マカロニえんぴつ|「音楽って楽しい」別れをも笑い飛ばして進む1stフルアルバム

今の心境がダイレクトに詰まった“別れ”のアルバム

──今年初めにmurffin discsへ移籍したあと、9月にはオリジナルメンバーのサティ(Dr)さんが脱退するという大きな出来事がありました。

はっとり 発表されたとき、お客さんから「マカロニえんぴつには脱退とか絶対にないと思ってた」っていう反応をもらったんですけど、俺たちもずっとこの5人なのかなって思ってました。ただ“サティが抜けたから解散”っていう選択肢は絶対にないっていう思いが4人に共通してあったし、ツアーも制作もあって立ち止まる暇がなかったから正直ずっと実感がなくて。でもいざサティが抜けて曲作りを始めると……最近はアイツが曲のアレンジのアイデアをメインで出してくれてたから、どうしようって(笑)。「CHOSYOKU」はそういう時期に作ったアルバムなので、達成感もすごくあります。

──アルバムを一聴して、1曲目の「ミスター・ブルースカイ」の曲調にびっくりしました。この曲はブルージーなミディアムナンバーですが、これまでのマカロニえんぴつの作品は攻撃的なリフを取り入れた疾走感のあるナンバーから始まっていた印象があったので。ここまでゆったりとしたテンポの曲からアルバムが始まることって今までなかったですよね?

はっとり あー、確かにそうですね。これまでだったら「girl my friend」とかを1曲目にしていたかもしれない。今思うと、曲順を決めたときに「『ミスター・ブルースカイ』を1曲目にするのカッコよくない?」「逆に粋じゃない?」って思っていたような気もします。

田辺 僕は単純に、リード曲だから1曲目なのかなって思ってた(笑)。

長谷川 僕もそんな感じ。

──この曲に限らず、本作のナンバーはこれまでと比べるとテンポがゆったりしている気がします。

はっとり そうですね。できあがったときには少し心配もあったんです。テンポが落ちたのは今の自分たちの心境がダイレクトに反映されてるからだと思うんですけど、「落ち着いた印象になりすぎてないかな?」って。

長谷川 今はそれも、2017年にいろいろあったマカロニの流れだったのかなって思います。

マカロニえんぴつのサウンドには照れ隠しがある

──「ミスター・ブルースカイ」をはじめ、今作は別れをテーマにしたナンバーが並んでいますね。はっとりさんが言う「今の自分たちの心境」とは、サティさんと別れて感じた気持ちでしょうか?

はっとり もちろん、それも含まれますね。タイミング的に歌にせざるを得なかったと言うか。特に「ミスター・ブルースカイ」はアルバムのテーマをわかりやすく提示している曲で。この曲は決して暗くなくて、笑って別れを受け入れるという内容の歌詞なんですよ。これ以外にもアルバム全体に、別れを受け入れて進むバンドの覚悟が入ってると思います。

──「ミスター・ブルースカイ」は歌が真ん中にある曲ですけど、楽器隊もかなり遊んでいて面白いですよね。その辺りにも、別れをも笑い飛ばすような明るいイメージを受けました。

長谷川大喜(Key, Cho)

長谷川 かなり遊んでますね。僕ははっとりから「バッハっぽいフレーズを入れよう」って言われたから必死に考えて。結果、チェンバロでバロックふうのフレーズを弾きました。

はっとり マカロニえんぴつのサウンドには照れ隠しがあるんです。言いたいことは歌詞で言ってるし、エモーショナルに歌ってるからこそ、サウンドまでそのテンションだと俺は聴きたくないって思っちゃう。だからせめて音だけは楽しく仕上げたいと思ってて。例えばチェンバロを弾いてるときにはほかの楽器が邪魔しないようにっていう、バランスにも気を付けてます。「s.i.n」以降、そういうアレンジの引き算ができるようになりました。

──遊び心という点では「girl my friend」のアウトロも面白いですよね。

はっとり The Beatlesっぽいところですよね。アウトロが長くて3拍子で。そこも照れ隠しです。あの曲は恋人にシリアスに思いをわーって伝え切るような曲だから、レコーディングも衝動を大事にして一発録りにして。そうやって言い切ったあとってなんか恥ずかしいから、あえて「まあでも、そこまで真面目に考えなくていいよ」ってイメージでポップに終わらせました。そういうところに「マカロニえんぴつはわかりにくい」って感じる人もいるかもしれないけど(笑)。

初期作品では四つ打ちギターロックを意識してた

──「MAR-Z」と最新ミニアルバムにも入っている 「洗濯機と君とラヂオ」はアルバムの中でも特にキャッチーですし、何度も聴きたくなるような中毒性があります。

はっとり 「洗濯機と君とラヂオ」はサビを口ずさみやすくっていうのを考えて作りました。同じサビをめちゃくちゃ繰り返しますし。でも僕としては「MAR-Z」はサビみたいな部分が2パターンあるので、キャッチーじゃないと思ってました。スルメ曲ではあると思うので、ファンの人にもその美学をわかってもらえたらうれしいです。

長谷川 はっとりのメロディラインは、周りの友達に曲を聴かせると「独特だよね」って言われる。それもスルメ曲につながってるのかもね。

はっとり そうなのかな?

長谷川 俺たちは慣れちゃってるからそうは思わないけど(笑)。

はっとり 今回は「ポップに」とか「キャッチーに」っていうのを、あまり考えずに作ったアルバムなんです。でも今思うと逆に肩の力が抜けてたから、結果的には自然にポップなものができたのかもしれない。狙いすぎちゃうときがあるんですよ。それが仇となって、いやらしい捉え方をされちゃったり、自分でもしちゃったり……。

──と言うと?

はっとり 嫌いってわけじゃないんですけど、「アルデンテ」とか「エイチビー」(2015年12月リリースの2ndミニアルバム)を今聴くと、当時盛り上がってたシーンをすごく意識したなって思います。「こうやったほうがいいんだ」っていう思い込みもすごかったし。

──当時盛り上がってたシーンと言うと、四つ打ちのギターロックでしょうか。

はっとり そうそう。今も流行ってますけど、もっと流行ってた。「s.i.n」から徐々に変わってきたんですけど、今回はさらにまったくそこを意識せずに、自分たちがカッコいいと思うツボを意識して見つけながら音作りをしていきました。

マカロニえんぴつ「CHOSYOKU」
2017年12月6日発売 / TALTO / murffin discs
マカロニえんぴつ「CHOSYOKU」

[CD] 2700円
TLTO-007

Amazon.co.jp

収録曲
  1. ミスター・ブルースカイ
  2. 夏恋センセイション
  3. MAR-Z
  4. girl my friend
  5. MUSIC
  6. クールな女
  7. 夕色
  8. 眺めがいいね
  9. 洗濯機と君とラヂオ
  10. イランイラン
  11. 春の嵐
「マカロックツアーvol.5 ~朝食抜いたら超SHOCK篇~」
  • 2018年3月30日(金)宮城県 enn 3rd
    出演者 マカロニえんぴつ / パノラマパナマタウン / and more
  • 2018年4月1日(日)北海道 SOUND CRUE
    出演者 マカロニえんぴつ / パノラマパナマタウン / and more
  • 2018年4月6日(金)広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
    出演者 マカロニえんぴつ / and more
  • 2018年4月7日(土)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL(ワンマンライブ)
    出演者 マカロニえんぴつ
  • 2018年4月8日(日)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
    出演者 マカロニえんぴつ / and more
  • 2018年4月12日(木)香川県 高松TOONICE
    出演者 マカロニえんぴつ / and more
  • 2018年4月14日(土)福岡県 Queblick
    出演者 マカロニえんぴつ / and more
  • 2018年4月15日(日)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE(ワンマンライブ)
    出演者 マカロニえんぴつ
  • 2018年4月19日(木)東京都 渋谷CLUB QUATTRO(ワンマンライブ)
    出演者 マカロニえんぴつ
マカロニえんぴつ
マカロニえんぴつ
2012年はっとり(Vo, G)、高野賢也(B, Cho)、田辺由明(G, Cho)、長谷川大喜(Key, Cho)からなるロックバンド。メンバー全員が音楽大学を卒業している。2015年1月に1stミニアルバム「アルデンテ」、同年12月に2ndアルバム「エイチビー」をリリースした。2017年2月にShibuya eggmanのmurffin discs内レーベル・TALTOに移籍し、3rdミニアルバム「s.i.n」を発売。8月には1stシングル「夏恋センセイション」をリリースした。同月オリジナルメンバーであったドラマーが脱退し、現在はサポートメンバーを迎えて活動している。同年12月にバンドにとって初となるフルアルバム「CHOSYOKU」が発売された。