マカロニえんぴつ|“青春”を繰り返しながらJ-POPシーンをひた走る

高野、田辺、長谷川が歌詞について考える

──「listen to the radio」や「裸の旅人」の歌詞でも、記憶に触れる部分がありますよね。過去から未来をつかんでいくような感覚というか。

はっとり そうですね。最近は、“忘れる”という言葉がよく歌詞に入ってくるなと自分でも思っていて。でも、忘れてしまうからこそ、新しいものに出会いたくなったりするんですよね。“忘れること”と“思い出すこと”は、僕が歌詞を書くうえで一生付いて回ることなのかもしれない。

──なぜ、今、そういうことが歌詞になっているのだと思いますか?

はっとり どんどんと、「忘れたくないな」と思うことが増えているからだと思います。瞬間瞬間のこととか、自分がしてきたこととか……過去を振り返るほど、すぐに寂しくなっちゃうんです。バンドだって、こんな大きなスケールになるなんて思っていなかったんですよ。自分は音楽で特別な才能を持っているとは思っていなかったから、今の状況がうれしくて仕方がない。初めてギターを買ってくれた親父に感謝しているし、今まで出会った音楽すべてに感謝している。でも、今こうやって「はしりがき」を出している瞬間も、いつか遠い青春になってしまうのだとしたら、忘れたくないなって思う。失くすことを怖がっているのかもしれないです。

──今はっとりさんが言ってくださった、歌詞に込められた思いについて、皆さんはどのように受け止めていますか?

はっとり そういえば、メンバーと歌詞の話はあまりしないんですよね。相談もしないし。僕の歌詞はどうですか?

田辺 僕も生きている中で「あのとき、ああしておけばよかったな」と思うことも多いし、後悔があるから今、がんばれているのかなって、はっとりの話を聞いていて、ふと思いました。そういう意味では、ずっと“青春”を生きているのかなって。「メレンゲ」の「また僕を好きになりたい 生まれ変わったりする以外で」っていう部分も、今はっとりが言ったことと通じている歌詞なのかなと思ったり……前に(ファーストサマー)ウイカさんがはっとりの歌詞を「本を読んでいるみたいだ」とテレビで言っているのを観て、「なるほど!」と思ったんですよね。主人公なり登場人物がいて、1曲を通して教訓のようなものが見えてくる。そこには短編小説を読んでいるような感覚があるって。

──それは言い得て妙ですよね。長谷川さんはどうですか?

長谷川 正直、はっとりくんの歌詞はストレートじゃないから、どう捉えていいかわからないことも多くて(笑)。なんだか、難しい本を読んでいるみたいだなって……(笑)。

一同 (爆笑)

田辺 大ちゃんは、そもそもインスト音楽をやっていたような人だしね(笑)。

はっとり でも、大ちゃんのような楽観的なメンバーがいてよかったなと思いますよ(笑)。もし自分と同じように考えすぎてしまうようなメンバーばかりだったら、絶対にバンドは暗い方向性に進んでしまっていたと思うんです。僕は考えるのが好きだし、マイナス思考だし、理屈っぽい。でも、隣に大ちゃんみたいに食べることしか興味がない人間がいてくれるのは、いいバランスだなって思います(笑)。

──なるほど(笑)。高野さんは、はっとりさんの歌詞はどのように受け止めていますか?

高野 はっとりから上がってきた歌詞を読むと、「やっぱり、はっとりの歌詞でマカロニをやっていきたいな」と思います。

はっとり 俺はそうは思わない。

一同 (爆笑)

──ご本人が否定されていますが(笑)。

はっとり いやいや(笑)……熱いこと言ってくれるじゃん、賢也は。

高野 今回のシングルは特に、誰かに向けて歌っている曲というよりも、自分と見つめ合うような曲が多いなと思うんです。きっと、コロナ禍で誰とも会えなかったからこそ書けた歌詞なのかなと思うし。

はっとり そうだね。最近、こうやって歌詞を自分たちなりに解釈してくれているなと感じるんですけど、その影響か、自分たちのライブ映像を観ていると、演奏中のメンバーの表情が昔と変わってきているんですよね。昔はずっと笑いながら演奏していて、僕はよく「この歌詞のときに、笑顔はおかしいよ」って指摘していたんです。でも、最近はすごく表情が豊かになってきている。歌詞に寄り添って、入り込んで弾いてくれているのかなって思います。

「そんなもんなのかもしれない」がすべて

──先ほど、「はっとりさんの歌詞は本を読んでいるようだ」という見方がありましたけど、そういった部分は、ご自身としてはどのくらい意識されていますか?

はっとり 僕は小説を書く人を本当に尊敬しているし、「本のようだ」と言ってもらえるのはうれしいです。でも、僕の歌詞は文章に例えると“起承転結”の“起”と“結”だけあって、真ん中がごっそり抜けている本なんです。具体的なエピソードがなくて、“承”と“転”は聴いている人の想像に委ねちゃっている。僕が歌でできる限界はそこだったんですよね。例えばクリープハイプの尾崎(世界観)さんのように、具体的かつ細かい描写で、すごくパーソナルな歌なのに、「なんで、みんなが自分を重ねられるんだろう?」と思わせられるような歌詞を書く人もいますよね。あれこそ小説のような歌だと思うし、「言葉で映像を作る人だな」と思う。僕はそれが得意ではないし、だからこそ憧れもありますね。僕は、音で映像を作ることは得意なんです。でも、言葉で映像を作ることができない。

──それでも、はっとりさんの歌詞は、「どう生きればいいのか?」という問いと、そこに対する試行錯誤を常にリアルに刻んでいるような感覚がありますよね。尾崎さんとは違うタイプでも、確実に人間的な生々しさを感じられる歌詞だと思います。

はっとり 人は誰しもが、自分から見える人生を主役として生きていますからね。それぞれのドラマやストーリーがある。そのどこかにフィットするように、とは思いながら歌詞は書いていますけど、自分では「まだまだだな」と思うんです。「この思いを伝えよう」という確固たるイメージがまだないというか、僕が今できていることは、「この角度からも見れるよ」ということを提示するところまでなんです。みんながすでに持っているものを違う角度から見ることを推奨しているまでで、自分独自の考え方を発信できている感覚はなくて。でも、音楽って本来、心をフッと軽くしてくれるものでもあると思うし、そのくらいでいいのかなっていう気もするんです。「ヤングアダルト」(2019年9月発売のミニアルバム「season」収録曲、2020年4月発売のアルバム「hope」収録曲)で「そんなもんなのかもしれない」と歌いましたけど、僕の言いたいことのすべては、あのひと言で言い切れてしまうような感じもするんです。「そんなもんだよね」って。マカロニえんぴつの歌が言いたいのって、そういうことだから。

祈りを込めて

──今のお話を聞いたうえで伺いたいのは、「メレンゲ」の「祈ることしかできない歌の出口を探してる」という一節は、はっとりさんのどんな気持ちから出てきたものですか?

はっとり さっき賢也が言ったように、「メレンゲ」を作ったのは、コロナ禍ゆえの無力さを感じていた時期で。きっと、みんなの中にかげりがあった時期だったと思うんですけど、僕自身、去年1年は無力さを感じたんです。

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──それは、音楽に対しての無力さということでもありますか?

はっとり そうですね。もちろん歌を歌うこと、音楽を作ることって、僕はすごく胸を張っていいことだと思うんです。音楽でしか動かせない心もあると思うから。それでも、ちょっと冷静になると「自分はなんて無力なんだろう」って、マイナスな方向に行っちゃうというか。だから、なるべく深く考えないようにはしていたんですけど、自分と向き合えば向き合うほど、特に「メレンゲ」の歌詞を書いている最中は、「自分の歌は、祈ることしかできない歌なのかもな」と思っていたんだと思います。

──「祈り」の先が見えなかった。

はっとり 僕から出てきたもので自分を助けるのって、すごく難しいんですよね。自ら書いている以上、本当に自分を救ってくれる言葉って、出てこない。

──ああ……なるほど。

はっとり 祈ること……昨年4月に「hope」というアルバムを作って、“希望”という言葉を掲げて、そこにすがってはいましたけど、裏を返すと、「それしかできていないんじゃないか?」って。「祈ることしかできない歌の出口を探してる」という歌詞は、そうやってふと我に返ったときに生まれた一節かもしれないです。

──この一節が生まれた頃と今とでは、気持ちに変化はあるんですか?

はっとり こういう気持ちは常にあって、むしろ、この無力さから始まっていく感覚です。満ち足りて幸せなときに、歌なんて出てこないから。遠く及ばず、儚く、悔しい。だから、歌は沸いてくるような気がします。

──そこは、はっとりさんの中で一貫しているものなんですね。

はっとり でもね、こういうことを言うと「はっとりさん、思い悩んでいるんですか?」なんて言われるかもしれないけど、そうでもないんですよ。むしろ音楽的にはどんどんと明るくなっているし、今、音楽を作ることは楽しくて楽しくて仕方がないんです。だからこそ、深いところまで影を歌えるんだと思います。

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ライブ情報

マカロックツアーvol.11 〜いま会いに行くをする篇〜
  • 2021年4月10日(土) 東京都 J:COMホール八王子 OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年4月15日(木) 北海道 カナモトホール(札幌市民ホール) OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2021年4月17日(土) 北海道 函館市民会館 大ホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年4月21日(水) 東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2021年4月24日(土) 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年4月25日(日) 石川県 本多の森ホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年4月29日(木・祝) 静岡県 アクトシティ浜松 大ホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年5月2日(日) 広島県 上野学園ホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年5月3日(月・祝) 福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年5月9日(日) 岩手県 岩手県民会館 大ホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年5月10日(月) 宮城県 仙台サンプラザホール OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2021年5月13日(木) 大阪府 オリックス劇場 OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2021年5月14日(金) 大阪府 オリックス劇場 OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2021年5月16日(日) 愛媛県 松山市民会館 大ホール OPEN 16:00 / START 17:00
  • 2021年5月23日(日) 神奈川県 横浜アリーナ [追加公演]OPEN 13:30 / START 14:30 [ツアーファイナル]OPEN 18:00 / START 19:00