マルシィ2ndアルバム「Candle」をメンバーインタビュー&関係者コメントで紐解く (3/3)

マルシィをよく知る3人に聞いた「Candle」の聴きどころ

最終ページには、ロッキング・オン・グループの海津亮氏、Spotifyの芦澤紀子氏、音楽プロデューサーの本間昭光氏によるコメントを掲載。マルシィをよく知る3人だからこそ感じるバンドの魅力、「Candle」を聴いた感想について執筆してもらった。

海津亮(ロッキング・オン フェスプロデューサー、「ROCKIN'ON JAPAN」編集プロデューサー)

ロッキング・オンロゴ

マルシィの魅力

初めてマルシィを観たのは2021年暮れの「MERRY ROCK PARADE」でのステージだった。その時に感じた鮮烈な印象は今も自分の脳裏に焼き付いている。フロントに並ぶ3人から発せられる香り立つ様な色気。特にセンターに立つ吉田右京のそれは別格であり、そして左右に並ぶ2人を含めたバランスが抜群だった。華を持てているか、というのはアーティストにとって後天的な努力ではどうすることも出来ない、ある意味とても残酷な基準だ。彼らは生まれながらにしてそれを持っている。演奏に関しては、とても及第点を付けられるレベルではない、というのが正直な感想だったが、それは僕の評価においてなんら本質的な問題ではない。実際それから2年、数多くのステージに立ち続けたマルシィのバンドアンサンブルは劇的に進化して今に辿り着いている。

「Candle」を聴いて

アーティストはその生涯において一回だけ“出世作”と呼ばれる作品を世に残すことになる。仮に後年それ以上のセールスを記録する作品をたくさんリリースすることになっても、出世作を作ったタイミングに起きる様々なケミストリーと興奮は一度しか訪れないものだ。「Candle」とはマルシィにとってそんなアルバムであり、これから彼らはその特別な季節を謳歌していくことになるだろう。前作「Memory」を発表してからの1年半の間に出した「大丈夫」や「アリカ」「ラズベリー」といった代表曲も含んだタームベストとも言えるこの作品は、切なくて共感できる右京の歌詞、歌声、メロディーが凝縮された珠玉の一枚だ。
先行配信シングルでありリード曲のタイトルを「ラブソング」と名付けた彼らの覚悟がすごいと思う。自らの代名詞であるジャンル名をそのまま楽曲名にした。ある意味バンド名をタイトルにする“セルフタイトル”のようなものだ。
“ラブソング“がその宿命を背負い続けるに足りる楽曲だと思えたことが素晴らしいし、このアルバムがマルシィにとって出世作になる、それに彼ら自身が気づいているのだろう。

芦澤紀子(Spotify Japan 音楽部門企画推進統括)

Spotifyロゴ

マルシィの魅力

リアルな情景描写と繊細な感情表現で様々な恋愛風景を歌い、その共感性の高い歌詞と優しいメロディー、心震わす歌声でZ世代リスナーの支持をじわじわと広げてきたマルシィ。これまでも“令和ポップス”“恋するプレイリスト”“ティーンカルチャー”など、Z世代に人気のプレイリストでの楽曲のパフォーマンス、リスナーの反応が良く、注目していたところに「ラブソング」のリリース資料が到着。琴線に触れる楽曲の素晴らしさと、積み上げてきたポテンシャルが化学反応を起こすのではという期待感から、TikTokとSpotifyが共同でアーティストを応援するプログラム「Buzz Tracker」の10月マンスリーアーティストに抜擢させていただきました。1ヶ月の展開期間を経て、Spotifyの月間リスナーは約3倍の170万人に到達、「ラブソング」は急上昇チャート1位、デイリーチャート11位まで上昇するという鮮やかな結果を残し、リスナー数も総再生数も右肩上がりの成長を続けています。楽曲を部分使用したTikTokでのユーザー投稿のオーガニックな伸びがSpotifyにも波及し、フルで楽曲を聴いてみたい、他の曲もチェックしたい、という好循環が生まれた結果ですが、それも聴き手の様々なシチュエーションに寄り添えるソングライティングの普遍性と、誰もがリアリティを感じられるストーリー構成力があってのことと分析しています。

「Candle」を聴いて

「ラブソング」はもちろん、「ミックス」「幸せの花束を」「ラズベリー」「ただそれだけのことがさ」「アリカ」など、単曲リリース以降着実にストリームを積み重ねてきたマルシィの人気曲がずらりと並んだアルバム。丁寧に紡がれた曲ごとに異なる恋愛のかたちと、その中で描かれるどこか不器用な主人公の感情の起伏に心を掴まれてしまう展開がマルシィの真骨頂だと思うのですが、そうしたソングライティングの魅力を際立たせているのはボーカル吉田右京の歌の繊細な表現力にあることを改めて感じさせられます。昨年リリースの1stアルバム「Memory」に収録され、Spotify上で1300万再生を突破している「未来図」や、新たな代表曲となった「ラブソング」が、言葉の壁を超え、台湾、香港を筆頭にアジア各国でバイラルチャート上位にランクインしているのもそれを裏付けていると言えるのではないでしょうか。

本間昭光(音楽プロデューサー)

本間昭光

マルシィの魅力

彼らとは「ワスレナグサ」(2021年)でセッションして以来、折を見ては一緒に食事に行ったりしながら交流を深めていました。
もちろん当時から強いこだわりを持って楽曲制作に取り組んでいる姿勢があったのですが、これ程までに急激な成長曲線を以ってブレイクするアーティストは珍しいのではないでしょうか。
尤も、彼らの素朴且つ詩的な世界観は多くの音楽ファンに受け入れられて至極当然なので、驚きというよりは嬉しい気持ちでいっぱいです。
これからも一音一音、一言一言を大切にする姿勢を持ち続けてください。
僕はそんなマルシィが大好きです。

「Candle」を聴いて

ライブ活動における自信が実力となって作品群に表れていると思います。どの楽曲もボーカル、演奏ともに考え抜かれた2024年の先頭を走るサウンドのイメージです。
特にラブソングが注目されている中、他の楽曲も方向性や世界観がバラエティに富んでいながらも、決してバラバラになることなく、一本筋の通った「マルシィサウンド」がひとつ出来上がったのではないでしょうか。
まるで一本の映画を観たかのような、そんなストーリーが目に浮かびました。

せっかちな僕はもう次作を期待しています。


マルシィ

マルシィ ライブ情報

マルシィ one man live tour 2024 "Candle"

  • 2024年1月21日(日)大阪府 なんばHatch
  • 2024年1月28日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年2月10日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2024年2月11日(日・祝)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2024年2月24日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2024年2月25日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2024年3月2日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2024年3月22日(金)宮城県 Rensa
  • 2024年3月29日(金)東京都 東京国際フォーラム ホールA

プロフィール

マルシィ

福岡県で結成された、吉田右京(Vo, G)、shuji(G)、フジイタクミ(B)の3人からなるスリーピースバンド。2022年6月にユニバーサルミュージックより1stアルバム「Memory」でメジャーデビュー。2023年11月に2ndアルバム「Candle」をリリースし、2024年1月から3月にかけてライブツアー「マルシィ one man live tour 2024 "Candle"」を行う。