ナタリー PowerPush - lynch.

ほかに媚びない、強制されないバンドのスタンスを提示する「MIRRORS」

王道と言われるリズムを使って今の音にしたかった

──今作「MIRRORS」は3曲入りシングルになりますけど、どんなビジョンを持って臨みましたか?

葉月 全体を通してというより、とりあえず2曲目の「MIRRORS」のリズムにこだわりました。あのリズムパターンでこのテンポは誰もやってないだろうと思って。1曲目の「THE TRUTH IS INSIDE」の2ビートはFACTみたいなバンドも最近よくやっているけど、「MIRRORS」はメタルというよりはロックンロールに寄ったハードコアバンドの速さで、そのリズムでリード曲を作りたかったんですよ。

──新しいことに挑戦したい、という気持ちが強かった?

玲央(G)

葉月 そうですね。今だからこそ新しいのかなと。ちょっと前だと、ただの古いビートで終わっていたけど、そろそろ一周したかなと思って。ほかの楽器のアレンジ次第でもあるんですけど、そこを斬新に聴こえるようにアレンジしました。ただ、このリズムで曲を作ろうと思ってからは結構時間がかかりましたね。どうしても古くなりがちで、リフが考えにくいテンポだったんですよ。だから、誰もやらないのかってわかって(笑)。ちょっと苦労しました。

玲央 先人たちがやってきた当時の王道と言われるリズムを使って今の音にしたい、と葉月から言われて。歌もそうだけど、弦楽器もクサくならないように気を付けました。今の音としてちゃんと完成したと思うので、作り終わってみて安心感のほうが強いですね(笑)。半ばチャレンジみたいな気持があったけど、面白そうだからやってみたくて。

──当時の王道というと、どの辺になるんですか?

葉月 僕の中では後期黒夢とLUNA SEAも使っていたパターンだと思ってるんですよね。あと、さっきも言ったPANTERAもやっていたので。

──ああ、なるほど(笑)。

葉月 なぜか最近このビートを使うバンドがいないから、やってみたくなったんですよ。

「THE TRUTH IS INSIDE」が今回のシングルの要かもしれない

──「MIRRORS」は歪んでないクリーントーンのギターを主体にしてますよね。それもすごく新鮮でした。

葉月(Vo)

葉月 最初はもっとゴリゴリなハードコアみたいな曲だったんですけど、メロディが乗った後に一気にイメージが変わって。切ない雰囲気が出てきたので、それに抗うことなく、歌詞もアレンジも進んだんですよ。

──1曲目は「I BELIEVE IN ME」の「TIAMAT」に通じるヘビーさが前面に出ていますけど、歌い回しは吠えるというよりはメロディアスなアプローチで。

葉月 前作のレコーディングの後にすぐできたのが、「THE TRUTH IS INSIDE」なんですよ。前作のいいとこ取りをして、さらに濃いものを追求した感じですね。

──まさにこの曲は始まって3秒で胸ぐらをつかまれてしまう楽曲ですね。

葉月 はははは、そうっすね。いきなり2ビートで始まりますからね。

玲央 実際に再生ボタンを押すと、あのドラムですからね。「THE TRUTH IS INSIDE」は前作の流れを汲んでいるから、そういうものを1曲目に置くことで、ほかの2曲の自由度が広がるかなと思って。ライブでも爆発力のある曲なので、意外と今回のシングルの要かもしれない。

──それで3曲目の「DEVI」で見事にハズすというか(笑)。リフはヘビーでゴリゴリだけど、陽気な踊れる曲調に仕上がってますよね。こういうタイプの楽曲は珍しくないですか?

葉月 シャッフルをやったことがなかったから、やってみようと思って。軽いノリです。

玲央 重厚なんだけど、軽快みたいなところを狙ったんですよ。相反するものを共存させたかったんですよね。

──軽いけど、重みがあるみたいな?

玲央 そうなんですよ! 重いんだけど、軽いみたいな(笑)。完全に遊びでやれたし、今まで描いたことがない絵ができた感覚なんですよ。やれてよかったです。

左から玲央(G)、葉月(Vo)

ニューシングル「MIRRORS」初回限定生産 / 2011年11月9日発売 / 1500円(税込) / KING RECORDS / KICM-91368

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CD 収録曲
  1. THE TRUTH IS INSIDE
  2. MIRRORS
  3. DEVI
    DVD 収録曲
  1. “MIRRORS”MUSIC CLIP
  2. “MIRRORS”MUSIC CLIP DIRECTOR'S CUT
lynch.(りんち)

葉月(Vo)、玲央(G)、晁直(Dr)、悠介(G)、明徳(B)の5人からなるロックバンド。2004年8月に葉月、玲央、晁直の3人にサポートベーシストの4人を加えた形で始動。2005年4月に1stアルバム「greedy dead souls」をリリースし、並行して精力的なライブ活動を行うことで、地元・名古屋で話題を集める。

2006年に悠介が加入し、年内に4枚のシングルをリリース。続いて2007年には名盤と名高いアルバム「THE AVOIDED SUN」を発表し、レコ発ツアーファイナルを東京・Shibuya O-WESTで飾る。その後もライブを行う会場の規模を徐々に拡大させ、耳目を集める存在に。2010年に明徳が正式メンバーとなり、あわせてメジャーレーベルであるキングレコードへの移籍が発表された。2011年6月、前作から約2年ぶりとなるアルバム「I BELIEVE IN ME」でメジャーデビュー。同年11月、シングル「MIRRORS」を発表する。