マルシィ特集|ラブソングで生まれたZ世代との化学反応、世界観に魅せられたインフルエンサー9組の声も

2022年6月に“恋の始まりから愛の終わりまでを描いたラブソング・アルバム”「Memory」で、メジャーデビューを果たしたマルシィ。その後も「幸せの花束を」「アリカ」と珠玉のラブソングを次々とリリースし、Z世代を中心に共感を集めている。音楽ナタリーでは、メンバーの吉田右京(Vo, G)、shuji(G)、フジイタクミ(B)にインタビューし、メジャーデビュー以降の活動の手応え、「幸せの花束を」「アリカ」の制作、そして、Z世代のリスナーに対する思いなどについて語ってもらった。特集の後半には、マルシィに魅了されたインフルエンサー9組が彼らの魅力をつづったコメント企画も展開する。

取材・文 / 森朋之

マルシィ インタビュー

技術的にもメンタル的にも、課題はいろいろ

──マルシィは昨年6月に1stアルバム「Memory」でメジャーデビューしました。「未来図」「絵空」「最低最悪」などの生々しいラブソングがいわゆるZ世代を中心に浸透していますが、手応えはどうですか?

吉田右京(Vo, G) ライブも例年通りにできるようになってきたし、楽曲の制作も続いていて。やることがたくさんあって、とにかく時間が過ぎていくのが早かったですね。ライブと制作が重なることも初めてだったので、けっこう大変でした。まだまだこれからだなと思ってます。

shuji(G) アルバム以降は、ずっとライブをやっていた印象が強いですね。ツアー(2022年7月に行われた「マルシィ one man live tour 2022 “Memory”」)も回れたし、いろんなフェスにも出させてもらって。特に年末の「COUNTDOWN JAPAN」はすごく記憶に残ってます。ライブができてなかった時期も長かったですけど、たくさんの人にライブを観てもらえて、自分自身もグッときてしまって。SNSなどで楽曲の感想を送ってもらって、実際に皆さんが喜んでくれている様子を目にして「がんばって活動してきてよかった」と。

吉田 SNSのコメントやメッセージがすごくうれしくて。でも、ライブにはそれとは違った感覚があるんですよね、やっぱり。特にワンマンは、マルシィを好きだと思ってくれている人たちと触れ合える時間なので、特別ですね。

フジイタクミ(B) うれしいのと同時に、もっと大きいステージでやりたいという気持ちも出てきて。特にフェスに出させてもらうと、「デカいステージでもお客さんにアガってもらえる演奏ができるように、もっとがんばらないと」ってスイッチが入ります。技術的にもメンタル的にも、課題はいろいろありますね。

──現状に満足せず、もっと上を目指すと。右京さんの曲作りについても聞きたいのですが、現状、「未来図」「絵空」など、バラード系のラブソングが人気になっています。やはり、そこがマルシィの軸ですか?

吉田 バラードを意識しているというより、そのときにいいと思う曲、届けたい曲を作ってきた結果だと思ってます。ギターの弾き語りで作ることが多いから、自然とバラードが多くなるのかも。作り方も増やしたいんですけど、なかなか……。

フジイ ハハハ。

吉田 例えばリズムを先に作って、そこにメロディを乗せるとか。でも、いざ曲を作り始めるとギターに手が伸びてしまうので(笑)。

フジイ 今後はライブの経験も生きてくると思います。「ライブでこういう曲が欲しいよね」という発想で曲を作ったり。

吉田 特にフェスでは、「マルシィの名前だけは知ってる」という方にも観てもらえるじゃないですか。そういうときに誰もが知っている1曲があるとデカいと思うので。

1曲の中で感情の波を作る

──では、アルバム「Memory」以降にリリースされた楽曲について聞かせてください。まずはABEMA「恋愛ドラマな恋がしたい in NEW YORK」のドラマ主題歌である「幸せの花束を」について。穏やかで切ないメロディ、「幸せの花束を 渡すのは僕じゃなきゃ だめなんじゃない?」という愛らしいフレーズが印象的な楽曲です。

フジイ 幸せいっぱいのラブソングですね。聴くといい気持ちになります。

吉田 そうなんだ(笑)。

shuji ストーリー仕立てのMVも好きですね。演奏面では、エンディングのギターソロでさらに歌の感情を引き立てていて。ここぞとばかりに泣きのギターソロを入れました(笑)。

──「絵空」もそうですが、歌の感情を増幅させるギターの役割が大きいですよね。

吉田 1曲の中で感情の波を作れたらいいなと思っていて。もちろん歌もそうだし、ギター、ベース、ドラムも含めて、感情の起伏を描きたいんですよね。

フジイ うん。歌の熱量、歌詞のストーリーとリンクした演奏を意識しているので。

「アリカ」はどう受け取られるか不安だった

──そして今年1月に配信された「アリカ」は別れてしまった“君”への思いを切々とつづった楽曲ですが、歌詞、サウンドを含めて、これまでの楽曲とかなり手触りが違いますね。

吉田 実際、今までとは違うテイストの曲にしたかったんです。サビ始まりなんですけど、まずは最初の「戻らない時計に手を掛けて」と歌うところで世界観を示して。

shuji キーも高めで、一瞬で引き込まれますね。

──しかも“君”に対する感情がすごく濃いんですよね。「分からない 君じゃない人の愛し方 教えてよ手取り足取り一から全部」もそうですけど、執着にも似た気持ちが描かれていて……。

吉田 ヤバめではありますね、確かに(笑)。歌詞の表現はメロディとの兼ね合いもあるんですけど、1つの恋が終わって、すぐに次に行けない人って、たくさんいると思うんですよ。どうしても別れた相手のことを思い出してしまうこともあるだろうし……。「アリカ」では、「責任取って、ほかの人の愛し方も教えてください」という内容も歌っているし、そこに一番強いメッセージがあるかもしれないです。「赤ちゃんみたいに」という歌詞もあって。

マルシィ「アリカ」配信ジャケット

マルシィ「アリカ」配信ジャケット

──「眠る時まるで赤ちゃんみたいに 熱くなって、寝顔は綺麗でさ、」ですね。

吉田 その部分は最初、迷ったんですよ。“赤ちゃんみたい”というのは、守ってあげたくなるような存在、それくらい愛しく思ってるという感覚なんですけど、「どんなふうに受け取られるかな」とちょっと不安で。いろいろ考えて、やっぱりこの言葉にしたんですけど。

──Twitterに「元彼に『眠くなると温かくなって赤ちゃんみたいだね』って言われてきたのに『マルシィのアリカって曲いい歌だから聴いてね』ってほんとにいじわる」というコメントがあったように、リスナーはそれぞれ自分たちの思い出と重ねて聴いているようです。フジイさん、shujiさんはこの歌詞をどう捉えていますか?

フジイ 「未来図」「幸せの花束を」と幸せな曲が続いていたんですけど、「アリカ」のような失恋の曲は、また別の角度から刺さりますよね。

吉田 こういう曲、ちょっとひさしぶりだからね。

shuji うん。自分は「アルバムを捲ると 続きが見たいよ」という歌詞が好きです。本当の(写真を貼った)アルバムだけじゃなくて、主人公の人生のアルバムという意味でも想像ができて。

──情景が浮かんできて、いろんな想像が膨らみますよね。失恋ソングのほうが浮かびやすいですか?

吉田 どちらかというと失恋ソングのほうが浮かびやすいかもしれないですね。今のところは、マルシィに対して失恋の曲のイメージを持ってくれてる人も多いと思うし。「未来図」「幸せの花束を」のような温かいラブソングも受け入れてもらえていて、それもすごくうれしく思っています。あと、「アリカ」は直近にリリースしたほかの曲の歌詞とつながりがあるんですよ。SNSを見てると、そのことに気付いている人もいて。別の曲と照らし合わせて聴いてもらいたい気持ちもありますね。

次のページ »
SNSの反応は見る