新しい試み“ガバ×ジャズ”

──収録曲の中でも「Chocolat Swing」は挑戦的な1曲ですよね。ジャジーな雰囲気のピアノにダンスミュージック由来のキック音を合わせているという。

kors k　この曲のバックトラックはオランダの「ガバ」と呼ばれてるジャンルを意識してるんですけど、とにかくキックの音が強いのが特徴で。この曲もまらしぃくんのアイデアから生まれた曲だよね？

まらしぃ　ジャズの3連符とダンスミュージックのキック音の3連符って相性がいいんじゃないかと思って作ってみました。

kors k　ガバってキック音が強すぎて、ほかの音があんまり入らないんですよ。そこにピアノを乗せるっていうのは新しいし、面白いアイデアなんです。まあピアノのメロディを聴かせつつ強めのキックを入れてくのは大変でしたけど（笑）。刺激的な経験でした。

──今作にはチップチューンのテイストを取り入れた曲も多いですよね。

kors k　まらしぃくんからもらったオーダーの中に「おもちゃ箱」って表現があって。

まらしぃ　僕、kors kさんの「New Lights」って曲が大好きで。それを直接伝えたことがあったから、チップチューンがたくさん入ってきたのかなと思っていました。

kors k　そうかもしれない。それとまらしぃくんが言う「おもちゃ箱」っていう中に、なんとなくファミコンみたいなものも入るかなって思ったんです。だからちょこちょこ入れてみた感じですね。

まらしぃ　僕は本当にゲームで育った世代ですから、やっぱりチップチューンってすごく楽しげで、アガるんですよね。あの音って転用してるわけじゃなくて、作ってるんですよね？

kors k　もちろん手作りだよ。そのまま使ったらいろいろマズいからね（笑）。

10本の指に説得力

──ビートマニア界隈でもスゴ腕のキーボーディストの方ってたくさんいらっしゃると思うんですが、kors kさんが感じているまらしぃさんならではの魅力ってどういうところだと思いますか？

kors k　彼はピアノらしいピアノを鳴らす人なんですよね。まらしぃくんって、普段アレンジであんまり音を重ねたりしないでしょ？

まらしぃ　しないですね。

kors k　10本の指で表現するという、ピアノで説得力を持たそうっていうのはちょっと感じたとこはありますね。ほかの方はもちろんピアノも素晴らしいんですけど、バックトラックありきだったりとかけっこうあるので。

まらしぃ　すごくうれしいです。ありがとうございます！

──まらしぃさんはこれまでいろんな方とコラボしてきましたが、kors kさんとのコラボはやっぱり特別なものでしたか？

まらしぃ　これまでのすべてのコラボが刺激的だったしものすごくありがたい経験をさせていただいていたんですけど、kors kさんとのコラボってもう僕の中では念願というか、本当に自分のやりたかったことはコレだったんだって、作業中すごく感じました。

kors k　制作中もかなり情熱的だったよね。

まらしぃ　「ああいうのやりたい、こういうのやりたい」って、次から次へとあふれ出てきて。

kors k　彼が作った曲に関してはピアノの演奏を録音したデータと一緒に「この曲をこうしてほしい」っていうオーダーが送られてきたんですよ。そこにははっきりと彼がやりたいことが書かれていて。僕はそれを自分なりに解釈して打ち返してたんだけど、まあドンピシャだったよね。

まらしぃ　ドンピシャでした。ピアノだけの音と、自分のお願いを書いて渡しただけなのに、イメージ通りの方向性でイメージを超えたクオリティのものが返ってくるんですよ。

kors k　一緒に作業してて、価値観というか、ものの見かたがお互いバッチリ合ってたんだよね。例えばレコーディングのときに「今のいいじゃん」って思うタイミングが同じだったりとか。