ナタリー PowerPush - 真心ブラザーズ
祝・ベストアルバム発売! 20年の歴史を紐解く赤裸々トーク
ベストアルバム&ミニアルバムについて
──そんな20年間のオイシイとこ取りができるベストアルバム「GOODDEST」ですが、曲選びは悩みましたか?
桜井 CD2枚というサイズが、削るものは思い切りよく削れて、入れるもんは入れられるちょうどいいサイズだったんで、思ったほど苦労はしなかったですよ。曲順も時系列に並べようっていうことにして、いい並びになったし。
YO-KING 1997年のシングルコレクションっていう形の「B.A.D.~」以来12年ぶりのベストなんで、これくらいのボリュームにはなりますよ。で、「B.A.D~」以降という形じゃなくて、オールタイムのベストにしたかったから。
──改めて20年分の音楽を聴いてみても、いい曲ばっかりですね。
YO-KING いい曲ばっかり。こんないい曲ばっかを楽々やったっていうのが偉いところだと思うんですよね(笑)。これね、初回盤のみの秘蔵映像がついてて、デビューのきっかけになった勝ち抜き合戦の10週分が入ってるんです。
──ええ! それはかなり貴重ですね。
桜井 これは買わなければダメです。
YO-KING これはね、すごいよ。すごく面白い。
桜井 無駄に身を切ってる感じ(笑)。
──自分たちでその映像を見た感想は?
桜井 ダメージ、デカかったです。
YO-KING いやぁ、キツかった。なるべく見ないように、誰かに編集してもらった後に見たんだけど。
桜井 それでも十分ダメージあったよね。
YO-KING それでも秘蔵映像として世に出してしまうという、この潔さ。
桜井 YouTubeにさえ上がってない映像をね(笑)。出発点がそこにあるんです。人に歴史ありですよ。
YO-KING で、帯はムッシュかまやつさんのコメントですからね。いいですよー。
──「GOODDEST」よりも前に発売されるミニアルバム「タンデムダンディ 20」に収録した新曲4曲も、真心の歴史を総括しつつ新しい風が吹いてる感じがしますね。
桜井 うん。企画としては、フォークもの、ロックもの、フォークロックもの、ソウルものっていう、この20年で手をつけてきた音楽のスタイルを4曲でやるっていう縛りだったんだけど。でも楽曲そのものはどれも企画負けしてない自由な感じのものができましたね。
──お題ありきで作ったということですか?
桜井 そうですね。「風を浴びて君想う」は2年くらい前に作った曲なんですけど、これはフォークロックに当てはめて。で、リード曲の「Song of You」が「GOODDEST」の最後に入って非常に収まりがいいというのが、俺たちできてるなぁという。
──「GOODDEST」を聴いてると、いろいろなジャンルの音楽をやってきてる中でもどこか1本筋が通ってる感じがするんですよね。偏ることなく、各時代からまんべんなく選曲されてるのに、ちゃんと真心サウンドとして収まってるというか。
桜井 そうですね。で、20年やってきた流れの最後の曲で、また楽しいことが始まりそうな気にさせるなぁみたいなね(笑)。そういう曲を「GOODDEST」の最後に入れるというのはなんとなく決まってたんで、そういう曲を作らなきゃっていうプレッシャーはあったんですけど。できてよかったぁ、と思いましたよ。
総括&今後
──こうやって振り返ってみると、こんなに自由にやってるバンドもないですよね。休みたいときは休んで。やりたくなったらまたやって。
YO-KING しかもずっとメジャーにいるっていうのがまたいいじゃないですか。こんないい加減でも最低限のマナーさえ守れば、みんな応援してくれるんだよって。人に好かれるって大事だよってことを言いたいんですよ、僕(笑)。
──最低限のマナーってなんだと思われますか?
YO-KING 締め切りをちゃんと守るとか。時間を守るとか。普通よ? でもそういうのができない人が多いわけですから。
──CMソングはやるとか(笑)。
YO-KING そうそう。挨拶するとか。笑う、とか(笑)。
──RCサクセションより長くやってるバンドになっていくんですもんね。
YO-KING そうかぁ。RCは20年で休止して、公式には復活してないからね。真心は、RCが解散した年にデビューしてるんですよ。ちょうど真心デビューの頃に大阪のイベントに行ったらタイマーズが対バンでいたから。
桜井 ね。それから20年ですよ。
──この先、まだまだ続いていくんですよね。
桜井 そうですね。
YO-KING もはやね。休むとしても次はこっそり休みます。
桜井 20年やって、続けることは大事だなと前より思うようになったかなぁ。辞める資格がどんどんなくなっていくというかね。それは自分たちが決めることじゃないような気がしてくる。「もういいッス!」って言われるまでは、辞めるのは不義理な感じがするな。
YO-KING そうね。自分たちの健康状態と、あとは仕事として黒字になる程度の人が見に来てくれる以上は、やり続けるのが芸人なんじゃないかと思います。
桜井 いや、赤字になってもなんとかカバーできるうちはやる責任があるんじゃないの?
──(笑)。でも音楽的に真心がどういう方向に行くのか、というのは見えないですよね。
YO-KING ぜんっぜん見えない。
桜井 でもそれは、世の中がどう変わるのか見えないのと同じですよ。「GOODDEST」を聴いて思ったのが、自分が思うより世の中の音楽の状況に左右されながら曲作ってるなぁって。サウンドもアレンジも、90年代渋谷系の影響受けてるじゃーんとか(笑)。普通にいいと思ってる曲を作ってるだけっていう気持ちだったけど、やっぱり影響は受けてる。だからこの先が見えないのは、この先世の中がどうなるかわからないのと同じですよ。
──お話を聞いていると、YO-KINGさんが何を言い出すかにもかかってるのかな、と(笑)。
YO-KING まあねー。
──ちなみに今、先取ろうとしてるものはあるんですか?
YO-KING うーん、ハーブティーですかね。男もハーブティーっていう時代になりますよ。
──それはホントに飲んでるんですか?
YO-KING 本当に飲んでる。最近ちょっと体調を壊してコーヒーが飲めなくなっちゃって、渋々ハーブティーを飲んでたら美味くなってきて。体調が戻ってもハーブティーがあるとこではハーブティーになっちゃいました。この顔で。あっははは。
桜井 梅昆布茶とかじゃなくて?
YO-KING ハーブティーですよ。「胃に優しいわー」って言いながら飲んでるから。
桜井 腹立ちますねぇ(笑)。
YO-KING 腹立つ、腹立つ(笑)。もう、ナイキ買い漁ってた頃の俺が見たら、殴ってると思うよ。ナイキで両耳をバーンッて(笑)。
──これまでの20年間もこれからも、そういう遊んでる感覚が続いていくということなんでしょうね。
YO-KING ほんと、そう。ありがたい! っていう感じ。
──20年を振り返っても屈折、苦悩の話は出なかったですもんね。
YO-KING ないッスね。ない。ないねぇ。
──ないわけはないと思うんですけど、「ない」って言い切れるのが素敵です。
YO-KING ああ。うん、そうね。言ったことが本当になる可能性って大きいじゃない? だから、ないって言ってたら、40年後には本当になかったことになるかもしれないからね(笑)。
Disc 1 収録曲
- うみ
- どか~ん
- うまくは言えないけど
- 荒川土手
- 頭の中
- うきうき
- 旅の夢
- モルツのテーマ
- 素晴らしきこの世界
- スピード
- 愛
- マイ・バック・ページ
- STONE
- JUMP
- 新しい夜明け
- 拝啓、ジョン・レノン
- 空にまいあがれ
Disc 2 収録曲
- ループスライダー
- BABY BABY BABY
- 愛のオーラ
- ENDLESS SUMMER NUDE
- サティスファクション
- EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG
- 流れ星
- この愛は始まってもいない
- 人間はもう終わりだ!
- 情熱と衝動
- Dear, Summer Friend
- I'm in Love
- きみとぼく
- All I want to say to you
- 傷だらけの真心
- Song of You
DVD収録内容 (初回盤のみ)
- デビュー当時の貴重な映像を収録
真心ブラザーズ(まごころぶらざーず)
YO-KINGと桜井秀俊によって1989年に結成。テレビ番組の「勝ち抜きフォーク合戦」で10週勝ち抜いたことをきっかけに、同年9月にシングル「うみ」でメジャーデビューを果たす。「モルツのテーマ」「どか~ん」といったナンバーがTVソングに起用され、そのフォーキーなサウンドが好評を博す。1995年リリースのシングル「スピード」以降は、それまでのイメージを払拭するようなロック&ソウル色の強い音楽性へと移行。「サマーヌード」「拝啓、ジョン・レノン」「空にまいあがれ」など、数々の名曲を発表する。現在までに34枚のシングルと12枚のオリジナル・アルバムを発表。定評のあるライブ・パフォーマンスも健在である。今年でデビュー20周年を迎え、それを記念し9月に「元祖 渋谷系(嘘)」と題した特別記念ライブ、11月からは全国ツアー「THE GOODDEST TOUR」を行う。