いつか思い出して「青春だった」と言える日が来るのかな
──6トラック目の「xx:xx:xx」はスキットで、reinaさんがセリフを演じていますが、こういう役割はreinaさんなんですね。
mana そうです。スキッターです。ウチの。
reina はい(笑)。アルバム「DAY2」から続く、電話の会話で「何時だっけ?」って聞くシリーズの新しいものなんですけど、今回も設定があって。これは私が、日付が変わる夜中まで飲み倒して、酔っ払ったまま渋谷の雑踏の中で電話しているんです。そして「朝の光」につながる、という構成になっています。
──続く「朝の光」は、歴代のリリスクが表現し続けてきたもの──リリカルな表現、ロマンチシズム、青春の淡い切なさのようなものがギュッと凝縮された集大成のような楽曲だなと感じました。端的にリリスク史上一番好きな曲かもしれない。
mana わかりますうー。レコーディングの歌入れ順番は私が1番だったんですけど、そのときに大久保さんが「よし、また名曲を作るぞ」って言ってたんですよ。全員のレコーディングが終わって、マスタリング音源を聴いたときに「……できちゃったあー」と思いました(笑)。
minan その言葉、うれしいよね。曲を作った方が、私たちの全員の歌を入れて「名曲を完成させる」と考えてくださっていることが。
hana マイクリレーをしていく感じもすごく好きです。私のヴァース「大人ぶってるうちに忘れちまう この夜の匂いとか気持ちは」は大久保さんが「ここがこの曲のフックだから」とおっしゃっていて。レコーディングでもすごく丁寧にディレクションしてくださって、何度も録り直しました。メンバー全員のベストが出ているんじゃないかなと思うので、たくさん聴いて涙を流してほしいです(笑)。
reina 私もこの曲が大好きです。大久保さんの歌詞のロマンチックな感じに、プロデューサーのキム(ヤスヒロ)さんの好きな映画のエッセンスもあって。私、リリスクに入って初めて友達と……友達というかメンバーなんですけど、初めて夜通し飲んで朝を迎えるという体験をしたんですよ。そんな夜も、いつか思い出して「青春だった」と言える日が来るのかなって。
──EPにはさらにもう1曲、アルバム「DAY 2」収録曲「Ringing」のリミックスが収録されています。
ryuya リミキサーの泅ユウキさんは音楽プロジェクト・WTHR(ウェザー)の方で、STARKIDSのメンバー・leviさんのソロ作品なども手がけられている気鋭のクリエイターです。
──既存曲、過去体制の楽曲のリミックスというのもグループの可能性が広がりそうですね。
minan そうですね。すでにryuyaくんがリミックスを手がけたりしているので、今の8人ならいろんなことができると思います。
男女混合のバラバラな8人だからこそ表現できる“青春”群像
──「LIFE GOES ON e.p.」は、現体制初のアルバム「DAY2」から一歩先に進んだ現在のリリスクを表現した1枚になったかと思います。完成した作品を前に、皆さんはどう感じていますか?
malik 今のlyrical schoolは男女混合の8人組で、みんなバラバラで……何にも似ていない、前例のないグループだと思うんです。何者でもない、だけど何者でもある、みたいな。だからこそ、きっとリリスクのライブに来てもらえれば、絶対にどの曲かのどのフレーズかに「自分のことを言っている」と感じてもらえるものがあると思う。その幅の広さが、このEPでさらに広くなったなと感じています。EPを通して聴いてもらえたら、どれか1つは「これは自分の曲だ」と思ってもらえるんじゃないかなって。できるだけたくさんの人に聴いてほしいです。
sayo 20歳を超えた男女8人で活動していくことで、何を見せられて、どんな力をみんなに与えていけるんだろうとずっと模索していたんです。私たちだから……この8人が集まって、この曲でライブをするからこその活力の届け方。このEPができたことで、「うちらにしか届けられないものがあるのかも?」と確信できました。大人である自分たちが今、嘘偽りなく青春を感じられている……何言ってるんだろう(笑)。
minan (笑)。いや、メンバーみんな納得してると思うよ。それぞれバックグラウンドの違う、年齢も職業もバラバラだったところからリリスクという場所に飛び込んできた人たちだから。
sayo そう。うちら飛び込んできたからさ。そんなうちらがこの音楽をやっているからこその説得力もあると思うし、「この8人じゃなきゃ」というのがこのEPで伝わればいいなって。さっき自信がついてきたように見えると言ってくださいましたけど、それは「うちらにしか届けられないものを」という思いがはっきりしたことで、ライブに自信が出てきたんだと思います。
──今、ステージの上ではメンバーみんな本当に自信に満ちた表情をしているので、インタビューも1年前とは見違えた雰囲気になっているのかな……と想像していたんですが、そうでもないなと感じています(笑)。
minan ですよね(笑)。みんな今日おとなしいよ?
sayo でも青春はそういうものですよね!
minan どういうこと?(笑)
sayo ほら、(左手を突き上げて)行ける行けるどこまでもー!という気持ちのこのあたり(右手を左手の下に)にちゃんと不安がある、みたいな。それを今、やってます。
一同 アハハハハハ!
mana 今ここ不安のゾーンなんだ(笑)。
minan 未来がどうなるかわからないという不安はあるけど、未知な分だけたくさんの選択肢が目の前に広がっている。その2つが同時に存在するのが青春っていう。……そういうことかあ?
sayo そういうこと!
reina ワンマンライブに来てくれたお客さんの感想ですごくうれしかったものがあって。「リリスクのライブを観て、何にでもなれそう!と思った」という言葉なんですけど、それって今の話と同じですよね。「何にでもなれる可能性が開けている=青春」ということだと思うので、リリスクのライブでそれを感じてもらえたのだとしたら、ちゃんと伝わってるんだなって自信が持てました。
メンバー全員で褒め合戦
──楽曲についてはひと通りお聞きしましたが……最後は景気よく、全員でいいところを褒め合いましょうか。まずはminanさん。
malik みにゃんは本当にカリスマティックで……みにゃんがいる画像といない画像を見比べると全然違うの(笑)。
hana わかる。それお客さんにも言われた。
minan 見慣れてるか見慣れてないかの違いだよ。
malik・mana・reina いやいやいや。
malik いるだけでグッと、プロに見えるというか。存在するだけでうちらをメジャーなグループにしてくれる(笑)。
mana 駅で集合するときとかさ、全然話しかけられたりしないけど、minanさんがいると「lyrical schoolですか?」って声をかけられる。
──ryuyaさんはこれまでの好青年なビジュアルからイメージチェンジした今の感じ、すごくいいですよね。
minan わかります。いいですよね、このビジュ。
ryuya この2年くらいはどうやったら自分の持っているものが伝わるか悩んでいたところがあって。minanが休んでいた半年の間に、今日はちょっとパワーが必要だなという日があって、突然「髪、全部立てちゃえ」と思い立ってやってみたんですよ。それがけっこうウケがよくて。プロデューサーのキムさんにも、この髪を立ててメイク濃いめの姿がステージ上でキャラクターとしてわかりやすいと感じてもらったみたいで、それが公式に採用されました(笑)。
sayo ryuyaくんはステージ上でバーン!と弾けるんですよ。新衣装は背中に羽根が生えてますけど、衣装とは関係なく、ステージでパッと前に出たときのryuyaくんにはデカい羽根が生えてる。そんな幻覚が見えるくらい(笑)、ryuyaくんにはステージでパワーをもらって、そのパワーで私も知らない自分になっていてびっくりするときがある。リリスクのパワーを引っ張っているのはryuyaくんだと思う。ありがとう。
ryuya 逆にその言葉、そのままお返ししますよ(笑)。ライブ中の、ライブをする人にしか味わえないアドレナリン、胸の高鳴りのようなものがあるんですけど、sayoはそれに呼応して放出する力がある。「Ultimate Anthem」とかで一緒にバカやってると「ああ、ライブしてるな」って気持ちになります。
──確かにsayoさんは放出して周りに伝播するようなパワーを感じますよね。
sayo ライブをやるとすべての悩みが吹き飛びまして。「ライブに生かされてる」という感じですね。
──hanaさんも新しいビジュアルがヘッズに好評ですよね。
malik hanaはオリジナリティとスタイリッシュさがめっちゃ上がったなと思っていて。この衣装になってから、そのスタイリッシュさが動きとかアティチュードに現れてる。「自信ない」とか「失敗したらどうしよう」とか言うけど、だからこそ言葉の発し方とか動きを家でしっかり研究してきているんだろうなと伝わってくるんですよ。ほかの子たちとは違う動き方で、オリジナリティがある。
mana 褒めるのうまっ……。
malik 好きなんですよ、褒めるのが(笑)。
──では褒め上手のmalikさんを褒めるとしたら?
sayo malikさんは……。
──褒めるだけ褒めて褒められない(笑)。
minan 難しいよね。ありすぎてさあ。
malik いいよ無理しなくて(衣装の袖をいじりながら)。
──malikさんはライブのMC中のメッセージがいつも簡潔で伝わりやすく、かつ優しくキャッチーな物言いだなといつも感心します。
minan ステージ上だけじゃなく、日常生活でもmalikは言葉運びが上手だなってめっちゃ思います。他人に対する言葉遣い……これをどういう言葉で言えば一番伝わりやすいか、相手が嫌な思いをしないか、それを一番ベストな状態で言葉にしてくれる。そういうところはすごく尊敬しています。あと、ギャグとかもうまいよね(笑)。
reina キャッチーな言葉を生み出してるよね、いつも。
minan グループ内の流行語を生み出すインフルエンサー。
──ではtmrwさんはどうでしょう。
hana シンプルに歌がうめえ。
tmrw 俺は最近ヘタだなとしか思わない……。歌のプロとしてメジャーで2年間やらせてもらっていて、自分はまだこんなもんなのかって。
hana そのストイックさも素敵だなと思うんですよ。
mana 歌に対するストイックさは最初から誰よりもあって、最近はさらに磨きがかかってる。歌もうまくなってるし、さらにストイックになってるから、どこまで行っちゃうんだろうって。
minan トゥモちゃん(tmrw)は最近、自分で曲も作ってるんですよ。空いた時間は全部曲作りに費やしているらしくて、マジカッコいいライフスタイルだなって(笑)。
tmrw リリスクに入る何年も前から「あんた何もできないんだから自分で曲を作りなさい」って親に言われてたんですよ。
minan えー! すごい親御さん。
tmrw 自分でもやらなきゃなと思ってたんですけど、正直ずっと逃げてたというか。ゼロからイチに持っていくのが一番難しくて、リリスクに入って2年くらい何も生み出せてなかったんですけど、どうにかイチに持っていけたことで制作の意欲は上がっていますね。
──次はreinaさん。
mana れぴ(reina)はグループの中でDJを担っているじゃないですか。7人の期間にDJのスキルをぐんぐん吸収して、最初の頃はやってなかった曲のつなぎとかをどんどんライブに取り入れていて。それが会場の熱気を1段上げるアクセルになってる。うちらもグッと気合いが入るし、DJがいるグループにはこれができるんだ!という強みを一身に背負ってくれているのがめっちゃすごいと思います。しかも歌いながら。どのDJよりもすごい。ずっと歌いながらDJやってるんですよ?
ryuya バックDJとしてはもちろん、普通にDJとしてすごいなと思うんですよ。よくイベントで一緒にDJをやるんですけど……いいDJって自分が知らない曲でも全然踊れるじゃないですか。reinaはそれがうまい。アイドルとしてのキャラクターと選曲のよさも相まって「いいDJだな」と思ってます。
malik あと、ジャンプが素敵です。ジャンプするところで意外と高く飛んでいて、そこは注目ポイントです。
mana 私も言いたいことある。「朝の光」のれぴのヴァースが1行あるんですけど。
reina 「二千何年くらいまで生きる?」。
mana 声が特徴的だから曲がキュッと締まって「うわ、めっちゃ大事」って思ったんですよ。その前に入るスキットもそうだし、大事なポイントをよく担当してる。
──では最後に、manaさん。
mana 気まずくなってきた(笑)。
malik manaさんはラップモンスターというか、口から火を吐くんじゃないかと思うくらい(笑)、かっけえラップをしてるときがあって。例えばこのEPだと「to be continued」とか、速いラップをすることが多いんですけど、その中でもライブごとにやり方を変えたり、時に“抜き”の表現を入れてきたりする。成長止まんなくてライブ中に笑っちゃうときがあります。
minan ほかのアイドルさんとコラボするときとかに、リリスクのラップ部分はいつもmanaが書いてくれるんですよ。あとmanaは本当に、ちゃんと自分のことが好きだよね。それはすごくいい部分。そうなりたいなって思いませんか? こんなふうに生きられたらいいなってmanaを見てるとすごく思う。
──話を聞きながらモジモジしすぎてどんどんソファと一体化してますけど。
mana もっと褒めていいよ(笑)。
reina manaさんはステージングがすごくて。ライブ映像を観返していると「えっ、こんなすごいことを何食わぬ顔でやってたんだ」とは発見することが多いです。
malik 映像で言葉が粒立って聞こえるから、やっぱラップがうまいんだなと。
mana ふふふ(ほとんどソファに寝そべった状態で)。
minan 喜んでる(笑)。
プロフィール
lyrical school(リリカルスクール)
「清純派ヒップホップアイドルユニット」というコンセプトのもと、オーディションで選ばれた6人の女性メンバーにより「tengal6」として2010年に結成。2012年にタワーレコードのアイドルレーベル・T-Palette Recordsに移籍し、それを機にユニット名を「lyrical school」に改名した。メンバーの変遷を経て、2017年5月にminan、hime、hinako、yuu、risanoの5人体制による活動を開始。2019年5月にビクターエンタテインメント内のレーベル・CONNECTONEに移籍し、同年9月に「BE KIND REWIND」、2022年4月に「L.S.」と2枚のアルバムを発表するも、7月の東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)公演「lyrical school tour 2022 “L.S.” FINAL」でminanを除く4人のメンバーがグループを卒業した。直後にスタートしたオーディションでsayo、tmrw、hana、mana、malik、ryuya、reinaの7人が加入し、男女8人組グループに。2023年2月配信の「NEW WORLD」を皮切りに新体制での楽曲をコンスタントに発表し、2024年4月にニューアルバム「DAY 2」を発表。2025年7月にEP「LIFE GOES ON e.p.」をリリースした。
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