マルシィ2ndアルバム「Candle」をメンバーインタビュー&関係者コメントで紐解く

マルシィの2ndアルバム「Candle」がリリースされた。

人々の共感を呼ぶラブソングを多数発表し、今年はさまざまな夏フェスで存在感を発揮したマルシィ。11月20日にTBS系「CDTVライブ!ライブ!」に初出演した彼らは、お茶の間に向けて楽曲「ラブソング」をパフォーマンスした。

バンドとして勢いに乗るマルシィが発表した新作「Candle」は、「聴いてくれる方の日常の灯火となれば」というメンバーの思いが込められたアルバム。収録されている全10曲には共通して温かなムードが漂っている。

音楽ナタリーでは吉田右京(Vo, G)、shuji(G)、フジイタクミ(B)のインタビュー、彼らをよく知るロッキング・オン・グループの海津亮氏、Spotifyの芦澤紀子氏、音楽プロデューサー本間昭光氏のコメントを通じて、「Candle」の魅力に迫る。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 梁瀬玉実

「ラブソング」に込めた一番純粋な思い

──今年の皆さんの活躍ぶりには目を見張るものがありました。まず、6から7月にかけてキャリア初のワンマンツアー「マルシィ one man live tour 2023 "melt into you"」がありました。今回のアルバムの受注生産限定盤にはツアーファイナルのZepp Haneda(TOKYO)公演のライブ映像とドキュメンタリーを収録したBlu-rayも付属します。改めて、Zepp Haneda公演はどんなライブでしたか?(参照:マルシィ「melt into you」で初のZeppワンマン「めちゃめちゃ最高で幸せなツアーでした」

吉田右京(Vo, G) Zepp Haneda(TOKYO)は今までのワンマンライブの中で一番キャパシティの大きい会場だったので(取材は11月上旬に実施)、「マルシィのことを好きでいてくれる人がこんなにたくさんいるんだ」と実感することができたし、ファンの皆さんからパワーをもらいました。ツアーファイナルの日に「Candle」のリリースとファンクラブの開設をサプライズで発表したときのことは、記憶に強く残っていて。お客さんが自分のことのように喜んでくれたのがうれしかったです。

──そして夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER」「RISING SUN ROCK FESTIVAL」などさまざまなフェスに出演しました。

フジイタクミ(B) フェスには去年も出させていただきましたけど、今年は本数も増えて、北は「RISING SUN ROCK FESTIVAL」から南は「NUMBER SHOT」まで……さらに「WILD BUNCH FEST」や「MONSTER baSH」など、全国各地に行くことができました。だからうれしかったですね。同時に、メインステージではなかったので「もっと大きなステージに立ちたい」という気持ちも生まれました。

マルシィ

マルシィ

──リリース面も好調で、アルバムにも収録されている楽曲「ラブソング」のミュージックビデオの再生数は300万回を突破しています。そして「CDTVライブ!ライブ!」で「ラブソング」をテレビ番組で初披露することも決定しています(参照:「CDTVライブ!ライブ!」2時間SPに生田絵梨花、&TEAM、Kep1er、10-FEET、マルシィ)。この記事が公開される頃には番組の放送は終わっていますが、出演前の今の心境はいかがですか?

右京 ゴールデンタイムに地上波の番組に出演させていただくのは初めてなので、どういう反応がもらえるのか、純粋に楽しみです。「ラブソング」を聴いたことがあるけどマルシィを知らない人もきっとたくさんいると思うので、バンドのことを知ってもらえるきっかけになればいいなと思ってます。

──ちなみに、「ラブソング」をアルバムのリード曲にしようと思ったのはなぜですか?

右京 僕らは全曲に対して同じくらいの愛情を注いでいるので、その中から1曲だけを選ぶのは本当に難しいんですけど、リード曲は「ラブソング」だろうなという感覚がありました。マルシィを知ってくれている人の多くは「恋愛の楽曲を歌うバンドだ」という印象を持っていると思うんですけど、そんな中で、今までで一番純粋な思いを届ける楽曲を作れたという手応えがあって。だからこそ、「ラブソング」というタイトルを付けました。この曲をきっかけに、マルシィを知ってくれる人が1人でも増えたらうれしいです。

現状には満足していない

──マルシィの皆さんにとって2023年はどんな1年でしたか?

shuji(G) いろいろな経験をさせてもらいましたけど、正直な話、現状には満足していないです。各々「ああしたい」「こうしたい」というものは持っているものの、バンドとして具体的な目標を持っているわけではなくて。唯一「武道館でライブがしたいよね」という野望だけはみんなで共有しているんですよ。そう考えるとやるべきことはまだまだ山積みで、現状ではまだまだ足りていない。2024年は次の高みを目指していくような年にしたいです。

──そんな中、2ndアルバム「Candle」が完成しました。「聴いてくれる方の日常の灯火となれば」という思いを込めて「Candle」というタイトルを付けたそうですね。

右京 はい。もちろん聴いてくれる人それぞれの人生があるから、今悩んでいること、苦しんでいること、「すごく幸せなんだ」と感じることは1人ひとり違うと思うんです。だけど、このアルバムの10曲のうち、1曲でも、歌詞の1行でも、なんでもいいから、受け取ったときに心が少しでも温かくなっていたらいいなと。何かに悩んでいる人、苦しんでいる人にアルバムを通して寄り添えたら、という思いが一番強いです。

──アルバムのアートワークも温かみがあるものですね。マルシィのアートワークは1月リリースの配信シングル「アリカ」まで1人の女性のイラスト、もしくは写真で統一されていましたが、次のシングル「大丈夫」以降はそうではなくなりました。アートワークのテイストを変えた背景を教えてもらえますか?

マルシィ「アリカ」ジャケット

マルシィ「アリカ」ジャケット

マルシィ「Candle」ジャケット

マルシィ「Candle」ジャケット

右京 最初の時期は「マルシィといえば」という感じでアートワークを統一させたいという意図があり、楽曲に出てくる1人の女性をジャケットに登場させるようにしていました。そういうアートワークが、自分たちの作る曲にも合っているように思えたので。だけど曲数が増えてきて、この形式が続いたときに、ちょっと違う表現にもチャレンジしたいなと思うようになったんです。

──楽曲の幅も広がってきている最中ですしね。

右京 そうですね。なので、女性のアートワークは一旦封印という感じで、「大丈夫」以降は今までと違う感じにしています。

吉田右京(Vo, G)

吉田右京(Vo, G)

shujiのロック魂、タクミの優等生エピソード

──では、まずshujiさん、ギタリストとして、どのように「Candle」の制作に取り組んだのかを教えてください。

shuji 僕は「恋焦がれて」と「もしもの続きを少しだけ」に対して、特に手応えを感じています。今までマルシィでは、こういうアップテンポな曲をあんまりやってこなかったんですよ。「そろそろアップテンポの曲がやりたいな」という気持ちも溜まっていたので、この2曲にはやりたかったことをたくさん詰め込みました。自分のロック魂が生きた楽曲になったんじゃないかと思っているんですけど、とはいえ、曲の世界観を崩してはいけなかったので、いい塩梅になるように調整して。マルシィのギタリストとしてうまく表現できたかなと思っています。

──レコーディングはスムーズに進みましたか?

shuji 大変なところもありました。ギターのフレーズをいくつか考えてスタジオに持っていったんですけど、右京がなかなかOKを出してくれなかったんですよ(笑)。周りのスタッフさんとかは「すごくいいね」と言ってくれるけど、右京は「いや、もうちょっと出てくると思う」という感じで。もう1000本ノックみたいなので、たまに「帰っちゃおうかな」と思うこともあるんですけど……あ、今のは冗談ですよ?(笑)

shuji(G)

shuji(G)

右京 (笑)。ギターのフレーズにはこだわらせてもらってます。shujiさんもこだわりながらやってくれているし、もちろん信頼しているんですけど、だからこそ、いいフレーズが出てくると「今のはよかったな。だったら、さらにいいものが出てくるんじゃないか」と期待してしまうところがあって。

──なるほど。フジイさん、ベースに関してはいかがですか?

タクミ 今回の収録曲の中で最初にあった曲が「幸せの花束を」だったんですけど、僕、レコーディングですごく苦戦したんですよ。この曲のような跳ねたリズムを今まであんまり弾いたことがなかったから、レコーディング中すごく悔しい思いをして。それをきっかけにレッスンに通い始めるという、ちょっと優等生っぽいエピソードがあります(笑)。

──素晴らしいです。

タクミ 全体的に、前作よりもちゃんと曲に寄り添えたなと思っています。「Candle」に入っている曲はどれも歌詞がすごくいいじゃないですか。言いたいことや物語が1曲1曲すごく伝わってくる。本人が隣にいるのに、こんなことを言うのも恥ずかしいですけど(笑)。

フジイタクミ(B)

フジイタクミ(B)

右京 ありがとうございます(笑)。

タクミ 特に「ただそれだけのことがさ」や「凪」のような失恋の曲の歌詞では、主人公の複雑な感情が描かれていたので、自分も聴きながら気持ちが入る感じがありました。歌詞がグッと盛り上がるところではベースも勢いよく弾いているので、そういうところも含めてじっくり聴いてくれたらうれしいです。