、確かに(笑)。ヘレン・ケラーの「ウォーター!」みたいな(笑)。

リス子 若歌様の好きな作家さんだったからね。

霧島 そう、田淵智也さんがディレクションしてくださったんですけど、そのやり取りも楽しくて。道筋をすごくしっかりと示してくれて、いろんな可能性を探ってくれるみたいな。私が「ここは楽しく歌ってみたんですけど、どうですか?」と聞いたら、「そういうのもいいなと思ったけど、抑えめのバージョンも聴いてみたいから歌ってみてよ」とか、「じゃあ、今度はめちゃめちゃ弾けてみよう」「ここはもっと母性を出して、包み込むように」みたいに、いろんな自分が引き出されている感じがしました。

──なるほど。決め打ちで1つの球種の精度を上げていくのではなく、試しにいろんな球を投げてみた中からベストを選ぶみたいな。持ち球を全部使える楽しさがあったんですね。

霧島 そうですね。今まであまりなかったやり方だと思います。

──実際、若歌さんのボーカルは3人のうちで最も球種が豊富で、万能な印象があります。どちらかというと飛び道具的な2人に対して、その間を取り持つバランサーというか、常にどっちにも行けるように絶妙なポジションを取り続けるボランチのようなイメージです。

霧島 確かに、そんな感じはあります(笑)。

──ご自分でもその意識があるんですか?

霧島 ありますね。一番ちょうどいい場所を探しながら、“正解”をたどるようにしています。だからこそ、飛び抜けたものが欲しいとも思うんですよ。今回のアルバムを作っている最中も、「何か1つ飛び抜けて私にめちゃくちゃ合うテイストはないだろうか」とずっと考えていました。まだ答えは出ていないんですけど……。

──万能選手ならではの悩みですね。とはいえ、そのチームがいいチームかどうかはボランチで決まるので、そこはプライドを持ってやっていただきたいです。

霧島 ありがとうございます(笑)。

リス子 新たな役職ができたね。ボランチ・霧島若歌(笑)。

難しく考えすぎなくなりました

──楓裏さんがボーカル的に気をつけたことは何かありますか?

上花楓裏

上花 今まではけっこう、「この曲にはこの歌い方がベストだろうな」みたいに曲本位で考えてたんですけど、自分の歌い方のベストで歌うようになりました。そこが違いますね。

──それは何かきっかけがあったんでしょうか。

上花 うーん……あまり難しく考えすぎなくなりましたね。

──逆に言うと、ずっと難しく考えていた?

上花 はい。「曲に合わせるには、どう歌うべきなのかな」と考えてました。でも、そうやって考えて出したものがディレクションとかで変わっちゃうことが多かったので、曲に寄せるんじゃなくて「とりあえず自分はこう」という歌い方でやってみようと。結局「それが一番いい」みたいになるので。

──今作の「HUMAVOID」などに、まさにそういうものを感じました。曲自体はすごくシリアスなムードなのに、楓裏さんはしれっと“かわいい”を放り込んでいる印象があって。

上花 カッコよく歌おうとすると……ダメなんです(笑)。ダメっていうか、無理している感じが出ちゃうなと思って。ディレクションでも「無理しないで、自分の感じで歌っていいよ」と言われることが多いので。

──かと思えば、例えば「純正エロティック」なんかはもっとブリブリにかわいく歌ってもよさそうな曲なのに、意外とクールめに歌っている印象です。そのバランス感覚が面白いなと思いました。

上花 そうですね……でも、歌い方を特別意識したのは「Dear Teardrop」くらいで、ほかは全然。自然にそうなった感じですね。